ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

ユダヤ127~21世紀のロスチャイルド家

2017-11-17 08:50:30 | ユダヤ的価値観
●21世紀のロスチャイルド家

 イスラエルの背後には、ロスチャイルド家という世界最大の大富豪とそれに連なる巨大国際金融資本家たちがいる。そこに、アメリカ=イスラエル連合という、巨大な資金力、軍事力、諜報力を持つ勢力が形成されている。
 ここで、今日のロスチャイルド家について書くと、19世紀に栄華を誇ったロスチャイルド家のうち、現在残っているのは、ロンドンのロスチャイルド家とパリのロスチャイルド家(ロチルド家)である。ほかの分家は、ヨーロッパの政治・経済の激動やユダヤ人迫害の中で消滅したか、男系が絶えたため婚姻により別の家が継いでいる。英仏のロスチャイルド家、その親族及びその系列の銀行・企業等を合わせて、ロスチャイルド家とそのグループということができる。
 英仏のロスチャイルド家は、今なお世界で最も巨大な資金力を持つ家柄の一つである。これにつらなるグループは、金(ゴールド)・ダイヤモンド・石油・ウラン等の重要資源の多くを抑えている。
 金とダイヤモンドについては、ロスチャイルド家は、そのグループに属する南アフリカのオッペンハイマー財閥等と連携し、国際価格を思いのままに操れるほどの独占的な地位を保っている。
 まず金の国際価格は、ロンドンにある通称「黄金の間」での取引で、事実上決定される。「黄金の間」は、ロスチャイルド家の本拠N・M・ロスチャイルド&サンズ社のなかにある。ロスチャイルド家とそのグループが取り仕切る金によって、シティとウォール街が結ばれている。通貨を含むあらゆる金融商品は、究極において今も金(ゴールド)によって価値を裏付けられている。その大元のところをロスチャイルド家が掌握している。
 また、ダイヤモンドはイスラエルの主要産業だと先に書いた。大英帝国時代の1888年、ロスチャイルド家に忠実なセシル・ローズが同家支援で南アフリカに作ったデビアス社が、現在も世界のダイヤモンドの8割を支配している。イスラエルは、ロスチャイルド家の支援を受けて、ダイヤモンドの輸出入を行って、富を得ている。
 次に、石油については、1930年代以降、オイル・メジャーと呼ばれる巨大な国際石油企業が、世界の石油を支配してきた。1968年にアラブの産油国がOAPECを結成し、以後メジャーの寡占体制に対抗する構図となっている。しかし、アメリカ、イギリス、オランダ系の7社、セブン・シスターズ(七人姉妹)の優位は変わらない。石油は、アメリカのロックフェラー家の主要産業だが、ロスチャイルド家とそのグループも、イギリスとオランダを中心とするロイヤル・ダッチ・シェルに投資しており、メジャーの一角を占めている。
 次に、水についてだが、水は「21世紀の石油」といわれるほど、価値が上がりつつある。21世紀後半「飢餓の時代」になるという予測があり、食糧の生産・販売は今後一層重要性を増す。ロスチャイルド家とそのグループは、人間の生命に直結する水と食糧についても相当部分を傘下に収めていると見られる。
 ここで特筆したいのは、ウランについてである。ウランは、核兵器の原料であり、また原子力発電所の燃料である。現代世界の軍事とエネルギーは、ウラン抜きには成り立たない。そのウランの多くをロスチャイルド家とそのグループが抑えている。
 ウランは、戦前からロスチャイルド家所有のアフリカのウラン鉱山で採掘されていた。その後、今日までウランの鉱山は、ロスチャイルド財閥が、ほぼ独占してきた状態である。ロスチャイルド家とウランの関係については、広瀬隆の著書『赤い盾』が詳しいので、その記述に基づいて概略を記す。
 ロスチャイルド家のウラン支配は、英仏のロスチャイルド家の連携による。ロスチャイルド家は、初代マイヤー・アムシュルの三男ネイサンが、ロンドン家の初代当主となった。そのネイサンの血を引く者は、ロンドンのアンソニーとパリのアンリの二人だけとなった。彼らは、アムシェルから数えて5代目にあたる世代である。
 ロンドン家の当主となったアンソニーは、パリ家の鉱山会社ペナロヤの創業一族から、イヴォンヌ・カーエンを妻に迎えた。一方、アンリは、イギリスのリオ・チント・ジンク社の創業一族と結婚し、スペインからアフリカまで広大な範囲の鉱山を支配した。こうして、ロンドン家とパリ家が妻となる女性を交換し合うことで、大戦後、ロスチャイルド家はウランをほぼ独占的に支配することが可能になった。このことは、石油の時代であるとともに、原子力の時代である20世紀以降の世界において、ロスチャイルド家とそのグループは大きな強みを加えたことを意味する。
 1945年、アンソニー・ロスチャイルドは、カナダに広大な山林の開発権を獲得した。その開発権は、イングランドの面積に匹敵する13万平方キロに及んだ。アメリカによる原爆投下の成功を受けて、アンソニーは、そこで世界最大のウラン鉱山を開発する事業を進めた。傘下の資源会社リオ・チント・ジンク社とその子会社のリオ・アルゴムが、この事業を担った。両社は、南アフリカのナミビアのロッシング・ウラン鉱山を支配し、さらにオーストラリア鉱業を通じてオーストラリアのウラン鉱山も支配するようになった。
 パリ・ロスチャイルド家の方では、アンソニーの妻の実家カーエン家が創業したペナロヤとその親会社ル・ニッケル(現イメタル)を中心に、傘下にあるウラン・メジャーのモクタ等が鉱山事業を担っている。
 こうして北米・アフリカ・オーストラリアの3大陸のウランを、ロスチャイルド家とそのグループが支配する体制ができた。英仏のロスチャイルド家は、親族間結婚の閨閥で結ばれるとともに、重役の席を相互に交換しており、ウランの国際秘密カルテルを形成し、価格を自由に操作できる体制を生み出した。ロンドンのリオ・チント・ジンク社が、その元締めになっている。

