ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

昭和天皇がA級合祀に不快感?

2006-07-21 11:20:12 | 靖国問題
 昨20日の朝から、昭和天皇のご発言のメモとされるものが報道されている。元は日経の記事だ。

――――――――――――――――――――――――――――――
●日本経済新聞(平成18年7月20日号朝刊)

昭和天皇、A級戦犯靖国合祀に不快感・元宮内庁長官が発言メモ

 昭和天皇が1988年、靖国神社のA級戦犯合祀に強い不快感を示し、「だから私はあれ以来参拝していない。それが私の心だ」と、当時の宮内庁長官、富田朝彦氏(故人)に語っていたことが19日、日経新聞が入手した富田氏のメモで分かった。昭和天皇は1978年のA級戦犯合祀以降、参拝しなかったが、理由は明らかにしていなかった。昭和天皇の闘病生活などに関する記述もあり、史料としての価値も高い。
 靖国神社に参拝しない理由を昭和天皇が明確に語り、その発言を書き留めた文書が見つかったのは初めて。「昭和天皇が参拝しなくなったのはA級戦犯合祀が原因ではないか」との見方が裏付けられた。
 富田氏は昭和天皇と交わされた会話を日記や手帳に克明に書き残していた。日記は同庁次長時代も含む75-86年まで各一冊、手帳は86-97年の二十数冊が残されていた。靖国神社についての発言メモは88年4月28日付で、手帳に張り付けてあった。昭和天皇はまず、「私は、或る時に、A級(戦犯)が合祀され、その上、松岡、白取(原文まま)までもが。筑波は慎重に対処してくれたと聞いたが」と語ったと記されている。「松岡」、「白取」はA級戦犯の中で合祀されている松岡洋右元外相、白鳥敏夫元駐伊大使。「筑波」は66年に厚生省からA級戦犯の祭神名票を受け取りながら、合祀しなかった筑波藤麿・靖国神社宮司(故人)を指すとみられる。
 さらに「松平の子の今の宮司がどう考えたのか、易々と。松平は平和に強い考えがあったと思うのに、親の心子知らずと思っている。だから、私はあれ以来参拝をしていない。それが私の心だ」と述べている。「松平」は終戦直後に最後の宮内大臣を務めた松平慶民氏(故人)と、その長男で78年にA級戦犯合祀に踏み切った当時の松平永芳・靖国神社宮司(同)を指すとみられる。
 天皇が参拝しなくなった理由についてはこれまで、「A級戦犯合祀が原因」「三木首相の参拝が『公人か私人か』を巡り政治問題化したため自粛した」との二つの見方があった。現在の天皇陛下も89年の即位以降、一度も参拝していない。(略)
――――――――――――――――――――――――――――――

 日経が靖国神社がらみでスクープとは、いわくがありそうである。
 この記事は、富田氏のメモは昭和天皇のご発言を伝えるものという前提で書いている。また、メモの内容は、昭和天皇がいわゆるA級戦犯を靖国神社に合祀したことに「強い不快感」を示したものとし、昭和天皇が靖国神社にご親拝されなくなったことにつき、「A級戦犯合祀が原因ではないか」との見方が「裏付けられた」と決め付けている。

 他のメディアの多くは、日経の論調を受けた報じ方をしている。既にそれに疑義を唱える有識者やネット利用者がいろいろな意見を書いているが、このメモをどう扱い、どう理解するかは、慎重に検討すべき事柄である。
 メディアは、事実を報道するだけでなく、事実を構成し、一定の解釈を流す能力を持っている。それによって世論を操作し、政界を動かし、政治を方向付けることが可能であるのが、新聞でありテレビである。

 今回のメモの公表は、いかにもこの時期にというタイミングである。任期終了間近の小泉首相が最後に8月15日に靖国神社に参拝するかどうかが関心を高めている。また、次の自民党総裁は靖国参拝をする人物となるかどうかが注目を集めている。こういう時期に、わが国はある。
 国内では、自民党の内部には、いわゆるA級戦犯分祀論、国立追悼施設の建設論、千鳥ケ淵戦没者墓苑の拡充論などの意見がある。宗教界では、東郷神社宮司の分祀受け入れ発言が論議を呼んでいる。財界では、首相の靖国参拝に反対する意見と、賛成する意見とが分かれている。
 国外では、中国が首相の靖国参拝を強く批判し、8・15参拝や次期首相の選出をけん制している。中国共産党政権に従順な政治家や財界人が優勢になれば、中国は外交上、多くの利益を得る。それは、今後起こりうる台湾侵攻、尖閣諸島占領に有利な情勢を作り出す。

 こうした状況において、首相の靖国参拝に反対する勢力は、今回のメモを利用して主導権を握ろうとするだろう。まずメモをよく検証し、天皇のご発言として政治利用されることを許さないことが必要だと思う。
 私見は次回書きたい。

脱少子化フォーラムの報告4

2006-07-20 10:13:47 | 少子化
 パネル・ディスカッションの続き。今回で終わります。

二橋さん:少子化については、経済的負担や制度のようなインフラの整備よりも、まず精神面が大事だと思う。家族の大切さ、先祖や生命に目を向けていくこと。それを青少年に教えていきたい。
 お産は大変なものという既成観念ができてしまったが、本来は、他の動物と同じように、楽なのが自然の姿だ。胎教も大切だと思うが、医学ではどうか。

