ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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米国債の発行停止で大混乱に?

2011-07-18 08:43:51 | 時事
 いよいよアメリカ政府が新規国債を発行できなくなる怖れが強まってきた。アメリカがデフォルト(債務不履行)に陥れば、世界経済はリーマン・ショック以上の大混乱になるだろう。デッドラインは、7月22日。ここ数日が山場である。
 まず関連する報道記事を掲載し、その後、補足を加える。

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●産経新聞 平成23年7月15日

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110715/fnc11071507240002-n1.htm
米国債に迫る“Xデー” 新規発行停止、デフォルトの恐れ
2011.7.15 07:21

 【ワシントン=柿内公輔】米国が国債を発行できなくなる“Xデー”が目前に迫ってきた。連邦債務の上限引き上げをめぐるオバマ政権と議会の交渉が難航。現在は州政府への支援停止で何とかやり繰りしているが、その特別措置が8月2日で期限が切れる。上限を超えて国債を発行することはできないため、予算執行の停止で一部政府機関が閉鎖(シャットダウン)されるだけでなく、国債の利払いや償還資金を調達できず、債務不履行(デフォルト)に陥る最悪の事態も否定できない。世界経済の大混乱は必至だが、13日の調整も不調に終わり、緊迫度を増している。

・野党は強硬姿勢
 「財政改革の進展がない限り法案を通過させない」
 下院で主導権を握る野党共和党のベイナー下院議長は、なお強硬姿勢を崩していない。
 米国は財政規律を守るため、法律で連邦債務の上限を設けている。しかし、金融危機以降の度重なる財政出動で債務が膨らみ、何度も上限も引き上げてきた。現在の上限は14兆2940億ドル(約1100兆円)だが、実質的にすでに超過し、特別措置でしのいでいるのが実情だ。
 格付け会社が相次いで、米国債の格下げ検討を発表し市場の信認が揺らぐなか、財政改革が急務となっている。オバマ政権と与党民主党は、今後10年間で4兆ドル規模の財政赤字削減に加え、富裕層向け減税の打ち切りを柱とする増税案を議会に提示。これに対し、共和党は「政府支出の削減が先決」と主張して対立が続いている。
 与野党とも「デフォルトは回避しなければならない」との点では一致しており、オバマ大統領が議会指導部と連日協議。政府・与党側は中間層向け減税の延長方針を決め、社会保障給付の削減にも前向きな姿勢を示しているもようだが、共和党側は増税拒否の姿勢を崩していない。

・大統領も譲らず
 一方で、野党側のベイナー氏は12日に「だれもが代替策が必要と考えている」と述べ、当面の政府支出に見合う暫定的な上限引き上げを提案。しかし、大統領は「受け入れられない」と、あくまで抜本的な引き上げを主張して譲らない。
 「引き上げで合意すれば、ガイトナー財務長官が辞任する」と報道されるなど、混乱状態に陥っており、合意への道筋は見えないまま。大統領選を来年に控え、支持率低下につながる安易な妥協はできないという事情もあり、チキンレースの様相を呈している。
 上限引き上げ法案は、審議前の公表を義務づける議会規則を考慮すると、7月22日までの合意が事実上のデッドラインになるとみられている。

