ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

ユダヤ126~イスラエルの国防と産業

2017-11-15 10:45:49 | ユダヤ的価値観
●イスラエルの国防

 古代ローマに祖国を滅ぼされ、各地で流浪を続けたユダヤ人は、敵と戦わず、敵と取引し、金を払い、能力を提供して、生き延びることを、生存と繁栄の方策としてきた。国家がなく、領土も持たず、独自の軍隊も持たなかった。だが、ユダヤ人は、イスラエルの建国で大きく変わった。祖国を守るために、戦争や武力衝突を繰り返す。自らが生き延びるためには、周辺諸民族を攻撃し、その土地を奪う。脅威を受ければ先制攻撃をためらわない。そうした好戦的な国民性が形成された。この変化は、聖書に書かれている古代パレスチナ時代の民族性への回帰である。イスラエル国民は、先祖返りをしたのである。
 シオニズムによってパレスチナに強引に建国されたイスラエルは、周辺諸国と敵対関係にあり、常に、戦いに負ければ、国が消滅するという瀬戸際にある。そのため、国防体制は強固である。国民皆兵制が敷かれ、18歳で徴兵が行われる。男性は3年、女性は2年の兵役が課せられる。正規兵は、召集兵11万人と職業軍人6万人を合わせた約17万人。これに加えて、40万人超の予備役兵がいる。予備役兵は、訓練を繰り返し、練度を保ち、有事に備える。45歳まで年間4~6週間出勤を義務付けられている。兵役の義務を厭う者は、イスラエルには所属しえない。そうした者は、徴兵制のない他国に所属することを選択するだろう。
 イスラエルは、アメリカの支援や軍事技術の提供を受けて、高度な軍事力を持つ。とりわけ、核兵器を保有していることが、中東における圧倒的な強みになっている。アメリカは国際社会に向かって核拡散防止を訴えているが、イスラエルに対しては核爆弾製造に必要な莫大な量の高濃縮ウランを極秘に提供し続けている。イスラエルは、推定200発程度の核爆弾を保有していると見られる。
 イスラエルの核戦略は、単なる抑止力の保持ではない。敵を威嚇し、必要とあれば躊躇なく核を使って敵を叩き潰すという攻撃的なものである。これを「サムソンの選択」という。古代ユダヤの英雄サムソンが絶体絶命に陥った時、多くの敵を道連れに自死した伝説に基づく。イスラエルは追い詰められれば、核兵器を使う。それがわかっているから、周辺諸国はうかつに手を出せない。中東の地域大国イランは、イスラエルに対抗するため、核開発を行おうとしている。だが、イスラエルの場合と違い、アメリカをはじめとする欧米諸国は、イランに強い圧力をかけ、経済制裁を行う。全くのダブル・スタンダードが取られている。
 イスラエルの安全保障は、軍事力だけでなく、諜報力にも裏付けられている。周辺諸国と敵対関係にあるイスラエルは、いわば敵に包囲されているようなものである。国を守るには、敵の動きをいち早く、正確に察知することが必要であり、情報収集こそが国防の第一と認識されている。そのために、イスラエルは、モサドという諜報機関を1951年に創設した。1954年に、モサドは、米CIA長官になったアレン・ダレスと提携した。ダレスの手配で、最新式の盗聴器・探知機・遠距離撮影用カメラなどのスパイ装置が配備され、CIAとモサドは秘密情報用の裏ルートとホットラインを設置した。その後も、モサドを育てたのは、アメリカである。
 モサドは、アメリカのCIA、イギリスのMI6、旧ソ連のKGBと肩を並べる諜報機関へと成長した。その諜報能力は、世界最高という見方もある。モサドの正規の人員は、わずか200人ほどといわれる。だが、おびただしい協力者が世界中にネットワークを張り巡らし、正規メンバーの活動を支えている。
 諜報機関は、情報を収集するだけではない。自国に有利になるように、宣伝工作を行う。戦略的なプロパガンダである。国際社会におけるユダヤ人の地位に深く関わるホロコースト説についても、単に民間のユダヤ人が唱えているだけでなく、国家的な諜報広宣機関が関与していることだろう。モサドと反ユダヤ主義監視団体は、一体となって活動していると見られる。

●イスラエルの産業

 次に、イスラエルの産業について述べる。イスラエルは、中東の乾燥地帯に位置する。鉱工業の資源は豊かではない。そうしたイスラエルが産業の中心にしているのが、ダイヤモンドである。輸出入とも第1位を、ダイヤモンドが占める。インド等から原料を輸入し、加工して各国に輸出している。
 ユダヤ人とダイヤモンドの関係は古く、また深い。古代から18世紀初頭まで世界唯一のダイヤモンド産出地は、インドだった。ユダヤ商人はインドへ行って、中近東やヨーロッパのユダヤ商人と協力して、ダイヤモンドの取引をしていた。中世のヨーロッパで高利貸しとなったユダヤ人は、封建諸侯や貴族が担保として出す金銀細工や宝石類を鑑識する眼を養った。ポルトガルの全盛期には、ユダヤ人がインドからダイヤモンドの原石をヨーロッパに持ち込んだ。その原石がカットの技術によって、宝石としての価値を持つようになった時、ユダヤ人を支える大きな力になった。15世紀末にイベリア半島から追放されたユダヤ人の一部は、オランダやベルギーに逃れ、そこでダイヤモンドの研磨・取引・販売に従事した。それが、本格的な産業への端緒となった。17世紀には、加工技術がさらに発達した。迫害・追放・移住の繰り返しの中で、ダイヤモンドは彼らが生活を守るために重要な手立てとなった。
 第2次世界大戦の前まで、ダイヤモンドの世界最大の加工センターは、ベルギーのアントワープだった。アントワープは今も世界のダイヤモンド加工と取引の中心地だが、そのさらに中心部にあるペリカン通りには、ユダヤ人しか住んでいないといわれる。大戦中、当時イギリスの保護領だったパレスチナでは、ユダヤ人の国際的ネットワークのもとにダイヤモンド加工が行われていた。イスラエルでは、他にめぼしい産業がないことから、この経験が生かされ、ダイヤモンドの加工と取引が戦略的産業に位置付けられた。そして、イスラエルは、ベルギー・オランダのユダヤ人社会からダイヤモンドに関するノウハウを学び、ダイヤモンド産業の振興を図った。20年足らずで、ダイヤモンドが輸出の主力になり、イスラエルはアントワープと並んで、世界の主要なダイヤモンドの加工取引センターにのし上がった。
 ダイヤモンドは宝石としてだけでなく、工業に多く使われる。硬度が高いので、研磨等の機械に用いられている。現代工業の多くがダイヤモンドなくして成立しない。自動車、自転車、金属線、スクリューなどの製品は、ダイヤモンドの助けを借りて製造される。冷蔵庫、トースター、ラジオ、テレビなどあらゆる電気製品が、ダイヤモンドを使ったダイカストに依存している。世界の小型ダイヤモンドの約80%は、イスラエル製である。またイスラエルの対日輸出の70%を、ダイヤモンドが占めている。
 ダイヤモンドは、ロスチャイルド家のグループが世界の資源の多くを抑え、市場を支配している。イスラエルは、産業の中心であるダイヤモンドを通じても、ユダヤ系の巨大国際金融資本と固く結託している。

 次回に続く。