佐々木教授:産婦人科学会では大きく取り上げられてはいない。個人的には胎教は非常に大切だと思っているが、学界では非常にマイナーな部分を占めるに過ぎない。

石村さん:家庭出産では主人の役割が重要。「お父さんの都合のよいときに生まれてきてね」とお腹の赤ちゃんに語りかけていると、都合のよいときに生まれてくる。100%だ。
 お産では夫婦仲良くということが一番大事。それが胎教でも大切。子どもに心を向けていると、お産はそれを裏切らない。
 次に少子化について、それぞれの立場でどのようにするのがよいと思うか。佐々木先生には、医療面で大変お世話になっている。医師の協力がないと家庭出産はできない。

佐々木教授:自分は神霊教とは関係がないが、以前は戦後の日本に欠けているものは宗教だと思っていた。いまはそれよりまず先祖に礼を尽くすこと、お墓参りをすることからだと考えている。
 日本人は先祖を大切にしなくなった。先祖がなければ自分はない。まず家庭での食事、そして年2~3回のお墓参りからはじめてはどうか。
 それから、先ほど訴えられることが多いと言ったが、特に若くてある程度、経験を積んだ産婦人科医が訴えられると、たとえ裁判に勝っても、もう産婦人科医をしたくなくなってしまう。
 例えば、脳性小児麻痺は、9割は先天的なものと分かっているが、医療上の過失によるものもある。医師の過失であれば責任を負わねばならないが、仮に過失でない場合、裁判に負けた親はその子を一生面倒見なければならない。
 だから、トラブルが起こったときは、第三者的な専門機関に過失があるのかないのか鑑定してもらう。そして、過失のない場合は、公的に財政的な支援をするようにする。こういう仕組みがあれば、産婦人科医も安心してお産に取り組める。
 助産師さんにも頑張って欲しい。石村さんのような人がどんどん出てきて欲しい。

久保田さん:田舎は住宅が安い。ある県では、車が2台置ける駐車場つきの2階建て、5LDKで、月5万円。東京ではあり得ない。東京は子育てがしにくくなっている。病院も、東京では産むのに100万円かかるところがある。これでは、産みたくなくなっちゃうと思う。

山崎都議:少子化にどう対処するか、国も自治体もいろいろな方策を出している。
 住宅については、都営住宅に若い人が入れるようにしたいのだが、高齢者が出てくれないと若い人が入れない。期間限定で若い人が入れるようにしたい。「若年ファミリー多子住宅」を作り出したい。医療費は、3歳まで無料だったのを6歳までにした。今度は中学生まで無料にしていきたい。

石村さん:山崎先生にも大変お世話になっている。家庭出産には、助産師がいつでも妊婦のもとに駆けつけて対処できるよう駐車許可書が必要だ。何年間も警察に通ったが、許可書をもらえなかった。けんもほろろだった。山崎先生に相談したところ、警視総監に言ってくれて、許可が下りた。家庭出産が出来るのは、先生のような方のおかげだ。

石村さん:最後に一言づつ。

山崎都議:戦後教育によって個人主義、自分中心主義が蔓延している。憲法を改正しなければだめだ。教育基本法も改正しなければだめだ。そこからやらないと、この国は立ち直らない。
 日本人・日本民族が一つになれる憲法を、政党にかかわらず早く提案して、知恵を出し合って改正しなければいけない。教育においては、愛や親子・兄弟仲良くを入れる。教育勅語に盛られていたことだが、大切なことだ。

佐々木教授:先祖を大切にするところからだと思う。

久保田さん:家族の楽しさを子ども達に伝えよう。

二橋さん:憲法を改正し、教育を変え、個人主義・利己主義を改めること。自虐的な歴史観を改めること。そして夫婦一体・親子一体と先祖を敬うことを地道に進めていくこと。それが少子化問題を脱却し、日本をよくしていくことになると思う。

石村さん:今日はどうもありがとうございました。(了)

脱少子化フォーラムの報告3

2006-07-19 09:56:44 | 少子化
 プログラムの最後は、パネルだった。

5.パネルディスカッション「脱・少子化~子を持つ喜びを」

●パネリスト
 東京都議会議員・山崎孝明さん
http://www.yamazaki-takaaki.gr.jp/
 NHK教育テレビ「つくってあそぼ」の「わくわくさん」こと久保田雅人さん
http://www.nhk.or.jp/kids/program/tsukutte.html
 筑波大学臨床教授・佐々木純一さん
 神霊教事務局・二橋英一郎さん
http://www.srk.info/
●コーディネーター
 「助産婦石村」所長・石村あさ子さん
http://www.josanpu-ishimura.com/

 私(ほそかわ)が取ったメモに基づいて、印象に残った発言を紹介します。文責はすべて私にあります。

石村さん:急速な少子高齢化についてどう思うか。

山崎都議:私は母が助産婦だった。石村さんを応援している。少子化がこのまま進めば、人口は減少し、国力は衰え、国がなくなってしまう。議員も医者も一般の人もみなで考えねばならないこと。今日のような催しを日本全国に広めていきたい。

久保田さん:私は番組や仕事でこれまでに百万人の子どもと接している。一人産むと「もういい」というお母さんが多い。「しんどい」と言う。もっと子育てを楽しんでほしい。大家族の楽しさを、子どもに伝えて欲しい。脱少子化はここ数年が勝負だと思う。

佐々木教授:現在の産婦人科の立場で言うと、少子化はむしろありがたい。というのは、分娩を取り扱う産婦人科医の数がすごい勢いで減っている。一人の医師が多くの分娩を扱うので、大変な状況になっている。宿当直が多くてハードワークだし、出産に関する訴訟が増え、産婦人科医をやめる人が多い。