 次回に続く。

ユダヤ126~イスラエルの国防と産業

2017-11-15 10:45:49 | ユダヤ的価値観
●イスラエルの国防

 古代ローマに祖国を滅ぼされ、各地で流浪を続けたユダヤ人は、敵と戦わず、敵と取引し、金を払い、能力を提供して、生き延びることを、生存と繁栄の方策としてきた。国家がなく、領土も持たず、独自の軍隊も持たなかった。だが、ユダヤ人は、イスラエルの建国で大きく変わった。祖国を守るために、戦争や武力衝突を繰り返す。自らが生き延びるためには、周辺諸民族を攻撃し、その土地を奪う。脅威を受ければ先制攻撃をためらわない。そうした好戦的な国民性が形成された。この変化は、聖書に書かれている古代パレスチナ時代の民族性への回帰である。イスラエル国民は、先祖返りをしたのである。
 シオニズムによってパレスチナに強引に建国されたイスラエルは、周辺諸国と敵対関係にあり、常に、戦いに負ければ、国が消滅するという瀬戸際にある。そのため、国防体制は強固である。国民皆兵制が敷かれ、18歳で徴兵が行われる。男性は3年、女性は2年の兵役が課せられる。正規兵は、召集兵11万人と職業軍人6万人を合わせた約17万人。これに加えて、40万人超の予備役兵がいる。予備役兵は、訓練を繰り返し、練度を保ち、有事に備える。45歳まで年間4~6週間出勤を義務付けられている。兵役の義務を厭う者は、イスラエルには所属しえない。そうした者は、徴兵制のない他国に所属することを選択するだろう。
 イスラエルは、アメリカの支援や軍事技術の提供を受けて、高度な軍事力を持つ。とりわけ、核兵器を保有していることが、中東における圧倒的な強みになっている。アメリカは国際社会に向かって核拡散防止を訴えているが、イスラエルに対しては核爆弾製造に必要な莫大な量の高濃縮ウランを極秘に提供し続けている。イスラエルは、推定200発程度の核爆弾を保有していると見られる。
 イスラエルの核戦略は、単なる抑止力の保持ではない。敵を威嚇し、必要とあれば躊躇なく核を使って敵を叩き潰すという攻撃的なものである。これを「サムソンの選択」という。古代ユダヤの英雄サムソンが絶体絶命に陥った時、多くの敵を道連れに自死した伝説に基づく。イスラエルは追い詰められれば、核兵器を使う。それがわかっているから、周辺諸国はうかつに手を出せない。中東の地域大国イランは、イスラエルに対抗するため、核開発を行おうとしている。だが、イスラエルの場合と違い、アメリカをはじめとする欧米諸国は、イランに強い圧力をかけ、経済制裁を行う。全くのダブル・スタンダードが取られている。
 イスラエルの安全保障は、軍事力だけでなく、諜報力にも裏付けられている。周辺諸国と敵対関係にあるイスラエルは、いわば敵に包囲されているようなものである。国を守るには、敵の動きをいち早く、正確に察知することが必要であり、情報収集こそが国防の第一と認識されている。そのために、イスラエルは、モサドという諜報機関を1951年に創設した。1954年に、モサドは、米CIA長官になったアレン・ダレスと提携した。ダレスの手配で、最新式の盗聴器・探知機・遠距離撮影用カメラなどのスパイ装置が配備され、CIAとモサドは秘密情報用の裏ルートとホットラインを設置した。その後も、モサドを育てたのは、アメリカである。
 モサドは、アメリカのCIA、イギリスのMI6、旧ソ連のKGBと肩を並べる諜報機関へと成長した。その諜報能力は、世界最高という見方もある。モサドの正規の人員は、わずか200人ほどといわれる。だが、おびただしい協力者が世界中にネットワークを張り巡らし、正規メンバーの活動を支えている。
 諜報機関は、情報を収集するだけではない。自国に有利になるように、宣伝工作を行う。戦略的なプロパガンダである。国際社会におけるユダヤ人の地位に深く関わるホロコースト説についても、単に民間のユダヤ人が唱えているだけでなく、国家的な諜報広宣機関が関与していることだろう。モサドと反ユダヤ主義監視団体は、一体となって活動していると見られる。

●イスラエルの産業

 次に、イスラエルの産業について述べる。イスラエルは、中東の乾燥地帯に位置する。鉱工業の資源は豊かではない。そうしたイスラエルが産業の中心にしているのが、ダイヤモンドである。輸出入とも第1位を、ダイヤモンドが占める。インド等から原料を輸入し、加工して各国に輸出している。
 ユダヤ人とダイヤモンドの関係は古く、また深い。古代から18世紀初頭まで世界唯一のダイヤモンド産出地は、インドだった。ユダヤ商人はインドへ行って、中近東やヨーロッパのユダヤ商人と協力して、ダイヤモンドの取引をしていた。中世のヨーロッパで高利貸しとなったユダヤ人は、封建諸侯や貴族が担保として出す金銀細工や宝石類を鑑識する眼を養った。ポルトガルの全盛期には、ユダヤ人がインドからダイヤモンドの原石をヨーロッパに持ち込んだ。その原石がカットの技術によって、宝石としての価値を持つようになった時、ユダヤ人を支える大きな力になった。15世紀末にイベリア半島から追放されたユダヤ人の一部は、オランダやベルギーに逃れ、そこでダイヤモンドの研磨・取引・販売に従事した。それが、本格的な産業への端緒となった。17世紀には、加工技術がさらに発達した。迫害・追放・移住の繰り返しの中で、ダイヤモンドは彼らが生活を守るために重要な手立てとなった。
 第2次世界大戦の前まで、ダイヤモンドの世界最大の加工センターは、ベルギーのアントワープだった。アントワープは今も世界のダイヤモンド加工と取引の中心地だが、そのさらに中心部にあるペリカン通りには、ユダヤ人しか住んでいないといわれる。大戦中、当時イギリスの保護領だったパレスチナでは、ユダヤ人の国際的ネットワークのもとにダイヤモンド加工が行われていた。イスラエルでは、他にめぼしい産業がないことから、この経験が生かされ、ダイヤモンドの加工と取引が戦略的産業に位置付けられた。そして、イスラエルは、ベルギー・オランダのユダヤ人社会からダイヤモンドに関するノウハウを学び、ダイヤモンド産業の振興を図った。20年足らずで、ダイヤモンドが輸出の主力になり、イスラエルはアントワープと並んで、世界の主要なダイヤモンドの加工取引センターにのし上がった。
 ダイヤモンドは宝石としてだけでなく、工業に多く使われる。硬度が高いので、研磨等の機械に用いられている。現代工業の多くがダイヤモンドなくして成立しない。自動車、自転車、金属線、スクリューなどの製品は、ダイヤモンドの助けを借りて製造される。冷蔵庫、トースター、ラジオ、テレビなどあらゆる電気製品が、ダイヤモンドを使ったダイカストに依存している。世界の小型ダイヤモンドの約80%は、イスラエル製である。またイスラエルの対日輸出の70%を、ダイヤモンドが占めている。
 ダイヤモンドは、ロスチャイルド家のグループが世界の資源の多くを抑え、市場を支配している。イスラエルは、産業の中心であるダイヤモンドを通じても、ユダヤ系の巨大国際金融資本と固く結託している。