・格下げ方向発表
 米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは13日、上限引き上げ交渉が難航していることを受け、米国債の格付けを引き下げ方向で見直すと発表した。ゴールドスタイン米財務次官は「議会に迅速に行動するよう注意喚起したものだ」とコメントし、危機感を募らせている。
 市場では、最悪のシナリオもささやかれ始めた。国債が発行できないと、予算執行が停滞するだけでなく、国債の利払いや償還もできなくなる恐れがある。デフォルトが起きれば、市場の信認は失墜し、国債が暴落し長期金利は急騰。ドルの暴落も避けられない。
 金融市場だけでなく実体経済への打撃も壊滅的で、米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長は「(米経済は)自滅する」と警告を発している。
 米国債を大量に保有する日本など各国の財政や経済も直撃。「リーマン・ショックを超える世界恐慌の引き金になる」(市場関係者)と懸念する声も聞かれる。
 予算協議の難航で政府機関の閉鎖危機に直面した今年4月は、期限の1時間前に与野党が合意した。市場は、交渉の行方を固唾をのんで見守っている。
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 さて、上記記事は、米国債の発行額について、「現在の上限は14兆2940億ドル(約1100兆円)だが、実質的にすでに超過し、特別措置でしのいでいるのが実情だ」と書いている。
 アメリカ政府の連邦債務には、米議会が定める上限がある。リーマン・ショック以後に定められた赤字国債の発行枠は、14兆2940億ドル。これが5月の段階で限度額に達してしまった。アメリカの財政は現在、国民が支払ってきた年金資金を流用して運営されている。「8月2日に政府の金庫は空になる」とガイトナー財務長官は公言している。
 債務枠の上限を上げるには、議会の承認が必要である。だが、野党共和党が反対していている。
 記事は、「オバマ政権と与党民主党は、今後10年間で4兆ドル規模の財政赤字削減に加え、富裕層向け減税の打ち切りを柱とする増税案を議会に提示。これに対し、共和党は『政府支出の削減が先決』と主張して対立が続いている」と書いている。
 共和党は「国有財産の売却」と「政府予算の大幅削減」を主張し、オバマ大統領の懇願に対して、一貫して冷やかな態度を取っている。
 記事は、「上限引き上げ法案は、審議前の公表を義務づける議会規則を考慮すると、7月22日までの合意が事実上のデッドラインになるとみられている」という。
 赤字国債増発に関する7つの議案を作って上院下院で審議するには、10日間かかる。政府の金庫が空になる8月2日までに、発行額の上限を引き上げるには、7月22日までに民主・共和両党が何らかの合意に達する必要がある。7月18日から22日の週が、山場である。これを過ぎると、上限の引き上げが間に合わず、米国債がデフォルトに陥る可能性が高まる。
 記事は、「金融市場だけでなく実体経済への打撃も壊滅的で、米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長は『(米経済は)自滅する』と警告を発している」と書いている。
 FRBのメンバーでセントルイス地区連銀のブラード総裁は、次のように発言している。
 「アメリカの財政問題が適切に対処されなければ、世界のマクロ経済に衝撃を与える恐れがある。米国がデフォルトする恐れがあるというのは非常に危険だ。リスクは東日本大震災の影響や原油価格上昇、欧州債務危機よりも深刻だ」と。
 記事は、「米国債を大量に保有する日本など各国の財政や経済も直撃。『リーマン・ショックを超える世界恐慌の引き金になる』(市場関係者)と懸念する声も聞かれる」と書いている。
 デフォルトは、債務不履行。簡単に言えば、借金の踏み倒しである。踏み倒された方は、たまったものではない。わが国は、アメリカの圧力で、大量の米国債を買わされている。安全保障を依存している関係で、米国債は売るに売れない。これを踏み倒されたら、その影響の深刻さは、途方もないものとなる。東日本大震災と原発電力危機で深手を負っているわが国にとって、アメリカのデフォルトは、これら以上のメガトン級の大打撃となるだろう。
 アメリカ政府が抱える財政赤字は、1京6000兆円にも膨らんでいる。1京とは、1万兆円である。全世界の総生産高の2倍以上になる金額。日本の財政赤字など、比較にもならない規模である。アメリカが財政破綻すると、信用が失墜し、米国債は暴落する。その事態を避けるため、最終的には、アメリカ議会は国債発行額の上限引き上げに同意するだろうという見方がある。
 だが、アメリカが他の国と違うのは、ドルは基軸通貨だということである。そこで、デフォルトをきっかけに、アメリカが新ドルを発行し、債務を帳消しにするだけでなく、ドルを保有する米国民や外国人から富を吸い上げるのではないかという観測もある。
 中国はどう出るか。デフォルトの前に、世界で最も多く保有する米国債を一気に売りに出し、アメリカ経済を潰して、世界の覇権を握ろうと勝負をかけるか。世界金融戦争が勃発する可能性もある。
 ここ数日から2週間ほどの期間は、世界の経済、そして人類の将来にとって、非常に重要な期間になるだろう。