ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

三橋貴明氏の経済成長理論13

2010-07-29 09:51:52 | 経済
●いま日本が取るべき方策(続き)

③財源は国債の発行に求める

 デフレ脱却のための財源は、国債の発行によるべきだというのが、三橋氏の提案である。なによりわが国には、豊かな資産がある。それを生かすことだという。
 『ジパング再来』に三橋氏は書く。
 「国内の家計が1000兆円を超える純資産を持っている。これほど莫大な金融資産が国内にある以上、日本政府が国債の消化に困るような事態に陥ることは有り得ない」と。同書の引く2008年末のデータでは、家計の資産は1433.5兆円。家計の負債は365.4兆円。資産から負債を引いた純資産は1058.1兆円。これが1000兆円以上ある。
 ここでいう純資産は金融資産である。ただし、金融資産であっても、すぐ国債を購入できるような資産でなければ、国債は消化されない。この点、日本の家計の金融資産の55.2%は現預金である。三橋氏は、現預金を「純粋マネー」と呼ぶ。すぐに国債を購入することのできるマネーという意味である。日本の家計が保有する現預金は、世界最大の792兆円(08年末現在)である。この金額は、アメリカの家計が保有する現預金を上回る。日本の人口はアメリカの4割程度しかないのだから、いかに日本の家計が「純粋マネー」を多く持っているかがわかる。
上記のような莫大な金融資産が国内にある。「だからこそ日本国債の金利は世界最低水準で推移しているのだ」と三つ橋氏は指摘する。また「世界最大の対外純債権国であり、かつ国内の家計が膨大な純資産を保有している日本が破綻するなど、文字通り『不可能』である」と断言する。
 日本は豊かな国であり、日本人はカネ持ちなのである。わが国は貯蓄性向が強く、貯蓄が投資を上回っている。貯蓄が経済の活性化に生かされていない。銀行は過剰な預金を運用しきれず、預金超過となっている。そのうち、およそ8割(09年時点で114兆円)が国債で運用されている。残りのほとんどは、アメリカ国債の購入である。
 私見を述べると、さらになお100兆円くらいの民間の資産が活用されていない。問題は、政府が日本国民のカネを、国民のために使っていないことにある。政策の失敗によってデフレを起こし、財政を悪化させ、そのツケを国民に増税という形で押し付けようとしているのが、自民党であり、民主党である。わが国は需給ギャップが大きいと言っても、35兆円程度である。100兆円の資産をうまく使えば、需給ギャップを埋め、デフレを脱却することはできる。政策次第なのである。先祖が一生懸命働いて貯めてくれたカネをうまく使えず、子供がバカなことを繰り返して、自ら国を滅ぼしかねない状態になっているのが、現代の日本である。
 三橋氏に話を戻すと、三橋氏は国債を増発しても、繰り延べや買取等ができることを強調する。『ジパング再来』から引くと、「そもそも国債の償還期日が到来したら、ロールオーバー(繰り延べ)をすれば済む話であるし、金利が安い時期であるならば、返済のために新たな国債を発行してもかまわない。さらには、(略)中央銀行に国債を大量に購入させてもかまわないし、政府紙幣を発行して国債を償還してしまうことも、特に法的手続きなしに可能だ」と言う。
 国債は最長期が30年物で、期間が来れば書き換えをして60年償還としている。中央銀行による買取については、次のように三橋氏は書いている。「政府が際限なく国債を市場で販売していくと、長期金利が上昇していくという問題が生じる。それに対しては、(略)中央銀行に国債を買い取らせるという解決策」がある。「日銀の国債買い取りとは、(略)中央銀行が印刷した紙幣と市場の国債を交換する行為だ。日銀は金融市場の国債を買い取り、代わりに自らが印刷した通貨を市場に供給していくことになる。すなわち『金融緩和』を継続的に推進していくわけで、現在のように世界的に景気が冷え込んだ状況では、極めて望ましい施策といえる」と。
 最後の政府紙幣については、日本銀行が発行する日本銀行券とは別に政府が合法的に紙幣を発行するという方法である。政府紙幣については、エコノミストの間でかなり見解が分かれる。私見では、政府紙幣は一時的な効果は狙えても、何度も発行したり、金額を多くしたりすることはできない。結果は日本銀行券と政府紙幣が並存し、紙幣の比率が変わるだけになるだろう。こういう奥の手のような方法より、国民の資産を有効に生かすために、政府と日銀が一体となって、財政金融政策を進めるのが、まっとうな方法だと思う。

 次回に続く。