二橋さん:65歳以上が、21%。15歳以下が13%。世界で最も高齢化・少子化が進んでいる。未婚率の上昇、出生率の低下など、このままでは日本は大変なことになる。

石村さん:なぜ少子化が起こっていると思うか。

久保田さん:結婚しない人が多い。私の周りでもそう。遊んでいたい、自由でいたいと言う。それに「結婚したいと思うような男がいない」と言う。男が弱くてナヨナヨしている。
 30年位前から、出生率が2.0を割った。そのころからニューファミリーが出てきた。祖父母と暮らさない人が多い。

石村さん:助産師さんでも結婚していない人が多い。「男の人が頼りない」と言う。

佐々木教授:産む人はたくさん産むが、産まない人は全く産まない。個人的には、核家族化の影響が大きいと思う。子ども(兄弟姉妹)が多いと、自分にも将来、子どもが多くいるのが当然と思う。子どもが少ないと、自分も少なくなる。

久保田さん:沖縄には、子どもが4~5人いる人が多くいる。東京では一人っ子が多い。東京のある大規模団地では、総園児数が30人くらいしかいない。

佐々木教授:妊婦さんがもうつらいから切ってくれという。そのとおりにすれば、半分は帝王切開になる。そこを、なだめすかして頑張らせている。
 分娩は多くの場合は自然に任せていればうまくいく。順調に進まない場合、医師には複数の選択肢があり、どれが正しいかは、そのときはわからない。結果が悪いと非難されてしまうが、医学は答えが一つに決まる数学とは違う。トラブルが起こらないように、神様に祈るしかない。

山崎都議:少子化には、外面的と内面的の原因がある。つまり、社会的経済的なものと思想・価値観によるものとがある。
 住宅について言うと、結婚すると二人だけで暮らしたいと考える人が多い。若くてもローンで住宅が持てる。返済にお金がかかるから、子どもにお金を回せないので、子どもを多く持てない。
 戦後、考え方、価値観が大きく変わった。親と仲良く、親を大切にという考え方が薄れている。自分さえよければいいという風潮になっている。これは戦後の教育の大失敗だ。個人主義が蔓延している。
 家族の団欒(だんらん)がなくなっている。親子・夫婦・祖父母・孫が一緒に食事をするのが、家族団欒だ。自分は何が出来るか、ウチには何ができるかを考えよう。せめて月1回でも家族みなで食事するようにしてほしい。

 次回に続く。

脱少子化フォーラムの報告2

2006-07-18 12:12:47 | 少子化
 前回の続き。
 次に家庭出産をした人の体験発表が行なわれた。

2.家庭出産の体験発表
 
(1)本幡羊子さん
 本幡さんは、3人の子のお母さん。初産はある助産院で出産。2人目は石村さんのところで自宅出産。3人目も石村さんに見てもらっていたが、33週でドクターストップ。病院で出産した。
 タウン誌やメーリングリストで知り合ったお母さんたちと、「自主保育深川あそび隊」をはじめる。毎週木曜日に木場公園に集まって、子どもに外遊びをさせている。子どもたちは、公園で虫や花をみつけて大喜び。親もはまってしまう。自主保育と言っているように、全員が交代で会を主催する。
 こうした体験をもとに本幡さんは、子どもを持つこと、子育てをすることの喜びを語った。
 本幡さんは、お産と育児では、父親の役割が大切、夫婦関係が基本と強調した。私もまったく同感。胎児は胎内にあって、外の音や声がみな聞こえている。夫婦つまり両親の会話をいつも聞いている。夫婦つまり両親が仲良くしていると、胎児はすくすく育つ。これが一番の胎教だ。
 胎児には、母親の精神状態が敏感に影響する。イライラや不安は、胎児への血流を悪くするから、酸素や栄養の供給に影響する。また、母親が生み出すノルアドレナリンなどは、胎児に直接影響する。
 子どもは、生まれた後も、母親の心の状態に左右される。父親は妻を大切にし、母親が明るく落ち着いて子育てできるように努めたい。

(2)わくわくさんこと久保田雅人さん
 高校生以下の子どもを持っている人なら、大抵わくわくさんのことを知っているだろう。NHK教育テレビ「つくってあそぼ」のわくわくさんだ。いつもはさみを使って、楽しい工作を見せてくれる。もう17年もやっているのだそうだ。
 わくわくさんこと久保田さんは、3人のお父さんだ。初産は、奥さんが実家の大阪で出産。わくわくさんは、冬の富士山に登って雪を見ていた。その時、いま子どもが生まれたとわかったそうだ。
 2人目は、東京の病院で出産。久保田さんはなんだか、今日か明日に生まれる気がしていた。夕方、奥さんが腹痛を訴えた。その時はウンチかと思ったが、夜中に破水。実は陣痛だった。あわててタクシーを呼んで病院に駆けつけたそうだ。父親が子どもの生まれる時が分かるというのは、不思議な話しだが、親子には目に見えない、魂の絆があるのだ。
 3人目は、奥さんが自宅出産をしたいと言った。近所で石村さんが家庭出産をしていることを知り、お世話になった。子どものへその緒を切った。いつもテレビではさみを使っているわくわくさんの久保田さん。この時だけは、はさみを持つ手が震えたという。
 久保田さんは、子どもがたくさんいて、家族が大勢で暮らしていることが楽しいと語った。
 破水といえば、私の上の子の時に、妻が深夜に破水した。タクシーを呼ぼうにも、時間が早すぎてすぐ来てくれない。明け方まで待って車を呼び、一緒に新井薬師から世田谷まで行った。その日はそのまま休みをもらって、立会い出産が出来た。
 妻は、最後はひざ立ちになり、ベッドの端にすわった私の肩に手を乗せた体位で、子どもを産んだ。一応、私も肩を貸したわけだ。