 次回に続く。

憲法改正は「自衛隊の明記」を最優先に~百地章氏

2017-11-14 08:53:04 | 憲法
 衆議院選挙では、初めて憲法改正を公約に掲げた自民党が圧勝し、衆院で絶対多数を得た。また、自民、公明、維新、希望を改憲勢力とすれば、改憲勢力が衆院の8割を超えた。こうした状況を踏まえて、国士舘大学特任教授兼日本大学名誉教授の百地章氏は、10月27日の産経新聞の記事で次のような見解を述べた。
 「総選挙の結果、衆議院では改憲に前向きの勢力が全体の8割を占めることになった。自民党は公約の中に『憲法改正』を大きく掲げて戦い、大勝したわけである。これは戦後政治史上初めての快挙であり、安倍晋三首相の下、自民党は自信をもって憲法改正を願う国民の期待に応え、速やかに改憲に着手すべきだ」
 どこから改正に着手すべきかについては、「(1)国の根幹に関わる課題で、(2)国家的な緊急性を有すること、しかも(3)国会で3分の2以上、国民投票で過半数の賛成が得られそうなテーマ、が優先されるべきである」とし、「真っ先にあげられるのは『自衛隊の明記』や『緊急事態条項』であろう」という見解を示している。
 百地氏は、各種世論調査の結果を踏まえて次のように言う。「残念ながら国民の多くは戦力不保持の9条2項の改正まで望まず、自衛隊明記支持に留まっているというのが現状であろう。それ故、憲法施行後70年間、一字一句改正できなかった厳しい現実を踏まえるならば、憲法改正の第一歩は、国会の3分の2以上および国民の過半数の賛成が得られそうな『自衛隊明記』から進めるしかないと思われる」と。
 仮に自衛隊明記を優先課題とする場合、問題は与党の一角をなす公明党である。百地氏は言う。「同党は、前回(平成26年12月)の総選挙では、公約で『9条を堅持した上で、自衛隊の存在の明記や国際貢献のあり方を、加憲の対象として慎重に検討』と明記していた。そのため安倍首相は公明党に配慮し、苦渋の決断の結果、9条1、2項には手を加えず、『自衛隊の保持を明記』する案を提示したわけである。後退したとはいえ、同党は今回の公約でも『自衛隊の存在を明記する提案の意図は理解できないわけではない』『不備があれば新たな条文を加える』としており、納得のいく説明さえできれば、自衛隊明記賛成に回る可能性は十分あると期待している」と。
 自民党は、公明党を含む多くの政党の同意を得られような9条3項の具体的な条文案を準備し、かつその案の場合、9条2項をどのように解釈するかの解釈案を示し、国民多数の賛同を得られるように、この課題に取り組んでほしいものである。
 以下は、百地氏の記事の全文。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
●産経新聞 平成29年10月27日

2017.10.27 09:00更新
【正論】
主権者に改憲の機会を与えよ 「自衛隊の明記」最優先 発議のサボタージュ許されない 国士舘大学特任教授 日本大学名誉教授・百地章
http://www.sankei.com/column/news/171027/clm1710270005-n1.html

 総選挙の結果、衆議院では改憲に前向きの勢力が全体の8割を占めることになった。自民党は公約の中に「憲法改正」を大きく掲げて戦い、大勝したわけである。これは戦後政治史上初めての快挙であり、安倍晋三首相の下、自民党は自信をもって憲法改正を願う国民の期待に応え、速やかに改憲に着手すべきだ。

≪防衛・安全保障問題こそ喫緊の課題≫
 憲法改正の最終決定権は主権者国民にあり、その是非を問う国民投票は、主権者国民に与えられた極めて重い権利である。にもかかわらず、これまで国会が一度も憲法改正の発議をしなかったため、国民はこの権利を行使したくても行使することができなかった。国の将来が問われている今、国会には主権行使の機会を国民に保障する責務があり、これ以上改憲の発議をサボタージュし続けることは許されない。
 問題はどこから改正に着手すべきかである。自民党の公約では「自衛隊の明記」「緊急事態条項」「教育の無償化」そして「参議院の合区解消」が挙げられていたが、(1)国の根幹に関わる課題で、(2)国家的な緊急性を有すること、しかも(3)国会で3分の2以上、国民投票で過半数の賛成が得られそうなテーマ、が優先されるべきである。となれば、真っ先にあげられるのは「自衛隊の明記」や「緊急事態条項」であろう。
「自衛隊の明記」については、自民党の当選者の75%が賛成しており(毎日、10月24日)、優先課題にふさわしいと思われる。
 北朝鮮による核や弾道ミサイルの脅威は、日を追って増大しており、年末から来年初めにかけては、アメリカが軍事行動に出る可能性さえ指摘されている。また、中国は尖閣諸島を狙い、連日、政府公船が接続水域や領海を侵犯している。
 その意味でも、わが国の存亡にかかわる防衛・安全保障問題こそ、喫緊の課題といえよう。

≪国民の多数は自衛隊明記支持≫
 国民世論の反応は一概に言えないが、各種世論調査をみる限り、国民の多数は自衛隊明記を支持する傾向にあると言ってよかろう。
 安倍首相(自民党総裁)が自衛隊明記案を提唱した直後の世論調査では、毎日(5月20、21日調査)と朝日(同13、14日)で反対の方が数ポイント上回っていただけで、それ以外の読売(同12~14日)、産経・FNN(同13、14日)、共同(同20、21日)それにNHK(同12~14日)では賛成の方が多く、読売、産経・FNNおよび共同では、反対を約20ポイント上回っていた。
また10月の調査でも、読売(12日)と朝日(19日)では反対の方が数ポイント多かったものの、時事(13日)、NHK(16日)、産経・FNN(17日)では、賛成の方が多く、その差も時事で14ポイント、産経・FNNでは18ポイントと開いている。
 残念ながら国民の多くは戦力不保持の9条2項の改正まで望まず、自衛隊明記支持に留(とど)まっているというのが現状であろう。それ故、憲法施行後70年間、一字一句改正できなかった厳しい現実を踏まえるならば、憲法改正の第一歩は、国会の3分の2以上および国民の過半数の賛成が得られそうな「自衛隊明記」から進めるしかないと思われる。
 その際、「戦争に突き進む」という反対派のデマに惑わされないために、なぜ「自衛隊の明記」が必要かを分かりやすく説明し、さまざまな疑問に丁寧に答えていく必要がある。筆者は先に自衛隊の明記は違憲の疑いを払拭するだけでなく、自衛隊及び隊員の地位を高め、栄誉と誇りを与えるためであると述べたが(正論「改憲草案作りを粛々と進めよ」8月9日)、今後もさらに必要性を論じていきたいと思う。

≪与野党連携進め賛同の獲得を≫
 また、国民投票を考えれば、与野党を超えて連携し、より多くの国民の賛同を獲得していく必要がある。この点、野党では日本維新の会が公約に「9条改正」を掲げ、松井一郎代表は「自民党案が固まってくれば、まじめに正面から議論したい」と述べている。
 希望の党の小池百合子代表は9条改正論者であり、自衛隊明記には否定的だが、公約では「〔自衛隊を〕憲法に位置づけることは、国民の理解が得られるかどうか見極めた上で判断」としており賛同に含みを持たせている。
 問題は公明党だ。同党は、前回(平成26年12月)の総選挙では、公約で「9条を堅持した上で、自衛隊の存在の明記や国際貢献のあり方を、加憲の対象として慎重に検討」と明記していた。そのため安倍首相は公明党に配慮し、苦渋の決断の結果、9条1、2項には手を加えず、「自衛隊の保持を明記」する案を提示したわけである。
 後退したとはいえ、同党は今回の公約でも「自衛隊の存在を明記する提案の意図は理解できないわけではない」「不備があれば新たな条文を加える」としており、納得のいく説明さえできれば、自衛隊明記賛成に回る可能性は十分あると期待している。(国士舘大学特任教授 日本大学名誉教授・百地章 ももちあきら)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「ユダヤ的価値観の超克」第4部をアップ

2017-11-13 08:55:56 | ユダヤ的価値観
 ブログに連載中の「ユダヤ的価値観の超克~新文明創造のために」は、既に掲載した分をマイサイトに掲示していますが、このたび第4部「現代世界のユダヤ人」をそこに追加しました。第4部の章立ては、次のようになっています。

