イレグイ号クロニクル Ⅱ

魚釣りの記録と読書の記録を綴ります。

「アリエリー教授の「行動経済学」入門-お金篇」読了

2019年12月02日 | 2019釣り
ダン アリエリー ジェフ クライスラー 「アリエリー教授の「行動経済学」入門-お金篇」読了

日本のGDPの6割は個人消費で占められているそうだけれども、その6割の部分は合理的な経済行動がおこなわれていないというお話だ。
ケインズ経済学の一番の根本は、市場での価格決定は需要と供給のバランスが取れたところで決まる。これを「神の見えざる手」と学校で習ったことがあるけれどもそんな自然の摂理では決して人は動いていない。もっと別の、この本では総称して「心の会計」と呼んでいるけれども、そんな心の愚かな動きによって、またそれを利用した売り手の巧みな作戦によって高いもの、買わなくてもいいものを買わされているというのだ。


この本を読んでいると僕もかなり惑わされているということを思い知ることになった。

いくつかのキーワードが出てくるけれども、そのすべては「機会費用」というものに起因する。すべてのモノの価値はお金で換算することができるけれども、どんなにお金を持っている人でも無限に持っているわけではない。これにお金を使ったらほかのものは買えなくなる。
だからどんな人でも心の中で、「どれを買ったら一番満足できるか」ということを問い続けることになるのであるが、どうもそれが合理的ではない。心の中のよくわからない機微が無駄な出費を誘うのである。

この本に照らし合わせながら自分の消費生活を振り替えると実に情けない。
ついこの前も、岩塩を安く売っている店を見つけて大量に買ってきたら奥さんから、「死ぬまでに食べきられへんで。」と嫌味を言われ、魚が釣れなくて早々に切り上げ、仕方なく寄ったスーパーで昨日売れ残ったコロッケが2割引きだったとちょっと得したとほくそ笑んでいる。
そんなにせこい喜びにしか生きがいを感じることができないと思うと、100円で買ったヌカを腐らせるのがもったいないと往復4,000円の高速代と追加のエサ代1,500円を払っている。
車を買うときは気持ちが大きくなってそんなに乗らないのにオイル交換付のメンテナンスパックみたいなものをオプションで買ってしまった。
ネットでも使う用途のないナイフを衝動買いし、中古の釣具屋でも使うあてのない釣竿を買ってしまう。

岩塩や2割引きのコロッケを買ってしまうのは通常価格に対して「相対的」な安さに惑わされるからだ。コロッケは確かに2割引きだが、岩塩のほうはバルクで買ったけれども本当に安かったのかどうかはわからない。
必要もないオプションを買ってしまうのも車の価格に対して「相対的」にオプションが安く見えてしまうからだ。
100円のヌカを惜しむのは「損失回避の法則」と呼ばれる。100円のものを失う痛みは100円の利益の喜びの2倍の強さで感じられる。
ネットショップで必要もないものをポチっと買ってしまうのはそこに出費の痛みを伴わないからだ。旅行はパックで先払いしておいた方がその都度アラカルトで支払うよりも楽しさは増すらしい。

ブランド物のバッグを途方もない値段でありがたく買ってしまうのは「言葉と儀式の威力」に惑わされるからだ。ブランドが持っている歴史やデザイナーにまつわるストーリーがモノの値段を数十倍にはね上げる。こういうことについては僕はそういう業界で働いているのであまり惑わされない自信はある。はず・・。
レストランで、“OOサラダの小悪魔風△□を添えて”なんていうメニューも言葉と儀式の威力を利用しているのだ。

しかし、こうやって見てみるとムダに使っているお金さえもセコい。
大きなロゴのプリントされたバッグに筋肉を鍛えるためにはめているのかと思えるような大きな腕時計をしているひとが成功者なら僕はまったくの落伍者だ。
僕は100円の買い物をする時でさえひとしきり悩む。アマゾンのクリックも何週間も買い物カゴの中身を温存してやっとポチッとする。そしてその挙句に、やっぱりよしておけばよかったと悩むのだ。
そんなことなら、(ここからはあくまでも僕の友人から聞いた話だが・・。)「去年まではあそこに展示していたおせちはひとつしかなかった。ことしはいっぱい並んでいるからどれを選べばいいかわからないじゃないの!!」と苦情をいうおばさんみたいに人から言われるがままに買い物をして満足している方がよほどいいのではないかと話のかみ合わないそのおばさんの文句を聞きながらそう思うのである。

そしてこの本にはそういうことを回避するための対策というものも書かれているのだが、もうこの歳になってはそんな性向を変えることはできるはずもなく、これからも迷いながら悔いながら小銭をまき散らし続けるしかないのだ。
また、貯蓄率の低いアメリカで出版された本らしく、貯金に対しても言及している。将来に向けてこれまでに書かれていた事柄に惑わされないように工夫して貯蓄をしなさいということだがそれに対してはこう言ってあげよう。一番の秘訣は、自分よりももっとしぶちんな僕の奥さんみたいな人に給料を全部渡してしまえばいいのです。

この本は「行動経済学」というものをベースに書かれているけれども、「経済学」というよりも心理学に近いような気がする。しかし、トンデモ学問のような類でもなくこれでノーベル賞を取ったひともいるそうだ。また、機会があれば読んでみよう。

コメント
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