3.応援メッセージ

 祝電の紹介。元法務大臣の参議院議員・南野千恵子さんのメッセージ。名前は「のおの」さんと読む。看護婦・助産婦出身の政治家。石村さんのよき理解者、協力者だ。パネルに出ていただく話もあったようだが、公務のためこられないので、代わって電報を寄せてくれたという。

4.ミニコンサート「心に残る日本の歌」

 ここで一息。最初は吉田清子さんのハープ演奏。「さくらさくら」「あの町、この町」など懐かしい歌を、透明な響きで聞かせてくれた。
 次は、bear-Teというお母さんたちのグループによる歌。フルートとマリンバの伴奏で、「七つの子」「あわて床屋」など、紙芝居や小道具を使って楽しく歌ってくれた。場内に、なんとも暖かいものが広がって、楽しいひと時。
 出演した皆さんは、子どもたちに日本の歌を歌いついで行きたいという人たち。私は音楽教育は、重要だと思っている。教育の建て直しにおいて、音楽教育は見逃されがちだが、歌は一生、心に残るもの。童謡や唱歌に歌われた美しい日本語、そこにこめられた日本の心を、親が子に、祖父母が孫に歌って聴かせてほしい。また、親子・祖孫がみなで歌える歌を持つことは、家族・世代の絆を強める。

 次回に続く。

脱少子化フォーラムの報告1

2006-07-17 12:31:42 | 少子化
 16日、東京・深川の江戸資料館小劇場で、「脱・少子化フォーラム2006~子をもつ喜びを」が行なわれた。主催は「助産婦石村」。江東区で助産院を開業している石村あさ子さんとそのスタッフのみなさんだ。
http://www.josanpu-ishimura.com/

 石村さんは、家庭出産を支援している助産婦さんだ。その活躍は、NHKや読売新聞、主婦の友社の雑誌等で何度も取り上げられている。
 今回のフォーラムは、単に家庭出産についてのものではない。家庭出産を支援している人たちが、お産の現場から少子化問題を考えようと呼びかけたものだ。こうした動きは、おそらく日本で初めてだろう。

 石村さんのところで出産した人は、過去9年間で242人。ここではお母さんたちが、平均2.3人子供を産んでいるという。昨年の日本の合計特殊出生率は、1.25だから、これを大きく上回っている。特に東京都では1.0を切っている。その東京で2.3は驚異的だ。家族の絆を大切にするお産は、脱少子化に大きな可能性を秘めているようだ。子どもを持つことに強い喜びを感じることが出来るからなのだろう。

 私は聴衆の一人として、フォーラムを聴かせてもらった。講演・体験発表・パネルとも勉強になった。主催者・登壇者の温かい思いが場内に広がって、楽しい集まりとなった。以下その内容をご紹介したい。個人的なメモによるものだし、録音はとっていない。正確ではない点があることをお断りしておく。

1.基調講演

●講師
 聖路加看護大学看護実践開発研究センター 江藤宏美さん

 江藤さんは、「助産婦石村」のスタッフ。助産師で看護学博士でもある。
 プレゼンテーションを使いながら、少子化の原因、出産の場所、「助産婦石村」のデータとお産の仕方等を説明してくれた。印象に残ったことのみ以下に記す。

 少子化の原因については、女性の高学歴化と仕事の就労による晩婚化・晩産化を主に挙げた。結婚年齢が上がると、初産年齢が上がり、子どもを産む数が少なくなる傾向がある。

 出産の場所については、1950年には、自宅でのお産が95.4%。病院や診療所でのお産は5%以下だった。ところが、施設でのお産が多くなり、1960年には、自宅出産と施設出産の割合がほぼ同じになり、1970年には、完全に逆転した。施設出産が96.1%、残りの多くは助産所で、自宅出産はわずか0.2%となった。
 この間、助産師の数も減り、1955年に5.5万人いたのが、現在は半分以下の2.5万人しかいない。

 続いて「助産婦石村」について。石村さんは、家庭出産の支援をしている。開業後9年間に、訪れた妊婦さんは343人。うち紹介が98人と最も多いが、ホームページで知った人が81人もいる。実際に出産した人は、242人。初産の人はそのうち24人だという。
 家庭出産を支援しているだけあって、お産の立会いは9割以上だという。

 妊娠期間のケア、出産の時の様子など、石村さんがやっていることが、くわしく説明された。
 赤ちゃんが生まれるとすぐ、羊水のついたままお母さんの胸に乗せる。カンガルーケアという。出産後2時間くらいは、赤ちゃんにお母さんのおっぱいを含ませるようにしている。
 母子をつないでいたのは、へその緒。立ち会ったお父さんがへその緒を切る役目。
 私事だが、私は子ども二人とも立会いができた。妻はそれぞれ別の助産所で出産した。上の子の時は、父親の私がへその緒を切らしてもらった。その時の不思議な感動を今も覚えている。助産婦さんが子どもをすぐ妻の胸の上に乗せ、乳を含ませた。子どもはしっかり目を開いて、お母さんを見ていた。2時間くらいそうしていた。だから、石村さんのところと似たやり方だったわけだ。下の子のときは、3000人取り上げたという大ベテランの産婆さんにお世話になった。昔ながらの日本のお産という感じで、やり方はだいぶ違ったが、なんともいえない安心感があった。

 江藤さんの説明に戻るが、石村さんは出産後、1週間の間、家庭訪問を行なう。母子の状態を見て、産後のケアをするのだ。その後は1週間おきに訪問するのだという。
 「助産婦石村」は、複数の医療機関と提携している。日赤医療センターや都立墨東病院などだ。妊婦は定期的に医師の検診を受ける。健康状態を見て、家庭で出産してよいか、複数の医療者が確認する。医師にカルテに書き込んでもらい、サインをもらうのだそうだ。このようにして、医療機関のバックアップを受けながら、安全で安心できるお産を支援しているわけだ。

 江藤さんが講演している間、たくさんの写真が映写された。石村さんのところで出産した家族の写真がいっぱい映った。お父さん、お母さん、赤ちゃん、お兄ちゃん、お姉ちゃんがみなで映っている。たくさんの家族の笑顔に、とても心が和んだ。

 なお、このフォーラムは、神霊教の後援、ハローベビー江東、NPO法人助け合いの会江東しあわせ、㈱主婦の友社、㈱ベビーリース、㈱明治乳業、自主保育深川あそび隊、Coccoina、下町情報誌「深川」、子育て応援情報誌「みんないっしょ」の協賛で行なわれた。

 次回に続く。

続少子化のまとめ

2006-07-15 17:02:34 | 少子化
 「シリーズ続少子化」として連載したものを一本にまとめ、私のサイトに掲載しました。いろいろな方にいただいたご意見、ご質問をもとに、少し修正・加筆しました。
 通して読んでみたい方、他の方に紹介していただける方がありましたら、以下へどうぞ。
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion02g.htm

結びに~続少子化15

2006-07-14 11:04:18 | 少子化
 最後に、全般的なことを述べて連載を終えたい。

 私が書いているのは、大まかな方向や基本的な考えにとどまる。専門家ではないので、分析も方策も粗雑なのは致し方ないが、従来、政府がやってきたことがまともなものとは、到底思えない。それゆえ、拙稿は、国民同胞に問題の認識と発想の転換を呼びかけるところに眼目がある。

 現在のわが国の社会は、もの中心、お金中心、個人中心、権利中心の世の中である。その傾向は1990年代以降、ますます顕著になってきている。アメリカ型の自由主義・個人主義・市場原理主義の弊害は、わが国の伝統・精神の破壊や格差の拡大等だけでなく、少子化の進行にも現れている。
 このしわよせは、どこに行くか。必ず子どもたちに行く。さらにその次の世代には、もっとしわよせが行くに違いない。
 少子化・高齢化・人口減少は三位一体となって進んでいく。いま目標を立て、ビジョンを描き、方策を実行しなければ、日本国及び日本民族は衰退の道をたどることになる。東アジアの厳しい国際関係を考えると、亡国・自滅の道をたどると言った方がよいだろう。

 現代日本のこの大問題は、もの中心、お金中心、個人中心、権利中心の価値観から、いのち、心、家族、共同互助を中心とする価値観へと、文明の原理を転換しないと、改善・解決されないと思う。

 世界全体で見れば、少子化の問題は人口問題のひとつである。地球人類の人口問題は、発展途上国における人口増加と先進国における少子高齢化に特徴がある。
 資本主義が発達し、近代化が進む17世紀半ばから、欧州で人口が増加し始めた。18世紀半ばイギリスで産業革命が始まり、人口増加が加速した。マルサスの『人口論』はこの世紀の末期に書かれている。17世紀半ば以降の時代の人口増加は、人類史の中で特異な現象だったのだが、それでも当時5億だった人口が10億になるのに200年かかった。増加はまだまだ緩やかなものだった。
 世界人口が急激に増えだしたのは、1950年代以降である。発展途上国を中心に「人口爆発」といわれる現象が始まった。発展途上国も近代化の過程に入ったからだろう。1950年(昭和25年)に25億だった人口が、1987年(昭和62年)には50億に倍増した。今は70億くらいになっている。これから100億の段階に入っていくだろう。

 地球全体において、どのくらいの人口が適正人口といえるのか、私はまだわからない。環境破壊や他種の絶滅という点からは、既に人類は増えすぎているという見方もできると思う。逆に自然環境と調和する文明に転じ、食糧やエネルギーの配分を公平にすれば、諸国民・諸民族が共存共栄する地球社会を建設可能という考え方もできると思う。
 私は後者の考えに立つ。そして、こうした地球社会を建設するため、日本には重要な役割があると信じている。それは、日本文明の中には、人と人、人と自然が調和して生きる生き方があるからである。そして、日本人はこうした可能性のある国を自ら滅ぼしてはならない。日本人は日本を再建し、世界と地球に貢献できるよう最善を尽くさなくてはならないと思う。これは、日本及び日本人に課せられた使命であると思う。
 こうした認識と自覚をもって、私は日本精神の復興による日本の再建を訴えている。また再建を目指して、憲法、家庭、教育、国防、外交、財政等について拙論を述べている。脱少子化についてもその一環として私見を述べたものである。

 保守的・良識的・愛国的な人々で脱少子化について踏み込んだ意見を明らかにし、具体策まで語っているものは少ないように思う。しかし、少子化の問題を放置して、皇室も歴史も、憲法も財政も、国防も外交も、家庭も教育も論じ得ない段階に、既にわが国は入っている。むしろ、脱少子化を中心課題においてこそ、国家的な課題を真に論じうるとさえ、私は思う。
 他の諸問題がいくら改善されても、その間、少子化が改善されないと、国家・社会の全体がじわじわと傾いていくだろうからだ。

 脱少子化と日本の再建は一体の課題である。日本を愛する人々、特に若い世代の方々には、この課題について是非、ともにお考えいただきたいと思う。

オランダの奇跡~続少子化14

2006-07-13 10:31:38 | 少子化
 家族を大切にする制度を実行して、経済復興をなしとげた国が、オランダである。「オランダの奇跡」といわれる。脱少子化という点では、顕著な成功例というわけではないが学ぶべき点があると思う。
 拓殖大学教授の長坂寿久氏の著『オランダモデルーー制度疲労なき成熟社会』(日本経済新聞社)は、そうしたオランダの例を伝えている。私が先に挙げた経済的な方策のいくつかは、彼国に前例がある。

 オランダは1980年代にはヨーロッパで最悪の経済状態を示していた。財政状態は破綻して巨額の財政赤字を生み、国際競争力は低く、失業率は二桁。税金は高くなり、労働組合運動は激化し、深刻な危機状態にあった。「オランダ病」という言葉があった。それが90年代になると一変し、ヨーロッパ一の経済優等生になった。これを「オランダの奇跡」という。
 この間、毎年、EU平均を超える成長を続け、ユーロ圏11カ国で最初に財政赤字の基準値を達成した。99年には、財政が25年ぶりに黒字に転じた。失業率は、他のEU諸国が10%戦後なのに比べて、ずっと6~7%を維持し、99年には3・1%にまで低下した。

 オランダが成功したのは雇用改革による。ワークシェアリングをうまく導入したのだ。フルタイム労働とパートタイム労働の差別を撤廃した。96年に法律で1時間あたりのパートタイム労働の賃金はフルタイム労働と同一にしなければならないと決めた。またフルタイムの労働時間を短くした。
 こうして労働時間差差別の廃止、労働時間短縮等によって、労働市場に柔軟性を持たせたところ、パートタイム労働者が急増し、いまやサービス産業を中心に、全労働人口の3分の1がパートタイマーであるという。パートタイマーはフルタイムと同じ地位が与えられ、昇進や社会保障、組合参加などで差別されることはない。
 こうした雇用改革は、政府・企業・労働組合の三者が合意を結び、賃上げ抑制、時短、減税、財政赤字削減などに取り組んだ結果、実現した。

 人々は三つの働き方から自由に選択する。週36~38時間労働で週休2日の「フルタイム労働」、週30~35時間労働で週休三日の「大パートタイム労働」、週約20時間労働の「ハーフタイム労働」の三つである。いわゆるアルバイトは「フレキシブル労働」という。
 このように労働形態を多様化して、ワークシェアリングを取り入れたことにより、雇用が増え、失業率が低下した。人々は、人生の多様な局面に応じて、自由に働き方のパターンを選択できるようになった。また夫婦共稼ぎによって家族所得が増えた分、消費が増大し、経済が成長した。

 オランダモデルの特徴は、家族を基盤とし、家族の絆を強めることができるシステムだという点にある。
 共稼ぎというと、今までは二人がそれぞれフルタイムで二人分の時間働くという方式しか考えられなかった。これに対し、オランダ人は、二人で1.5人分の時間働けばいいという考え方をとった。あとの0.5人分の時間は、育児、疾病ケア、介護、趣味などに当てるのである。最大の長所は、親が子供と一緒にいられる時間が増えた点にある。
 それによって家族の絆が強まった。経済政策として実行したことが、結果として家族政策としても成功したわけである。

 次に、本稿の主題である少子化という点を見ると、オランダの合計特殊出生率は、1980年代から1990年代の初めには、1.5から1.6だった。それが、2003年現在では、1.7に微増した。それゆえ、雇用政策が少子化にも顕著な効果を生んでいるとは言えない。しかし、いまや1.25にまで出生率が低下したわが国にとって、オランダの道には参考にできるところがあると思う。
 というのは、金子勇氏は、増子化の数値目標を1.80とする際に、フランスの例を参考にしていた。しかし、フランスの場合は婚外子が多い。結婚によらない男女関係で生まれる子供が多いのだ。子どもの数が増えても、母子家庭や父子家庭が増え、または親から見捨てられた子どもが増えるのでは、新たな社会問題を生じることになる。
 わが国は、夫婦・親子・祖孫という家族のつながりを強化しつつ、増子化ができるのでなければいけない。国情や国民の価値観が異なり、一概には言えないものの、オランダは伝統的に婚外子が少ないことにおいて、わが国と共通点があり、フランスより考え方が近いと思う。
 脱少子化方策が経済的に負荷の大きいものであったら、実行は難しい。しかし、オランダの例は、経済の好転、家族の復権、少子化の改善を同時に実現する道がありうることを示唆していると思う。