 第1章 イスラエルの建国で中東に対立構造が
 第2章 ホロコースト説は検証が必要
 第3章 ユダヤ人の人権と人類の人権
 第4章 ユダヤ的価値観の世界的普及へ
 第5章 米国政治とユダヤ人の活動 
 第6章 グローバリズムの推進 
 第7章 フランスにおけるユダヤ的知性 
 第8章 アメリカ・ユダヤ人の権力参入 
 第9章 経済学の歴史とユダヤ人 
 第10章 オバマ政権からトランプ政権へ

 通してお読みになりたい方は、下記へどうぞ。
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion12-4.htm

ユダヤ125~イスラエルとユダヤ人

2017-11-12 09:25:39 | ユダヤ的価値観
 本稿「ユダヤ的価値観の超克~新文明創造のために」は、今回から第5部「ユダヤ人の現在から将来への展望」に入る。

●今日のイスラエル~人口と宗教

 本章では、ユダヤ人の現在から将来への展望について書く。初めに、イスラエル、続いてアメリカ、その後、世界の中のユダヤ人について記す。
 イスラエルは、中東の地中海に面した場所にあり、統治する面積は、わが国の四国ほどの広さである。この土地に約852万人(2016年5月現在、イスラエル中央統計局)の国民が居住している。そのうち、約636万人がユダヤ人である。それ以外にその人口の約1.4倍のユダヤ人が、世界各地のイスラエル以外の国に居住している。彼らはユダヤ教徒であると同時に、所属国の国民として生活し、行動している。イスラエルは、毎年かなりの勢いで、人口が増え続けている。もともと伝統的なユダヤ教徒は避妊を行わず子だくさんであることと、海外からの移住者が多いこととの両方によっている。イスラエルは、1950年に帰還法を制定して、海外のユダヤ人がイスラエルへの移住を希望すれば、ただちにイスラエル市民権を与えると約束した。これは、ユダヤ人の祖国としてイスラエルを建設したシオニズムの理念に基づく決定だった。また同時に民族と宗教の関係は不可分とするユダヤ教の伝統的教義に基づく決定だった。さらに1970年の帰還法改正で、祖父母のうち一人がユダヤ人なら誰でも海外からイスラエルに移住できると定めた。同時に当該人物の配偶者や子供は、キリスト教徒等であっても、イスラエル移住の権利があるとした。
 人口の74.8%はユダヤ人であり、ユダヤ教徒である。イスラエルのユダヤ教では、正統派と超正統派が絶大な権力を振るっている。会堂の98%は、正統派・超正統派である。だが、ユダヤ教は国教ではない。イスラエルは、近代国民国家として、政教分離をたてまえとしている。イスラエル国民の25.2%、つまり約4分の1はユダヤ人ではない。残りの大部分はアラブ人で、これが約20%を占める。その他が約5%で、多くは旧ソ連出身の非ユダヤ人である。出身国は90か国以上に上り、さまざまな肌の人間が住む典型的なモザイク社会となっている。また、ユダヤ教を信奉する者はユダヤ人とされるから、ユダヤ教徒には様々な人種・民族がいる。それゆえ、ユダヤ人に共通する人種的な特徴、体形や皮膚の色はない。
 ユダヤ人以外のイスラエル国民の大部分は、アラブ人である。その多くはイスラエル建国の際に、イスラエル領内に残留し市民権を得た者の子孫である。残留せずに領外に出た者は、パレスチナ難民となった。アラブ系のイスラエル国民の80%強は、イスラーム教徒である。またキリスト教徒やドルーズ派等もいる。2012年現在、イスラエルの宗教別人口は、ユダヤ教徒が75.1%、イスラーム教徒17.3%、キリスト教徒1.9%、ドルーズ教徒1.6%とされる(ユダヤ中央統計局)。ユダヤ教の超正統派を除くと、イスラエルで最も出生率の高いのは、アラブ人である。そのため、将来的には非ユダヤ人の割合が高まることが予想されている。
 イスラエルはシオニズムによって建国された国家である。だが、上記のように、シオニズムが生み出した国家なのに、国民はユダヤ教徒だけではなく、ユダヤ人だけでもない。そういう矛盾を抱えている国家が、イスラエルなのである。そのため、民族と宗教の関係は不可分とするユダヤ教の伝統的な教義は、国家と宗教の間に複雑な問題を生み出している。矛盾は明らかながら、ユダヤ教の宗教法はイスラエルの市民生活を規制している。そのため、国民生活に宗教法を強制的に適用することには、多数の国民が反発している。
 宗教だけでなく政治思想も一様ではない。国民には、自由主義者もいれば、社会主義者もいる。右翼政党連合のリクード、左翼の労働党の他、少数党がいくつもある。アラブ諸国との対決を主張する勢力もあれば、和平共存を願う勢力もある。こういう複雑な事情を抱えているのが、今日のイスラエルである。
 とはいえ、国民の大多数はユダヤ人で、また正統派及び超正統派が権力を振るっているから、他の多くの民主主義国より国民の統合はしっかり行われている。それが、イスラエルの国民国家としての強さである。
 イスラエルは、ロスチャイルド家をはじめとするユダヤ系の巨大国際金融資本家の支援を受けていると見られる。アメリカもほかの国には与えていない優遇措置をしている。そして、国外から資金を提供したり、経済的に支援する者は、その意思をイスラエルの政治に及ぼしていると推測される。
 現代国家では、強い経済力を持つ集団が政治を実質的に支配し、世論を操作する。デモクラシー(democracy)と見えるものの実態は、プルータクラシー(plutocracy)ともいうべき富の力による政治になっている。デモクラシーは「民衆参政制度」「民衆参加政治」、プルータクラシーは「財閥支配政治」「金権政治」などと訳すことが可能である。多くの自由民主主義国の政治体制は、デモクラティック・プルータクラシー、すなわち民衆参加型の財閥支配政治と呼ぶことができるだろう。イスラエルもアメリカもそうであり、アメリカ=イスラエル連合は、国際的なデモクラティック・プルータクラシーの連合体と見ることができよう。

 次回に続く。

安倍=トランプ日米首脳会談が成功

2017-11-11 09:32:09 | 時事
 11月6日トランプ大統領が初来日し、安倍首相と日米首脳会談を行い、日米首脳の固いきずなを世界にアピールしました。特に北朝鮮、中国に対して、強いメッセージとなりました。トランプ大統領は、拉致被害者家族と面談し、解決への協力を約束してくれました。また、安倍首相の「自由で開かれたインド太平洋戦略」をトランプ大統領が受け入れ、推進されることになりました。極めて成果の多い首脳会談でした。この会談が、日本、アメリカ、そしてアジアと世界の平和と繁栄につながることを期待します。
 トランプ大統領は、7日離日。韓国・中国での首脳会談を行い、ベトナムでのAPECに参加します。このアジア歴訪でトランプ大統領の対北、対中、対アジア政策にどういう変化が現れるかが注目されますが、安倍首相との連携が一層明確になると予想されます。

●トランプ大統領の発言

 来日後、最初の演説で、トランプ大統領「美しい国。並外れた人々の住む国。日本は宝のようなパートナーであり、重要な同盟国。数十年に渡る友情、深い尊敬、驚くべき文化、強い精神、大変誇り高い歴史を持っています」

