イレグイ号クロニクル Ⅱ

魚釣りの記録と読書の記録を綴ります。

「そもそも島に進化あり 」読了

2018年12月03日 | 2018読書
川上和人 「そもそも島に進化あり 」読了

つい先日、NHKのドキュメンタリーで伊豆諸島にある孀婦岩を取り上げていた。あんなローソクみたいな岩礁と言ってもいいような島にも生物が住んでいて、生態系ができあがっている。鳥はまあ、わかるとして、植物やクモ、陸に住む貝までもそこには住んでいる。
この本を手に取ってみたのは、岩だけの無人島にどんなプロセスを経て生態系ができあがってゆくのかということをもう少し詳しく知ることができるのではないだろうかということであった。

著者は鳥類学者であるけれども、島嶼地域に住む鳥類を主に研究している。その観点から無生物の島にどうやって生物が定着していくのかということを解説しているのだが、結果からいうと、それほど目新しいものではなかった。

植物の種は鳥が食べたものが糞となって島に落ちるか、または口にくわえて、羽根にくっついて落とされる。風に乗ってやってくるものもある。土壌は島の岩石が風化し、それに海鳥の糞や枯れた植物が混ざって出来上がる。動物たちも流木に乗ってやってきたり、同じく鳥の体にくっついてやってくる。クモはお尻から出した糸を風に吹かせて飛んでくる。

動物の進化についても同じで、天敵がいない島では小さな生物は大きくなる傾向があり、食物が少ない環境では大きな生物は小さくなる。そして鳥は飛ばなくなる。

こういったことはおりに触れて聞いたことがあるものばかりだった。唯一、へ~、っと思ったのは、植物も競合が少ない環境では花の色が地味になったり、大きさが小さくなったりするらしいということであった。鳥も花も本来の性能を維持するためにかなりのエネルギーを使い無理をしていたのだ。という、たったそれくらいであった。

著者もそれがわかっていたのか、まえがきでは、読書はギャンブルだ。本を買うために使ったお金と読むために要した時間に見合うだけの読後感を得られればあなたの勝利であり、そうでなければ敗北だと書いている。
そして、少しでもその読後感を盛り上げたいのか文章も奇をてらっている。僕のブログもそうなのだが、文章の内容とはまったくかけ離れている銀河英雄伝説や宇宙戦艦ヤマトなんかのエピソードを入れ込んで面白く見せようとすることが多々ある。
著者も同じく、ガンダムが出てきたりウルトラマンが出てきたり、はたまた南洋の孤島の海岸には人魚や美女が出てくる。しかし、東大卒だそうだ・・・。

だから文章としては素人並みじゃないかと突っ込みたくなってくるので今回のギャンブルは負けということになるんだろうね~。

しかしながら著者の研究は島嶼部の環境保全には重要なものになっている。ここでも人間が悪者になってしまうのだが、人間が持ち込んだ様々なもの、家畜、虫、作物、あるいは病原菌、ウイルス。そういったもので本来の島独特の環境が破壊されつつある。
まあ、人間も自然の一部とであるとするなら、人間がかかわって変わってゆく島の環境も自然の流れの一部であり、それぞれ独特の環境が失われていくというのはすべてエントロピーの法則に則っているわけだから仕方があるまいといえないわけではないが、それを防いだり、元に戻したりという作業も需要な仕事のひとつだそうだ。
そう思うとちゃんと世の中の役に立っている。まったく社会貢献のかけらもないぼくが文章としては素人並みじゃないかと突っ込んではいけないのかもしれない・・・。
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