ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

三橋貴明氏の経済成長理論11

2010-07-26 08:46:32 | 経済
●日本経済が抱える「真の問題」

 わが国では、1989年にバブルが崩壊した。以後、長年にわたり、深刻な不況が続いている。私は、バブルはプラザ合意に始まったと見ている。日本の経済力に脅威を覚えたアメリカがバブルを仕掛け、絶頂において破裂した。日本は大打撃を受け、アメリカは日本の金融資産を食い物にできるようになった。深刻な不況のなかで、1998年橋本政権は緊縮財政を行った。それがデフレを引き起こした。今なおわが国はデフレから抜け出せず、この間、公的債務は膨れ上がった。
 今日わが国は経済成長と財政健全化という二つの課題を抱えている。課題の解決策につき、エコノミストや政治家の間で意見が分かれている。三橋氏の場合は、先に書いた独自の経済理論に基づいて、日本の問題を次のようにとらえる。
 三橋氏は、『ジパング再来』で述べる。
 「日本は1989年に始まるバブル崩壊の過程で、多くの企業が(略)『バランスシート不況』に突入してしまった。各企業が膨れ上がったバランスシートの右上、すなわち負債総額に恐れをなし、借金返済に専念するようになってしまったわけだ。結果、企業の投資が激減し、日本のGDPは大きなハンデを負う羽目になったのである」
 バランスシート不況は、「借金返済型不況」と三橋氏が呼ぶものである。企業が負債返済と投資縮小に専念した結果、名目GDPが縮小してしまう。こうした場合、財政出動により政府支出を増やし、民間の設備投資を促す政策に効果が期待される。しかし、「1994年以降の日本の政府支出」は「110兆円から長年横ばいを続けている」「1998年以降、緊縮財政(増税と政府支出の削減)により名目GDP成長率が低迷し、政府の負債はかえって増大した」と三橋氏は指摘する。
 三橋氏は、橋本政権、小泉政権は「財政健全化志向の緊縮財政路線」を行い、経済を悪化させた。小渕政権、麻生政権は「経済成長志向の財政支出拡大路線」を行って、経済を好転させたと評価する。わが国の政策は、景気がよくなってくるとストップをかけ、景気が悪くなってくるとゴーをかける。三橋氏によれば、こういう政策の繰り返しである。いわゆるストップゴー政策である。
 代表的な物価指数のうち、名目GDPを実質GDPで割ることで求められる指数を、GDPデフレータという。わが国のGDPデフレータは、三橋氏によると、1998年の金融危機以降、前期比マイナスが続いている。すなわち、極度のデフレ状態が長年続いている。
 三橋氏は、日本のデフレの特徴は「日本は国内の需要に比べて、供給能力があまりに過剰」であることにあると指摘する。総需要と総供給の差が、供給過剰、需要不足であるものを、デフレギャップという。わが国は「世界最大級のデフレギャップを抱えている」。三橋氏はこのデフレギャップの克服こそ、わが国の重要課題とする。
 そして、『ジパング再来』で次のように主張する。
 「日本の問題は『名目GDPの成長率低迷』により公的債務対GDP比率が悪化していること。公的債務そのものではない」
 「日本の『真の問題』はストック(金融資産)が莫大で、世界最大の純資産を持ちながら、フロー(名目GDP)が相対的に伸びていないこと、つまり経済の『効率性』が悪いことにあるのである」
 「日本はフローを生み出す『源』たる政府支出が、長期間にわたりゼロ成長を続け、名目GDPの成長率が低迷した結果、公的債務対GDP比率が主要国の中で唯一急速に悪化したのである。これこそが、日本経済の効率性が悪化した真因である」と。

 次回に続く。