 夕食時に、トランプ大統領「とにかくこちらから北朝鮮に、何らかの対話を請う(beg)てはならない」。安倍首相「もちろん、向こうから対話を求めるようにしなければいけない」

 共同記者会見等で、トランプ大統領「(貿易問題で)日米同盟に悪い影響を与えることはしない」

 拉致被害者の家族との面談で、トランプ大統領「米海兵隊は、仲間を戦地に残して逃げ帰りはしない。最後の一人まで救出する。だから拉致被害者も最後の一人まで助けるのだ」「皆さんは強いリーダーを持っている」。安倍首相に、「シンゾー、これは必ず一緒にやろう(解決しよう)」

 首脳会談で、トランプ大統領「シンゾーだから日米関係はいいんだ。シンゾーだから、私は日本のためにやる。もし(日本の首相が)シンゾーじゃなければ、私は(他国と自由に契約を結ぶ)フリーエージェントになるんだ」

 ゴルフ場で記者団に、トランプ大統領「皆さんは、素晴らしい首相を選んだね」「僕も、きっと彼に投票するよ」

●有識者の見方

 前嶋和弘上智大教授「日米の首脳が濃密な時間を過ごして固い絆を演出し、北朝鮮に最大限の圧力をかける姿勢を確認したことは大きな成果だ。日本からすれば、拉致問題で米国と協力できる土壌をつくったと評価できる」

 元外交官・宮家邦彦氏「安全保障分野で安倍晋三首相の持論である『自由で開かれたインド太平洋戦略』の推進が確認されたことは、評価できる。同盟国を重視し、中国に懸念を持つ米国の伝統的な外交政策が復権したと言える」

 ジャーナリスト・櫻井よしこ氏「安倍さんが持ち出したインド太平洋構想をトランプさんが受け入れた。日本の総理大臣が米国の外交政策を従わせたのは初めて。内向きの大統領にとって初めての多国間構想。安倍さんの影響力は大きい」

 ジャーナリスト・有本香氏「安倍総理を『親米』と言うが、それ以外の国とも相当緊密な外交をやってる。安倍総理は70ヵ国の地域に訪問。印には3回訪問、日米印で海軍合同軍事演習をやり、印&豪州と情報共有をし新たな安全保障体制を作る、ASEANの国に複数回訪問。これが功を奏してトランプは安倍の話を聞こうと(いうことになっている)」

 元アメリカ国務省・日本部長、ケビン・メア氏「トランプ大統領は安倍総理を尊敬している。安定していて指導力・リーダーシップを発揮している」

●ネットの声

 nori氏「しかし、こんなに凄んごい総理大臣見た事無い。だって、失礼乍ら傍目にはかなりクセの有りそうなトランプ氏、プーチン氏、ドゥテルテ氏、この3人の大統領と仲良くして、其々の仲も取っちゃうんだから・・。安倍首相以外にこれだけの事が出来る人居る? で、中韓殆ど相手にせず、ってのもすごい」

ユダヤ124~トランプ政権の人事とユダヤ人社会の関係

2017-11-10 09:26:52 | ユダヤ的価値観
●トランプ政権の人事とユダヤ人社会の関係

 トランプ大統領は政界の異端児であり、政治経験のない独裁者タイプである。こうした人物が強大な権限を持つ大統領になったため、側近にどういう人材が集まり、主要閣僚にどういう人材が就くかが非常に重要である。周りをしっかりした人間が固めて、外交・安全保障・経済等について進言したり、実務を執ったりしないと、トランプはあちこちで暴走すると見られた。
 閣僚人事で注目されたのは、まずトランプが、選挙対策本部の最高責任者を務めたスティーブ・バノンを首席戦略官・上級顧問に指名したことである。トランプはバノンに首席補佐官と同等という高い地位を与えた。このことは、トランプ政権において、バノンの考え方や戦略が大きな影響力を持つだろうことと予想された。
 バノンは元海軍将校で、退役後、ゴールドマン・サックスで投資銀行業務を行った経験があり、クリントン財団の内情をよく知っており、同財団の問題を調べ、それをヒラリー攻撃に用いた。バノンは、オンライン・ニュースサイト、「ブライトバート・ニュース」の会長で、同サイトを強硬派のポピュリズム的なニュースサイトに育て、白人至上主義者とオルト右翼(いわゆるネット右翼の総称)に人気の情報源にすることに成功した。
 私が注目したのは、彼が反ユダヤ主義者として非難されてきたことである。米国ではユダヤ・ロビーが大きな力を持ち、政権に強い影響力を振るっている。そうした中で、反ユダヤ主義者との批判のあるバノンが、政権の幹部になるということは、ユダヤ人に対する態度を改めたのか。もし変えていないとすれば、彼を指名したトランプとユダヤ人社会との間で衝突が起こるのではないかと考えられた。トランプがバノンを政権の指導的な役職に指名したことを、ユダヤ名誉毀損防止同盟(ADL)は非難した。ADL幹部のジョナサン・グリーンブラットは、バノンが指名を受けた日を「悲しみの日」と呼んだ。
 私は、おそらくバノンは選挙対策本部の仕切り役に就く段階で、親ユダヤに転換したのだろうと推測した。彼の主敵はヒラリーであり、民主党及び共和党主流派だから、反ユダヤ主義は止めるという戦略的判断をしたのだろうと思われた。今の米国ではユダヤ人社会から敵視されると、選挙で勝てない。
 ここで考えられたのが、トランプの長女イヴァンカとその夫でユダヤ教徒のジャレッド・クシュナーが、トランプ、バノン、ユダヤ人社会の間の調整役をしているだろうことである。イヴァンカは父と同じペンシルバニア大学を首席で卒業した才色兼備の実業家である。長老派のキリスト教徒として育てられたが、ユダヤ人のジャレッドと結婚するに先立って、異宗婚を避けるためにユダヤ教に改宗し、ヤエルというユダヤ名を選んだ。シナゴーグを訪れた際は、ユダヤ教への篤い信仰とイスラエルへの熱烈な支持を発言しているという。
 夫の父チャールズ・クシュナーは、ニューヨークのユダヤ人社会の元締の正統派ユダヤ教徒の実力者。ジャレッドは父から継いだ不動産開発大手クシュナー社の代表で、ドナルド・トランプとは父の代から同業者として知り合いだった。地元週刊紙ニューヨーク・オブザーバーを買収した所有者であることでも知られる。
 ジャレッドは、トランプの大統領選キャンペーンで政策アドヴァイザーを務めた。ヘンリー・キッシンジャー元国務長官の人脈につながるとされる。キッシンジャーは、ロスチャイルド家とロックフェラー家の両方と深い関係を持つ。ジャレッドはトランプとイスラエルの要人とのつなぎ役も果たし、2016年9月トランプがイスラエルのネタニヤフ首相とトランプタワーで会談した際には傍らにいた。現職の首相が大統領選挙中の候補者と、その本拠地に出向いて会うのだから、イスラエル側がトランプを重視していたことがわかる。
 「G0(ゼロ)」論で知られる政治学者イアン・ブレマーは、ジャレッドを「新政権のキーパーソン」と見ている。マイク・ペンス(現副大統領)を責任者とする政権移行チームでも、ジャレッドは閣僚人事に参画し、発言力を振るった。
 新政権はトランプの一族や忠臣のグループと、共和党主流派の力関係のせめぎ合いの場となった。また、共和党・民主党の両党を背後から管理する所有者集団は、大衆が選んだトランプを自分たちの意思に従って動く政治家とし、その意思に沿った政策をさせようとするだろう。しょせんトランプは、ロスチャイルド家やロックフェラー家等に比べれば、成り上がりの中小クラスの富豪にすぎない。ただし、大統領はただの操り人形ではなく、自分の意思を持ち、またそれを実現する合法的な権限を持っているから、トランプのような独裁者型の人物の場合、自分の意思を強く打ち出し、所有者集団と衝突が起こるのではないかと思われた。その時の重要点の一つが、彼及び彼の側近の欧米のユダヤ系巨大国際金融資本家との関係となるだろうと予想された。
 発足後のトランプ政権は、内政・外交とも不調が続き、混迷の相を呈している。就任半年後の時点でワシントン・ポスト紙とABCテレビが共同実施した世論調査の結果によると、トランプ大統領の支持率は36%だった。就任後半年の支持率としては、第2次大戦後の歴代大統領の中で「最低」とABCは断じた。不支持率は58%だった。
 混迷の原因の一つは、独裁的な大統領のもと、政権中枢が安定していないことである。政権発足以来、フリン前大統領補佐官(国家安全保障問題担当)、スパイサー前大統領報道官など辞任・解任が相次ぎ、閣僚中のナンバーワンであるプリーバス大統領首席補佐官も更迭された。そして、トランプ政権の焦点となっていたバノン首席戦略官・上級顧問も事実上の解任となった。
 政権中枢が不安定なだけではない。米政府で高官とされる役職は570あるといわれるが、トランプ政権では発足後10カ月以上もたって、まだ50程度しか決まっていないと伝えられた。10分の1程度である。個々の政務の実務責任者が不在のため、外交、雇用、保険等の政策が進まない状態である。
 こうした中で一層存在感を増しているのが、ジャレッド・クシュナーである。長女イバンカ補佐官(無給)の夫として大統領の絶大な信頼を得ている。まだ30歳台半ばであり、政治経験もないかった若者が、政権の人事や方針の決定に関わっているのは、異常である。トランプ王朝の王子のような存在だが、保守的なユダヤ教徒であり、背後にイスラエルと結託して米国政界に強大な影響力を持つユダヤ・ロビーが存在し、クシュナーはそのパイプとなっていると考えられる。クシュナー派には、ともに金融大手ゴールドマン・サックス出身のコーン国家経済会議(NEC)委員長とパウエル国家安全保障担当副補佐官が連なるとされる。

●今後のアメリカの政権

 私は、平成21年(2009)5月に掲示した拙稿「現代世界の支配構造とアメリカの衰退」に、次のように書いた。
 「オバマ大統領は、『Change(変革)』をスローガンに掲げ、共和党に替わって、民主党による新たな政権を樹立した。しかし、(略)アメリカの二大政党の後には、巨大国際金融資本が存在する。私は、オバマもまたアメリカの歴代大統領と同様、アメリカ及び西欧の所有者集団の意思に妥協・融和せざるをえないだろうと予想する。
 オバマにせよ、今後のアメリカの大統領にせよ、アメリカを『Change(変革)』しようとするならば、その挑戦はアメリカの政治構造の変革へと進まざるを得ない。そして、もし本気で挑戦しようとすれば、ケネディ大統領暗殺事件から9・11に至る多くの事件の真相を究明することなくして、変革を成し遂げることはできないだろう。とりわけ9・11の真相究明が重要である」と。
 オバマ政権は、私の予想通り、本気でアメリカの政治構造の深層まで変革する取り組みをしなかった。そのため、現実的な政策面でも、十分な変革を成し遂げることが出来なかったのである。
 トランプの背後にも、共和党と民主党の後で、これら両政党を実質的にコントロールしている巨大国際金融資本が存在する。トランプもまた彼らアメリカ及び西欧の所有者集団の意思に妥協・融和せざるをえなくなる可能性が高い。そして、トランプにせよ、また今後の大統領にせよ、アメリカの政治構造の深層からの変革に挑むことなくして。アメリカを再び偉大な国として復活させることはできないだろう。それは、すなわち、アメリカは長期的な衰退の道を歩み続けることを意味する。

 次回に続く。

ユダヤ123~衰退するアメリカ

2017-11-08 11:05:06 | ユダヤ的価値観
●オバマからトランプへ~衰退するアメリカ(続き)

