早稲田大学で行われたまちづくりフォーラムに参加しました。
早稲田大学都市地域研究所の佐藤滋教授が主宰する、まちづくり市民事業研究会での催しです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/14/70/458ff7166210e59d9841c6616c83d240.jpg)
テーマは「まちづくり市民事業の可能性について」です。「まちづくり市民事業」というのは、あまり聞き慣れない言葉ですが、まずはこれを「まちづくり」+「市民事業」と理解しておきましょう。
そのうえでまず「市民事業」を考えます。これは、今日の社会経済運営を考えた時に。地方公共団体を含む「政府」と「民間」の間にはいわゆる中間セクターが必要であるという共通認識からスタートします。
これ自身、第三セクターや行政の外殻団体のようないわゆる「行政・政府側が用意する中間セクター」もあれば、市民側から必要に迫られて作られるNPOや、伝統的な協同組合などもあり、収益性から見ても営利団体から非営利団体まで様々な形態によって構成されています。まだまだその役割や成り立ちもバラバラというわけです。
そのような現状を踏まえて、早稲田大学の佐藤滋教授は、まず市民事業を「地域社会に立脚した市民による協働の組織により実行される地域の資源と需要を顕在化することにより進められる【事業】」と定義します。
「まちづくり市民事業」となれば、上記の【事業】が【自立したまちづくり事業の相対】に替わるというわけです。
※ ※ ※ ※
佐藤教授は、このまちづくり市民事業の歴史を概観して、これを五つの流れに整理しています。
①資本主義経済の修正として「社会的経済」という考えが登場し、その担い手である公益法人などが新しい目的を切り開いて、開かれた組織として市民事業に乗り出す例……官民共同出資の第三セクターなどはこれに該当するでしょう。
②「社会起業家」による市民事業。社会性をもった事業を豊かな感覚で合理的なビジネスとして事業化するもので、「社会起業家」という言葉に表されるものです。
行政から見ても、一定の公共性は理解しつつも自治体が自ら手がけるのではなく、起業家を支援することで行政よりもきめ細かな対象に収益性ある事業として実施してもらうことで経済負担が少なくても社会的な満足を得られる結果が期待出来ます。
③法定事業における事業組合による事業の発展系としての市民事業。例えば、障害者の就業支援をする社会福祉法人が自立支援法で規定された公的補助を受けながら、多様な市民事業を展開し、まちづくりやコミュニティ作りに成果を上げている例があります。
④個別の事業で行われている活動を地域に拡大するというもので、中心市街地でのエリアマネジメントのようなものが例示出来ます。
これはまちなかでの私的企業の営利を最終目的としながら、そのためには、まちなかが地域として統一的な管理運営を行わなければならないというものです。
行政でもなければ、単体企業でもない中間的な活動で、「企業市民による市民事業」と呼べるかも知れません。
⑤ごく身近な生活需要に対応する仕事を、公的部門に委ねずに、自らが担い手組織を作って対処しようとするものです。
生活サービス機能が衰弱した団地や古い住宅市街地で住宅補修や買い物サービスを行う非営利法人などの誕生が見られます。
※ ※ ※ ※
全ての市民事業がこれらの五つの分類に当てはまるとも思えませんが、佐藤教授は市民事業に見られる三つの条件として以下を掲げます。
1)運営・ファイナンスにおける自律性
外の誰からも干渉を受けずに、自らのモチベーションとモラルで運営する体制が市民事業には必要です。同時にその活動は誰がどのようにしているかが外部に対しても明らかである必要があり、顔の見える信頼感が必要です。
2)地域協働の運営体制
市民事業が地域に開かれるのと裏表に、地域の経営との連携や地域社会と支え合う体制が整えられることが肝要です。それは地域の紐帯によって支持されていることや誰にでも参加の窓口が開かれていて、自らの役割を他の組織と連携して果たすことが求められます。
3)地域資源に立脚した地域内循環構造への貢献
地域の資源とは歴史、文化、人材、地域産業、施設などが挙げられますが、これらを使って、まちづくりや芸術、人材育成、地場産業振興などが期待されます。
アメリカなどでは官と民の中間領域の地域社会運営機能を、キリスト教のチャリティ精神を基盤としてNPOやCDC(=Community Development Corporations)などが担うという社会合意があるようですが、日本ではまだゲリラ的な発生と実験的運営が実践されている段階で、明確な社会ビジョンが定かではありません。
大事なことは、地域に根ざして地域資源を利用して地域に還元するようなサービスビジネスを自らお金がちゃんと回るようなシステムとして運営されると言うこと。
官と民の中間領域が、これからの社会活動の草刈り場になりそうです。
※ ※ ※ ※
今日の勉強会では、海外事例としてアメリカのシアトルにおけるPDA(=Public Deveopment Authority)活動などが報告され、100人以上の聴衆が集まって、熱心に耳を傾けていました。
捜せば必ずどこかでこのような質の高い会合が開かれているのが東京なのだとつくづく感じます。
多くの事例紹介と理論化や体系化は東京にまかせて、それを学びつつ地方では実践あるのみなのでしょう。良い事例は参考にしながら自分の地域を活性化しなくては!
