弁護士湯原伸一(大阪弁護士会)の右往左往日記

弁護士になって感じたことを綴っていきます(注意!!本ブログは弁護士湯原の個人的見解に過ぎません)

ガイドラインが無責任すぎる件

2018年08月28日 | 法律情報
いわゆる「働き方改革」の1つとして取り上げられることが多くなった、兼業(副業)解禁についてですが、


当方もクライアントからの相談がぽつぽつと舞い込むようになってきました。


形式的には就業規則のどの部分を変更するのか、変更後の条項案はどうするのか、


就業規則の変更手続きはどうやって進めればよいのか等々の話なので、特に悩ましい相談ではありません。




現場で悩ましいと感じているのは、兼業(副業)を解禁したあとの労務管理の問題です。


具体的には、兼業(副業)による労働時間をどこまで把握するのか、把握した場合に使用者はどの程度の


安全配慮義務を負うべきなのか、という問題であり、私が質問を受ける内容もこの部分が多くなっています。




この点、政府が公表しているガイドラインを読んでいると、兼業(副業)の労働時間については


労働者からの自己申告で把握することを推奨するような記載があります。


労働者からの自己申告に期待するということを言い切ってしまっている時点で、使用者には有効打がない


(=適切な労働時間の把握と労働者の健康管理ができない)ということを言われているに等しいのですが、


極めつけは安全配慮義務に関するガイドラインの内容です。次のような記載となっています。



◆労働者の副業・兼業先での働き方に関する企業の安全配慮義務について、現時点では明確な司法判断は示されていないが、使用者は、労働契約法第5条に、安全配慮義務(労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をすること)が規定されていることに留意が必要である。



この記載内容は、要は「予測困難だから、あとは使用者側でリスク負ってね」と言っているようなもので


はっきり言って問いに対する回答になっていません。




政府公表のガイドラインもこのレベル(役に立たない)ですので、使用者側から、


「安全配慮義務違反リスクを軽減するようにするためにはどうすればよいか?」


と問われると、


「引き続き、兼業は原則禁止する」


というアドバイスが、私個人としては一番適切かつ無難ではないかと思ってしまいます。




こんな状況下で、使用者側が積極的に兼業(副業)解禁を行っていくんでしょうか…


大企業は分かりませんが、私が取扱う中小企業では、現状メリットがない、いやむしろリスクを増加


させるだけなので、導入に踏み切ることはできないのではないでしょうか。






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