 2016年の選挙戦において、トランプは、米国人口の約35%を占める高卒以下の低学歴の白人労働者に目をつけた。オバマ政権下で、彼らは、不法移民を含む有色人種の移民に仕事を奪われたり、移民の存在によって給与が下がったりしている。そのことに対する不満が鬱積しているのを読み取った。
 もともと本来共和党は富裕層に支持者が多く、主に大企業・軍需産業・キリスト教右派・中南部の保守的な白人層などを支持層とする。民主党は労働者や貧困層に支持者が多く、主に東海岸・西海岸および五大湖周辺の大都市の市民、ヒスパニック、アフリカ系・アジア系など人種的マイノリティに支持者が多い。ユダヤ系には民主党支持者が多い。民主党にはニューヨークのユダヤ系の金融資本家から多額の資金を得ているという別の一面がある。またロックフェラー家が民主党最大のスポンサーとなっている。
 本来貧困層に支持を訴えるのは民主党の定石だが、トランプは共和党でありながら貧困層に訴えた。白人と有色人種の人種的な対立を刺激し、白人の支持を獲得しようとしたものである。
トランプは、低学歴の白人労働者の鬱憤を代弁し、また煽り立てた。君たちの生活が苦しいのは、君たちが悪いのではない、悪いのはあいつらだ、と敵を作って大衆に示す。それによって大衆の怒り、不満、憎悪等の感情を描き立て、その感情の波に乗って権力を採るという手法を取った。一種のポピュリズム(大衆迎合主義)である。そうすることによって、トランプは白人と黒人、ヒスパニック等の有色人種、キリスト教徒とイスラーム教徒等の間を分断し、自分の支持者を獲得していった。
 ヒラリー・クリントンは、民主党の候補者だが、大統領夫人、上院議員、国務長官等を歴任し、米国の支配層を象徴する人物と大衆から見られた。民主党の指名選挙では、貧困層に社会民主主義的な政策を説いたサンダースが善戦したが、サンダース支持者にすればヒラリー・クリントンは批判の対象たるエシュタブリッシュメントの一員だった。共和党支持者の多くは、ヒラリーを支持しない。民主党支持者にも、ヒラリーは受け入れられないという者が多数いた。アメリカのマスメディアの大半はユダヤ系または親ユダヤである。マスメディア関係者には民主党支持者が多く、メディアの大半が民主党寄りである。選挙期間中、アメリカのマスメディアは、ヒラリーの優勢を伝え、投票日の当日にもヒラリーが70%以上の確立で勝利すると予想した。
 米国大統領選挙は直接選挙ではなく、勝者は州ごとの選挙人団をどれだけ確保できるかで決まる。支持率で下回っても、選挙人団を多く獲得すれば勝利。逆に支持率で上回っても、獲得する選挙人団が少なければ、破れる。勝利に必要なのは、選挙人数539人の過半数となる270人の獲得である。総得票数を伸ばすよりも、各州の選挙人を獲得する戦術が重要になる。特にスイングステーツと呼ばれ、選挙の度に、共和党が勝ったり、民主党が勝ったりする州で勝つことが、勝敗を大きく左右する。
 トランプ陣営は、それまで大統領選挙の投票にあまり行かなかった白人500万人の票に狙いを定めて、選挙運動を行っていた。その多くは、新自由主義とグローバリズムによって、職を失ったり、収入が激減したりして、既成の体制に最も強い不満を持っている人たちである。もともと投票に行かなかった集団ゆえ、従来の選挙予測の方法では行動が読みにくい。マスメディアは、彼らの動向をとらえることが出来ていなかった。世論調査では出てこない「隠れトランプ支持者」が伏在していた。激戦州では、彼らの票が勝敗に大きく影響した。選挙の結果は、トランプが獲得した選挙人数でヒラリーを上回って勝利した。
 4年に1回の米国大統領選挙は、連邦議会の上下両院の選挙を伴う。大統領と連邦議会議員が同時に全部選び直される。今回の選挙では大統領に共和党のトランプが選ばれるとともに、連邦議会では上下両院とも共和党が多数を占めた。共和党が権力を掌握し、政策を強力に進めることが可能な状況となった。トランプはオバマ政権時代に実施された多くの政策を否定し、米国の政府は正反対の方向に政策を転換しつつある。
 しかし、トランプは共和党の異端者で、主流ではなく非主流ですらない特異な存在だった。もとは民主党の支持者でクリントン夫妻を支援していた。共和党は選挙期間中、この異端者をめぐってトランプ支持と不支持に分かれ、有力者多数がヒラリーを支持すると公言したことにより、分裂のモーメントをはらんでいる。こうした共和党のとりまとめは、トランプ政権の課題の一つである。
 また、トランプVSヒラリーの選挙戦は、互いに相手を激しく罵り合い、米国は大きく二つに分かれた。米国の大統領選挙ではいつものことだが、今回は史上最低の選挙戦といわれる中で、かつてなく対立が激しく、熱くなった。トランプは、意図的に白人と有色人種、キリスト教徒とイスラーム教徒等を分断した。この分断は、米国社会全体の分断である。人種差別や性差別等をなくし、社会の統合を図ってきた米国の長年の取り組みを、逆方向に戻すような分断である。だが、トランプの支持者は、トランプをただの破壊者ではなく、変革者だと仰ぐ。トランプは言う。「Make America great again(アメリカを再び偉大にしよう)」と。しかし、米国社会を分断し、主に白人労働者の不満をエネルギーとすることで、権力を握った大統領が、米国を一つの国家に統合していくのは、容易なことではないだろう。

 次回に続く。

憲法改正は安倍首相の最重要使命~櫻井よしこ氏

2017-11-07 09:27:40 | 憲法
 衆議院総選挙後、櫻井よしこ氏は、10月24日付の産経新聞に見解を掲載した。25日に行われた「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の集会でも、その記事と同じ主旨の講話がされた。
 産経の記事の大要を示す。
 衆院選の結果について、櫻井氏は次のように言う。「自民党の勝利は野党分裂ゆえだとする分析がある。だが、迫り来る北朝鮮の危機に対処できるのは、世界の現実を厳しく見つめてきた安倍首相だという有権者の判断がより大きな要因だろう。国民は眼前にある難題、国難の深刻さを理解し、日本の愁眉を開くことを安倍政権に期待したのである」。
 安倍首相の課題については、次のように言う。「北朝鮮危機に対処し、憲法改正を含む重要課題に丁寧に、しかしあくまでも、積極果敢に取り組むことだ。足元の北朝鮮情勢の見通しは非常に厳しい。歴史をたどれば、白村江の戦い、元寇、日清、日露の両戦争など、日本の戦争はおよそ全て朝鮮半島情勢が原因だった。その時々の戦いで被った犠牲の深刻さを考えれば、今、目の前にある北朝鮮危機への対処は万全にしなければならない」。
 対北朝鮮を主とした国防については、次のように言う。「まず北朝鮮暴発への備えを強化する。専守防衛を見直し、敵基地攻撃能力を確立し、自衛隊の人員および装備を拡充して防衛予算を増額することが北朝鮮のみならず、中国をも含めた国々を踏みとどまらせる力となる」
 櫻井氏は、「日本にとってより深刻な脅威は北朝鮮の背後に控える中国である」と的確に指摘する。そして、10月18日から行われた第19回中国共産党大会で習近平総書記(国家主席)が行った演説の重要性を強調する。
 習氏の演説は、「軍事強国と専制政治に走る姿を明らかにした。3時間余の演説で習氏は世界一流の軍事大国化を掲げ、中国共産党の絶対的支配に党員も国民も従うことを求めた。宗教にさえも『中国化』と『社会主義社会』への適応を要求した。チベット人がチベット仏教の学びを禁止され、毛沢東語録の学習を強いられている現状を、さらに広げるというのか。
 習氏は『偉大なる中華民族の復興』を謳い、『中華民族は世界の諸民族のなかにそびえ立つだろう』とし、『人類運命共同体』の構築を提唱した。これからの中国を読み解く上での重要な言葉となるであろう人類運命共同体構想は『世界制覇宣言』と同義語かと思う。人類は皆、中国の下で中国主導の運命共同体の一員として生きることを要求されるのか」と問いかけている。
 このように述べた後に、櫻井氏再び衆院選の結果と安倍首相の課題について述べる。
 「今回の選挙結果は、民主主義や自由、法治など普遍的価値観に基づく国際社会の構築に日本がもっと力を発揮せよという、安倍外交への信任である。首相は、中国とは異なる日本の価値観を、日米を軸に豪印を加えて太平洋・インド地域に打ち立てる道を気概をもって進むのがよい」「改憲に前向きの勢力が初めて4分の3を超えた。その4分の3を形成する多くの人々は危機に気づき始めた人々だろう。首相が『愚直に』語りかけ続け、憲法改正を成し遂げるときが巡ってきたのだ。安倍首相の背中を今や、時代と国民が押している。世界に取り残されないためにも、時代と国民への責任を果たすのが、首相の最重要の使命である」と。
http://www.sankei.com/column/news/171024/clm1710240007-n1.html

 大局観、状況論、具体的課題とも、的確で説得力のある見解と思う。

 櫻井氏が共同代表を務める「美しい日本の憲法をつくる国民の会」は、10月25日都内で行われた集会で、次のような決議文を採択した。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
■決議文

 今こそ、各党は憲法改正原案の国会提出を!
 今般実施された衆議院総選挙では、昨年七月の参議院選挙に引き続き、再び、戦後史を画する重大な政治選択がなされた。すなわち憲法改正に前向きな与野党が衆議院の議席の八割を占めるに至った。
 今回は、複数の政党が憲法改正を重点公約に掲げて戦う、戦後初めての総選挙となった。しかもその結果、憲法改正に前向きな勢力が八割に及んだのである。ここに、憲法見直しを求める広範な民意が示されたと見るべきであろう。
 現在、わが国を取り巻く内外の情勢は大きく変貌している。北朝鮮による重なる弾道ミサイルの発射は、核開発と相まって、わが国のみならず世界の平和にとって深刻な脅威となりつつある。
 わが国の平和と安全にとって不可欠な自衛隊を、憲法上、いつまでも曖昧な存在にしておくわけにはいかない。憲法施行から七十年、自衛隊が創設されて以来六十三年が経過した今こそ、憲法九条を改正し、自衛隊の存在を明記することが、何よりも求められている。
 首都直下地震や南海トラフ巨大地震の発生が予測されている中で、現行憲法には、大規模自然災害等の事態に対処するための緊急事態条項が存在していない。世界各国で常識となっている緊急事態条項が現行憲法にないのは、憲法の根本的欠陥以外の何物でもない。
 この度の総選挙において示された民意を踏まえ、今度こそ、各党は、国民の命と暮らしを守る国家としての責任を果たすため、憲法改正原案を国会に提出し、党派を超えた合意形成に全力を尽くすべきである。この旨、各党及び国会議員に強く要望する。
 右、決議する。
 
平成29年10月25日
美しい日本の憲法をつくる国民の会
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 採択された決議文は、集会に参加した自民党及び日本維新の会の代表者に手交された。憲法改正を求める1千万人署名運動は、署名数989万人を超えた。多数の国民の要望に応えて、国会議員が国会で真摯な取り組みをすることが期待される。

ユダヤ122~オバマからトランプへ

2017-11-05 08:47:19 | ユダヤ的価値観
●オバマからトランプへ~衰退するアメリカ

 2016年(平成28年)11月の大統領選挙は、共和党のドナルド・トランプが勝利した。
 米国は非常に多様性の高い社会である。様々な人種・民族・宗教等が混在している。その状態はサラダ・ボウルにたとえられる。根底には、建国以来の白人/黒人の二元構造がある。1950年代までは人種差別が横行していた。1964年には公民権法が成立し、権利においては平等が実現した。しかし、黒人の多数は貧困層を脱することができない。大都市では、居住地と学校において、黒人の隔離が続いている。そうした状態の改善を求めて、アファーマティブ・アクション(積極的是正措置)やポリティカル・コレクトネス(人種・性差等の中立表現)が唱えられ、実施されてきた。だが、20世紀末から、ヒスパニックやアジア系等の移民が多数流入し、人口構成が大きく変化してきた。白人が多数を占める社会から、有色人種が多数を占める社会へと変貌しつつある。
 史上初の黒人大統領によるオバマ政権は、こうした多様で対立・摩擦の多い社会を、一つのUSAとすべく統合を試みた。そのスローガンが「Change(変革)」だった。だが、オバマ政権は変革を成し遂げられなかった。2008年(平成20年)9月のリーマン・ショック後、米国は、オバマ政権下で財政赤字が膨らみ続けた。際限のない国債の発行などによる財政悪化に歯止めをかけるため、法律で政府債務に上限を設けているが、2011年(平成23年)以降、政府債務が上限を超え、繰り返しデフォルト(国家債務不履行)寸前に陥る危機に直面してきている。
 この間、グローバリゼイションの進行によって、米国の製造業は海外の安い労働力と安い製品に押されてきた。格差の是正は進まず、逆にますます拡大している。所得が上位1%の富裕層は、2015年の平均年収が約1億1000万円、残り99%の平均年収は345万円だった。その差は約31倍となっている。また、上位0.1%の最富裕層が所有する財産の総額は、下から90%が所有する財産の総額に等しいという。約900倍の差である。
 貧困層には、黒人やヒスパニックが多いが、彼らの多くは貧困を抜け出せないままである。また、極端な二極化の進行によって、白人を主としていた中間層が崩壊し、白人の多くが貧困層に転落した。
 オバマ政権は、共和党のブッシュ子政権が9・11後に始めたアフガニスタン戦争、イラク戦争を引き継ぎ、その収拾を図った。だが、戦争終結は容易でなく、そのうえ、2011年(平成23年)の「アラブの春」がきっかけとなった中東の地殻変動が生み出したシリアの内戦、いわゆる「イスラーム国(ISIL)」の台頭等への対応が生じた。アメリカは2001年以降、2016年までに15年間、海外での戦争を続けていた。最も多い時期には20万人の米国兵士が海外に派遣された。そして、この間に約7000人が戦死した。それだけの犠牲を払っても、中東は安定せず、むしろ情勢は悪化・拡大してきた。また、その中でイスラーム過激派によるテロリズムが拡散・激化してきた。ヨーロッパ各国やアジア諸国等でテロ事件が続発し、アメリカでもテロ事件による被害が続いている。
 2016年(平成28年)11月の大統領選挙では、こうしたオバマ政権の8年間が問われた。民主党では、オバマ政権の政策を評価し継承する前国務長官ヒラリー・クリントンが候補者の指名を受けた。共和党では、全く政治経験のない実業家ドナルド・トランプが候補者に選ばれた。両者の戦いは、嫌われ者同士の戦いとなり、史上最低の大統領選といわれた。
激戦の末、トランプが勝利を獲得した。多くのマスメディアや各国の首脳はトランプの勝利を予想できておらず、トランプショックが世界を走った。
 2016年6月に英国で住民投票により英国のEU離脱が決定したことに続き、大方には「まさか」と思われる結果だった。だが、欧米では、グローバリズムと移民受け入れへの大衆の反発と、国家・国民を尊重するナショナリズムの復興が年々、顕著になっている。EUでは、フランス、オランダ、ドイツ、ノルウェー等で、マスメディアが「極右」と呼ぶリベラル・ナショナリズムの政党が躍進している。移民の受け入れやそれによる失業、治安の悪化、文化的摩擦への危機感や、国家・国民を融解するEUや単一通貨ユーロへの疑問が強まっている。大衆の意識の変化が、グローバリズムに異議を唱える勢力を伸長させ、歴史の流れを変えつつある。トランプの勝利は、こうした動きと同じ潮流の現れである。
 トランプの根底にあるのは、米国の伝統的なアイソレーショニズム(不干渉主義)である。近年共和党で影響力を増しているティーパーティのリバータリアンでかつ自国本位の考え方を極端に推し進めた地点に、トランプは立っている。
 トランプは、オバマ政権の政策とそれを継承しようとするヒラリー・クリントンの政策を激しく非難した。過激な表現を多発することで、民衆の不満を自分への支持に向けた。「アメリカ・ファースト」を訴え、グローバリズムから自国第一主義への転換を唱えた。経済政策は、TPPから脱退し、海外投資拡大の路線から、国内経済重視の路線に転換し、外国に奪われた雇用を取り戻すことを訴えた。メキシコ人の不法移民問題については「彼らは麻薬や犯罪を持ち込む。強姦犯だ」「メキシコとの国境に壁を作り、費用はメキシコに持たせる」と言い、イスラーム教徒については「彼らはわれわれを憎んでいる。米国を憎んでいる人たちがこの国に来るのを認めるわけにはいかない」として入国禁止を提案するなど、排外主義的・人種差別主義的な発言を繰り返した。

 次回に続く。