 もう一つ特筆すべきは、オランダの場合、家庭出産が多いことである。1979年から自宅出産が35%前後で安定しているという。オランダは助産師先進国といわれ、助産師の85%が開業助産師だという。助産師と家庭医と産科医の三者の関係を決めたガイドラインがあり、健康面に問題のない人は家庭で多く出産し、リスクのある人には病院が対応していると聴く。
 わが国では、昔はお産といえば、自宅に産婆さんが来て産むものだった。戦後、アメリカの占領時代に、日本人の出産を見たアメリカ人が、こんな不衛生なことをしているのかと誤解し、施設出産に切り換えさせられたという。その結果、今ではほとんどの人は病院で出産している。
 近年、自然出産を希望する女性が増え、家庭出産を希望する人も少数ではあるが増えつつある。私自身は、自然出産であれば、必ずしも家庭出産でなくともよいという考えである。家庭出産は、それをやってくれる助産師が近くにいなければ不可能である。しかし、事情が許せば、自然分娩でかつ家庭での出産ができれば、お産の理想的なあり方だろう。
 この点でも、ワークシェアリングの導入という方法は、家族の絆を強め、親による子育てを促進しうるだけでなく、家庭出産の奨励にも有効だろうと思う。

 脱少子化は、単に子どもが多く生まれればよいというものではない。その子どもが、明るく暖かい家庭で育つような家庭環境・社会環境が必要である。脱少子化には家族の復権、家庭の回復・強化と併せて取り組んでいきたいものである。

 次回に続く。

家族再生型方策2~続少子化13

2006-07-11 09:56:44 | 少子化
 方策の説明を続ける。

⑥個人単位ではなく、夫婦単位でのワークシェアリングを取り入れる。

 「フルタイムー保育所」方式から「パートタイムー家庭保育」方式へと発想を転換する。父母の働き方を組み合わせ、夫婦単位で労働を考え、二人で一つの単位と考える。
 労働時間を減らして、しかも時間当たりの賃金を正社員並みに確保すれば、夫婦二人が1.5人分働いて、手分けして育児や介護に当たることができる。それでも不十分な分だけ国や自治体が補助するようにする。

⑦小学生までの子供をもつ人は、午後早く帰宅して、お迎えや下校時の保護、夕食作りに当たれるようにする。

 労働形態を多様化し、夫婦単位のワークシェリングを導入すれば、こういうことも可能になるだろう。子供は帰宅したときに、家族が迎えてくれることが、心の癒しになる。できれば母親がいればよいが、夫婦で交替で家にいるようにしてもよい。

⑧女性が子育ての期間休職しても、復帰のときに同じ条件とする。

 小学生を持つ母親、特に3歳までの子供を持つ母親が職場復帰をする際、雇用条件を配慮する。

⑨親学を振興し、高校・大学では必修とし、また社会人教育で講習を行なう。

 ⑨は経済的な方策ではなく、教育的な方策である。①~⑧は、教育的な方策が同時に実行されてこそ、有効なものとなると思う。
 日本を立て直すには、しつけからやり直す必要がある。それには、しつけのできる親を育てる必要がある。親になるための勉強、親が親らしくできるようになるための訓練、言い換えると「親学(おやがく)」が求められている。これこそ、現代社会に最も求められているものではないか。

 人間は他の動物に比べ、本能と学習の関係が複雑で微妙になっているようだ。本能のある部分は、後天的に生活環境のなかで発現するようになっており、また学習によって身につけていく部分が非常に大きいと思われる。
 アべロンの野生児のように、人間の子であっても、狼に育てられれば、言葉を話せないどころか、二足歩行すら出来ない状態になるのが、人間である。子育てについても、後天的に子供の育て方を学ぶことのできる環境がないと、うまく子育てができない。昔は大家族で、自分の弟や妹が生まれると、親が育てているのを見たり、あるいは自分が下の子の子守をしたりした人が多かっただろう。それが記憶して蓄積された。また、自分が親となったときには、同居している自分の親や祖父母から育て方を教えてもらいながら、子育てができた。しつけにしても、親だけではなく、祖父母や親戚・地域の大人など、総がかりでなされていた。おそらく人類は、そういう仕方で、何万年、何十万年とやってきたのだろう。

 ところが今は、急速に核家族化が進み、世代間の経験知の伝承が家庭でうまくなされなくなっている。それに加えて、共稼ぎの家庭が多く、母親が家庭にあって子育てに専念できないケースが増えている。また地域の人間関係も希薄になってきている。こうした家庭と社会のかつてない変化に対応して、家庭教育のあり方を補強するものを打ち出す必要があると思う。そういうものとして、私は「親学」に注目する。
 たとえば、地方公共団体や大学で、子供を持つ人や、これから親になるような人たちに「親学講座」をする。保育園・幼稚園では、親や祖父母に対して「しつけ講座」をする。高校の家庭科や大学の一般教養で「親学」を教える。方策はいろいろあると思う。運転免許の場合、交通安全のために更新のたびに講習をするが、ビデオ一つ、冊子一つ見るだけでも、人の意識は変わる。
 子育て期間中として減税・補助金支給・年金払込免除等の優遇を受ける人は、この講習を受けることを必須する。

 子供の問題のほとんどは、親に問題がある。子育てに自信がなく、子育てがうまくできない。または子供をつくることに関心が無く、育てることにも関心のない若い人たちが増えている。 学校教育・社会教育を挙げて、「親学」の振興を真剣に行なうことが、日本の教育の改革、そして日本国の再建に欠かせない。「親学」の振興を、教育基本法に盛り込むことを、私は提案する。
 教育基本法に「親学」を盛り込むべし、とまで言っているのは、まだ私だけかもしれない。しかし、親殺し・子殺しの増大、人類社会で前例のない少子化とこれに重なる劣子化を思い、また若い親たちの言動を見るにつけ、早急に「親学」の振興・普及が必要だと強く思う。

