goo

「旅硯振袖日記 下之巻」 11

(立春のたんぽぽ)

今日は久しぶりのまとまった雨。涸れかけていた大代川にもこれで水が戻るだろう。立春の昨日、何か春の兆しを見つけようと近くを探して、タンポポの花を見つけた。咲いた花に早速アブが飛んできている。花よりもアブに驚いた。

*****************

「旅硯振袖日記 下之巻」の解読を続ける。

「名も恥ずかしき艶の都、子ゆえに目の無き親心、佐藤兵衛則清が、出離姿に弥陀仏の、御国の西という文字を、慕うて今は西行法師、鳥羽の帝の勅状に、頼朝へ神宝(かんだから)を、手渡しせよとある御使い、これ幸いと合戦に、世は修羅道の、都を離れて吾妻へ下り、鎌倉殿へ面謁の折柄に、猫間の家の断絶せしを、悲しみ給いし帝の御心、告げて当今へ事の本を、頼朝より上聞に達し、早速給わる御免状、都へ帰りて西行が、申し請けてここにあり。
※ 出離(しゅつり)- 仏門 に入ること。
※ 修羅道(しゅらどう)- 六道(ろくどう)の一つ。阿修羅が支配し、自尊心・我執・疑いの心の強い者が行く、常に争いの絶えない世界。阿修羅道。
※ 面謁(めんえつ)- 貴人に会うこと。お目にかかること。拝謁 。
※ 当今(とうぎん)- 当代の天皇。今上(きんじょう)。
※ 上聞(じょうぶん)- 天皇や君主の耳に入れること。


猫間の中将光実の嫡子、都之介光春殿、本領安堵御教書を、有難く頂戴あれ」と、首に掛けゝる錦の袋を、渡せば光春押し戴き、あら有難や忝(かたじけな)やと、三拝してぞ喜びける。
※ 本領安堵(ほんりょうあんど)- 鎌倉時代から室町時代の初めにかけて、将軍が自分に忠誠を誓った武士に対して、父祖伝来の所領の所有権を認め、保証したこと。
※ 御教書(みぎょうしょ)- 平安時代以後、三位以上の公卿または将軍の命を奉じて、その部下が出した文書。


手負いは聞いてにっこりと、笑うをこの世の暇乞い、西行はまたつと立って、まゆ玉柳、桜の枝、床に掛けたる「夢」という字の掛け物取りて、象潟が側へ立ち寄り言うようは、
「花は紅、柳は緑、世は掛け物の文字のごとく、迷いも夢の一睡なり」仏の御国へ導く法語。さも嬉し気に象潟が、息はそのまゝ絶えにけり。

都之介は言葉を正し、
「聖(ひじり)大悲の力にて、再び興す猫間の家、言い約束の写し絵殿、共に都へ同道して、夫婦となりて御坊へ御礼」と、聞いて喜ぶ写し絵は、膝を進めて白金の、猫の香炉を光春に渡して、
※ 大悲(だいひ)- 衆生の苦しみを救う仏・菩薩の大きな慈悲。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )