ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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全員参画の方策~続少子化9

2006-07-04 10:51:14 | 少子化
 金子勇氏は、若い男女も年をとった男女も、中年の男女も全部包括した「老若男女共生」により、シングルやディンクスも含む社会全体で少子化を増子化に転換し、「適正人口1億人社会」を創造することを提唱する。
 そのための方策として、氏は、「子育て基金」、選挙制度や省庁の改革等を提案している。主な点を見てみよう。

●「子育て基金」と選挙制度・省庁の改革

 第一の提案は、「子育て基金」の創出である。金子氏は適正人口1億人を目標とし、約30年後には合計特殊出生率1.80という増子化をめざす。そして、「子育てフリーライダーも加わった『社会全体』で『子育て基金』を設立」することを提案する。
 「子育て基金」とは「社会全体での公平な次世代育成の手段」として考えたものだと言う。具体的には、「既婚・未婚を問わず、子どもの有無にかかわらず、30歳から64歳まで、すなわち日本人の半数を占める6000万人国民のすべてが次世代育成の責任を分担する」。この理念の下に、「子育て基金」として「年間5万円の個人拠出として制度化」する。
 5万円とは、全勤労者の平均年収を500万円として、平均年収の1%を拠出するものである。月額にすると、4167円となる。65歳以上の年金受給者は「年金の1割」を拠出するものとしている。

 こうして社会全体で拠出した「子育て基金」は、合計で年間3兆円と推計される。この基金を「子育ち資金」に当てる。すなわち「0歳から18歳未満までのすべての国民2300万人に月額4万円(年間48万円)」を「子育ち資金」として支給するというわけである。
 この提案を金子氏は介護保険になぞらえて、次のように説明する。「親の生死とは無関係に40歳以上の日本国民は全員が介護保険料を支払っているので、5年続いた介護保険では、現世代が文字通り『社会全体』で前世代を支えていると解釈できる」。その「理念」を増子化に「応用する」ものという。
 子育て基金の拠出は、国民が広く子育て費用を分担するものだが、金子氏は「それには国民全員の負担が重くなるので、社会的公平性の観点から調整する。同時に、資源配分面においては、高齢者偏重を緩和しつつ、子ども・家庭支援への優先へと変更する」と述べている。

 私は、国民が広く子育てに参画するという理念には賛成だが、金銭的支援を中心とする発想そのものに検討が必要だと思う。この点は重要なので、後日詳しく述べたい。

 第二の提案は、選挙制度の改革である。金子氏は「老若男女共生」のために選挙制度を改革することを提案する。
 「社会は、ヨコの組立としての地域社会、タテの組立としての社会階層によって、合わせ重ねて構成されている」。そこで、「国政を担当する政治家は地域代表者が半分、年齢階層代表者が半分」として、「地域代表制と世代代表制を並立」させるという案である。氏は、この点に関し、憲法の改正を要することを述べている。少子化の中でも子どもを育てている親の意見、高齢者の意見等、世代特有の意見をもっと国政に反映しやすくするというのが狙いだろう。

 今のところ氏の提案は、政党の役割、比例代表制、参議院の機能等とどう関係するのかよくわからない。別に私見を述べたように、少子化対策に有効な新憲法をつくるなら、もっと抜本的な改正が必要である。氏の提案はそこまで踏み込んだものには見えないが注目に値すると思う。
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/d/20060614

 第三の提案は、省庁の改革である。「世代と男女とを統合する発想による制度の見直し」である。
 これまでのジェンダー(性差)を中心とした男女共同参画社会という目標像は、少子化の対策にはならない。ジェンダーにジェネレーション(世代)を組み合わせた「老若男女共生社会」をめざさないと、増子化は図れない。適正人口にも向かえない。
 そこで、氏は、内閣府の「男女共同参画局を速やかに老若男女共生局に格上げして、都道府県と市町村にその担当を配置する。加えて、厚生労働省と総務省、それに文部科学省と内閣府の機能のうちいくつかを取り出し、それらを融合させて『子ども家庭社会連帯省』を新設する」ことを提案する。

 私は、狙いはよいが、方法がうまくないと思う。そもそも男女共同参画局は、日本にフェミニズムを浸透させる司令塔となっているのではないか。それを「格上げ」する形で「老若男女共生局」をつくるのでは、フェミニズムの害毒は除去できないだろう。氏の発想を生かすのであれば、新憲法を制定したうえで、男女共同参画社会基本法は一旦廃止し、改めて「老若男女共生社会基本法」を制定してから、省庁改廃をした方がよいと思う。

 以上で金子氏の提案の紹介を終える。次回はそれを踏まえて私案を述べたい。