ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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保育一辺倒は誤り~続少子化6

2006-07-01 08:54:06 | 少子化
 わが国の政府は少子化対策を行なってきた。それなのに、どうして少子化の進行を読めることが出来なかったのだろうか。

●既婚者対象で保育一辺倒の政策は誤り

 少子化の直接的な原因は、未婚率の上昇と既婚者の出生力の低下である。これらに正面から向き合うことなくして、効果的な少子化対策は講じえない。ところが、「従来の政府系の少子化対策は未婚率の上昇を視野に収めず、ひとえに既婚者の出生力低下の阻止という大義名分から構成されていた」と金子氏は言う。
 「未婚率の増大を少子化の原因にはっきり特定すると、結婚の自由や出産の自由をめぐる権利などの人権問題への言及が必要になってくるため避けようとする国の姿勢」があると、金子氏は指摘している。
 若者の独身者が増え、晩婚化が顕著になっている。わが国は欧米諸国に比べ、婚外子が少ない。結婚して子供を生む、または子どもが出来たから結婚するという人が多い。そうすると当然、結婚を奨励したり、結婚をしやすい環境をつくったりする対策が必要だ。さらに、私の述べているように、日本人全体が根本的なものの考え方、生き方を改めることが求められている。
 しかし、金子氏が指摘しているように、政府は未婚率の問題に向き合おうとしていない。

 では、政府は何をやってきたのか。この約15年間、政府の少子化対策は、既婚者のみを対象とし、既婚者の出生力を上げることに限定していた。しかも、働く女性のために、保育所を増やし、子どもを保育所に預けやすくする対策に集中してきた。これを金子氏は「保育一辺倒の少子化政策」と断じている。
 一体、この政策は効果を上げたのか。否。政府が少子化対策として約15年間取り組んできた保育育児路線の破綻を、現職の厚生労働大臣が2005年2月に認めたのである。

 従来、政府は「仕事と子育ての両立支援策推進」と「待機児童ゼロ作戦」を打ち出してきた。仕事と家庭を両立させる「両立ライフ」を支援する。また保育所に入所待ちの子どもをなくす。これが政府の少子化対策のエッセンスである。
 しかし、これは「バブルの崩壊」以後、長期的な不況に陥ったわが国の財界が、女性を安価な労働力として利用するために、家庭から外に引き出し、一個の労働者として働かせるというやり方だと、私は思う。子どもは、母親を求める。乳児期はもちろんのこと、3歳くらいまでは、母子が密着して子育てをすることが、子どもの発達上、極めて重要である。それなのに、わが国の政府がやっているのは、乳幼児さらには誕生間もない0才児を持つ若い母親まで、子どもから引き離して家外労働をさせようとする政策なのである。経済優先で、人間の命や心の発達を軽く考える、間違った政策である。

 にもかかわらず、こうした母子ともに有害な政策が採用・推進されてきたのは、なぜか。財界の思惑と、フェミニストの思惑が一致したことが、その重要な原因である。
 フェミニストは、男女の同権、さらには男女の性差の否定を追及する。男らしさ、女らしさという生命に基礎を置く性差を否定し、男女の特徴の無化をめざす。そのフェミニストとは、社会で働く女性であり、学者や官僚や政治活動家らがその中心である。彼女達は、男に負けない、男勝りの仕事をして、自分の能力を発揮しようとする。そのために、旧来の慣習や文化を、女性への差別だとして排除しようとする。
 この時、フェミニストは彼女達を不利にするものが、専業主婦の存在だと考えた。専業主婦がいることが、働く女性に対し、社会的に不利な条件を与えていると見なして、専業主婦を攻撃した。そして、あらゆる女性が、家庭から外に出て働くように仕向ける政策を推進している。
 すべての女性が社会で働く社会とは、全女性を労働者にし、子育てを公的機関で行なう社会主義の社会に似たものとなる。もともとフェミニズムは、共産主義から出自している。その発想は男女の関係を支配ー被支配関係ととらえ、男女の闘争を通じて女性の権利の獲得・拡大をめざすものだ。

 わが国では、あらゆる女性が、家庭から外に出て働くようにしようとするフェミニストの思惑と、女性を安価な労働力として利用しようとする財界の思惑が一致した。その政策を少子化対策という、まったく別の看板をつけて推進してきたわけである。

 私は、近年の政府の少子化対策は、むしろマイナスだったと断言する。政府が誤った舵取りをして、多くの女性を家庭の外で働く労働者とした。その結果、単身化・晩婚化・少産化が助長された。
 子どもを多く産み、育てるのは、専業主婦である。職業婦人ではない。子どもを多く産み育てている専業主婦を減らすような政策が、少子化の改善になるわけがない。子育ての時期にある女性を家外に出し、家庭にいる時間を少なくしたことにより、むしろ少子化は進んだのである。社会で働く女性への支援に特化した政策は、少子化対策とは、逆のことをやってきたのである。
 また、女性が家庭にいる時間が少なくなったことにより、家庭の機能が低下している。子どもに接する時間が少なくなったために親の教育力が低下し、しつけもできていない子供が増え、劣子化が起こっている。
 これらは、経済優先・個人主義・フェミニズムの政策を採って来た日本国政府の大失策である。

 次回に続く。