 親学の振興は、家族の復権を促し、家庭の機能の回復・強化となり、ひいては増子化にもつながると思う。

 以上述べた方策はすべて、憲法の改正、教育基本法の改正、男女共同参画社会基本法の老若男女共生社会基本法への作り変えを行なうことを前提としている。繰り返しになるが、ここでも改めて強調したい。
 脱少子化のために、現行の憲法・関係法のままでもできる部分はあるだろうが、効果は半減またはそれ以下となると思う。脱少子化と日本の再建は一体の課題であって、憲法から変えることが絶対不可欠である。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=154718128&owner_id=525191

 次回は、オランダの例を述べたい。

家族再生型の方策~続少子化12

2006-07-10 10:25:34 | 少子化
 脱少子化をめざす方策は、経済優先・個人主義・フェミニズム的でなく、家族を重視し、家庭の機能の回復・強化を図るものでありたい。前回書いた方策について説明する。

①保育所中心の保育ではなく、家庭中心の育児の促進に切り替える。

 従来の政府の少子化対策は、保育所の拡充によって「仕事と家庭の両立」をできるようにすれば、女性は働きながら子供を産むだろうと考えていた。しかし、保育所が完備普及している北欧諸国でも、少子化の傾向は他の先進諸国とほとんど変わらない。保育所一辺倒の少子化対策は、専業主婦を差別したことによって、かえって少子化を助長している。
 考え方を変え、保育所は必要最小限にとどめて、基本を家庭育児に移すようにする。家庭での育児に対して、できるだけ経済的に有利になるような制度をつくる。子供を産み育てようという女性、できれば家庭で子供を育てたいという女性を支援することにより、増子化が期待できると思う。

②必要最少限の保育所を除き、保育所の整備にかけている費用を、家庭育児の援助に回す。

 家庭で育児をしている家族には税の優遇策をとる。家庭育児に対しては、社会的施設で行なわれる育児と同等の補助金を与える。
 林道義氏は、今の保育所に行っている援助をやめて、家庭で育てている母親への援助にその分をまわうとよいという。氏は、「現在の制度では、子供を保育所に預けている親は、おおざっぱに計算して乳幼児一人当たり平均月10万円くらいの補助を受け取っていることになる。子供二人なら20万円である。これだけの金額を親に直接振り分ければ、母親は働かなくても、家で子供を育てることは十分に可能である」と述べている。
 予算的には、保育所施設に投資し保育士を雇用し長時間労働の賃金を支払うよりも、家庭育児に補助金を出す方がはるかに安くつくだろう。

③家庭での育児も労働とみなし、賃金収入に当たる分を減税・補助金で補う。年金の払い込みを免除し、期間に加算する。

 外に働きに行かないで家庭で育児をしている場合は、社会保険料を払わなくとも払ったと同等とみなし、年金の期間に加算する。

④特に子どもが3歳くらいまでは、母親が家庭にいて子育てができるように金銭的な支援をする。

 現在の制度は、国が乳幼児の母親も働かせるという原則で政策を立てている。これを逆に乳幼児の母親は働かせないという方針で、政策を考える。3歳くらいまでの乳幼児の母親に対しては、国が経済的な援助をして、できるだけ働かなくてもいいようにする。
 育児は国事である。

⑤パートタイム労働とフルタイム労働の賃金差をなくし、子育てをする人は短時間の労働でも収入を得られるようにする

 親が家庭で子供を育てることを可能にする労働形態を創造し、普及させる。女性が家外で働く場合でも、仕事と家庭や育児とを両立できる働き方を提供する。「両立」といっても、子どもを保育所に預けて母親が長時間労働することではない。それは真の両立ではない。
 乳幼児を保育所に預けて母親が働きに出るのは、親が行なうべきしつけや、基本的な家庭教育が不十分になる。子供が一人ぽっちで食事をする「孤食」も増える。こんなことでは、子どもが心身ともに健やかに成長できるわけがない。親が家庭において自分の手で子供を育てることができるような制度を整え、それが増子化につながるような方策を行なうべきである。
 日本人は長時間猛烈に働く。男性はそれでいい。女性の一部にはそういう人がいてもいい。しかし、近年わが国が取ってきたのは、乳幼児や児童を持つ母親までも同じように働けるようにするという発想だった。そのため、働く女性が保育所に子供を預けられるようにするという方策一辺倒になった。これは少子化を助長した。8時間の保育時間が12時間、13時間の保育となり、さらに24時間対応の保育所まで出現している。
 こんなことで母子の愛情豊かなふれあいができるわけがない。子どもは母親の愛情を受けることにより、心身ともに健全に成長できる。母親を剥奪され、母親から隔離された子どもは、泣くことさえやめ、ふさぎ込み、成長が遅滞してしまう。
 これまでの固定的な労働形態でなく、もっと柔軟で多様な労働形態に切り換える。一人当たりの労働時間を短くし、時間当たりの賃金は、フルタイムの労働者とパートタイムの労働者で同等にする。短時間労働者も正社員並みの待遇を保証する。
 そうすれば、家庭での子育てや親の介護をする人は、自由に柔軟に労働時間を決めることができる。子供や女性や介護を要する高齢者に優しい方法ともなるだろう。

 次回は⑥以下について述べる。