早稲田大学都市地域研究所の佐藤滋教授が主宰する、まちづくり市民事業研究会での催しです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/14/70/458ff7166210e59d9841c6616c83d240.jpg)
テーマは「まちづくり市民事業の可能性について」です。「まちづくり市民事業」というのは、あまり聞き慣れない言葉ですが、まずはこれを「まちづくり」+「市民事業」と理解しておきましょう。
そのうえでまず「市民事業」を考えます。これは、今日の社会経済運営を考えた時に。地方公共団体を含む「政府」と「民間」の間にはいわゆる中間セクターが必要であるという共通認識からスタートします。
これ自身、第三セクターや行政の外殻団体のようないわゆる「行政・政府側が用意する中間セクター」もあれば、市民側から必要に迫られて作られるNPOや、伝統的な協同組合などもあり、収益性から見ても営利団体から非営利団体まで様々な形態によって構成されています。まだまだその役割や成り立ちもバラバラというわけです。
そのような現状を踏まえて、早稲田大学の佐藤滋教授は、まず市民事業を「地域社会に立脚した市民による協働の組織により実行される地域の資源と需要を顕在化することにより進められる【事業】」と定義します。
「まちづくり市民事業」となれば、上記の【事業】が【自立したまちづくり事業の相対】に替わるというわけです。
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佐藤教授は、このまちづくり市民事業の歴史を概観して、これを五つの流れに整理しています。
①資本主義経済の修正として「社会的経済」という考えが登場し、その担い手である公益法人などが新しい目的を切り開いて、開かれた組織として市民事業に乗り出す例……官民共同出資の第三セクターなどはこれに該当するでしょう。
②「社会起業家」による市民事業。社会性をもった事業を豊かな感覚で合理的なビジネスとして事業化するもので、「社会起業家」という言葉に表されるものです。
行政から見ても、一定の公共性は理解しつつも自治体が自ら手がけるのではなく、起業家を支援することで行政よりもきめ細かな対象に収益性ある事業として実施してもらうことで経済負担が少なくても社会的な満足を得られる結果が期待出来ます。
③法定事業における事業組合による事業の発展系としての市民事業。例えば、障害者の就業支援をする社会福祉法人が自立支援法で規定された公的補助を受けながら、多様な市民事業を展開し、まちづくりやコミュニティ作りに成果を上げている例があります。
④個別の事業で行われている活動を地域に拡大するというもので、中心市街地でのエリアマネジメントのようなものが例示出来ます。
これはまちなかでの私的企業の営利を最終目的としながら、そのためには、まちなかが地域として統一的な管理運営を行わなければならないというものです。
行政でもなければ、単体企業でもない中間的な活動で、「企業市民による市民事業」と呼べるかも知れません。
⑤ごく身近な生活需要に対応する仕事を、公的部門に委ねずに、自らが担い手組織を作って対処しようとするものです。
生活サービス機能が衰弱した団地や古い住宅市街地で住宅補修や買い物サービスを行う非営利法人などの誕生が見られます。
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全ての市民事業がこれらの五つの分類に当てはまるとも思えませんが、佐藤教授は市民事業に見られる三つの条件として以下を掲げます。
1)運営・ファイナンスにおける自律性
外の誰からも干渉を受けずに、自らのモチベーションとモラルで運営する体制が市民事業には必要です。同時にその活動は誰がどのようにしているかが外部に対しても明らかである必要があり、顔の見える信頼感が必要です。
2)地域協働の運営体制
市民事業が地域に開かれるのと裏表に、地域の経営との連携や地域社会と支え合う体制が整えられることが肝要です。それは地域の紐帯によって支持されていることや誰にでも参加の窓口が開かれていて、自らの役割を他の組織と連携して果たすことが求められます。
3)地域資源に立脚した地域内循環構造への貢献
地域の資源とは歴史、文化、人材、地域産業、施設などが挙げられますが、これらを使って、まちづくりや芸術、人材育成、地場産業振興などが期待されます。
アメリカなどでは官と民の中間領域の地域社会運営機能を、キリスト教のチャリティ精神を基盤としてNPOやCDC(=Community Development Corporations)などが担うという社会合意があるようですが、日本ではまだゲリラ的な発生と実験的運営が実践されている段階で、明確な社会ビジョンが定かではありません。
大事なことは、地域に根ざして地域資源を利用して地域に還元するようなサービスビジネスを自らお金がちゃんと回るようなシステムとして運営されると言うこと。
官と民の中間領域が、これからの社会活動の草刈り場になりそうです。
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今日の勉強会では、海外事例としてアメリカのシアトルにおけるPDA(=Public Deveopment Authority)活動などが報告され、100人以上の聴衆が集まって、熱心に耳を傾けていました。
捜せば必ずどこかでこのような質の高い会合が開かれているのが東京なのだとつくづく感じます。
多くの事例紹介と理論化や体系化は東京にまかせて、それを学びつつ地方では実践あるのみなのでしょう。良い事例は参考にしながら自分の地域を活性化しなくては!
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