ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

敗戦国の負った条件~少子化3

2006-06-06 10:53:51 | 少子化
 小泉政権は、少子化対策を重要課題と位置付けている。平成15年7月に少子化社会対策基本法が制定され、基本的施策が盛られて、少子化社会対策会議が発足した。少子化対策の担当大臣を置き、検討結果を報告している。社会的経済的文化的な要因については、おおむねそこに言う通りだろうし、できることはどんどん実行すべきだと思う。
 しかし、私の見るところ、脱少子化を目指しながら、一方では個人主義を徹底し、家族の紐帯を弱めるような政策を行なっている。また国家の将来を憂えながら、教育基本法に愛国心を盛ることは避けようとしている。
 どうも全体がチグハグである。矛盾したことを同時にやろうとしている。個人で言えば、精神分裂のような状態だ。これでは、長期的に効果の上がる少子化対策にはなり得ないと思う。もっと根本的なところから考えないとならないのではないか。

 今日の深刻な少子化を改善するには、日本人は、根本的なところから考え方、生き方を改める必要があると私は思う。そこで、まず戦後の日本という国のあり方から考え直すべきだと思う。
 主旨を先に述べておくと、戦後の憲法や教育、歴史観、価値観等を全体的に見直し、ゆきすぎた個人主義を是正し、家族や民族や国家の意識を高めること。そして、生命に基礎を置いたものの考え方、生き方を取り戻し、家族・民族・国家の存続・繁栄に努めることが必要だと思う。

 少子化は何故、ここまで深刻化してきたのか。専門家が社会的経済的文化的要因をいろいろ上げている。私はそのほんどに首肯する。そのうえで、さらにその背景に目をむけ、様々な要因が少子化に結果する、国家の条件について考察してみたいと思う。

●敗戦と民族の劣化

 その条件の一つに、わが国が大戦に敗れたという事実と、その影響があると思う。
 戦後、先進諸国は、どこも少子化が進んでいる。歴史的に文明が進み、生活が豊かになると少子傾向が現れると言われる。ローマ帝国もそうだったという。戦後、先進諸国は、各国とも合計特殊出生率が低下傾向にある。近年、2.00以上を保持しているのは、アメリカだけである。それ以外の国は1.20から1.90の間となっている。うち目立って少子化が進んでいるのは、日本、ドイツ、イタリアである。
 ドイツは平成6年(1994)に1.24まで下がった。その後、少し持ち直し、平成15年(2003)に1.34になった。イタリアは平成10年(1998)に1.15という先進国最低を記録した。その後、平成15年に1.29まで回復した。日本は、昨年の平成17年(2005)に、1.25と過去最低となり、現在、先進国中で最下位となってしまった。
 
 これらの三大少子化国は日独伊の三国である。つまり第二次世界大戦の敗戦国である。これは、偶然ではないと思う。
 戦争とは、民族間の生存競争である。優勢を得るための生命と生命のぶつかり合いである。戦いに傷つき、敗れた民族は、男性を多く失う。それは民族の劣化を招く。
 わが国は、大戦で男子を多く失った。子孫を残すことなく亡くなった若者が、靖国神社に多数祀られている。心身ともに優秀な軍人が多く戦死し、将来を嘱望される学生も戦地に赴き、戦場に散った。わが国の場合、戦争では指揮官が隊を率いて先頭に立って命を捧げる。その結果、男性全体の質が低下したと思われる。

 どこの国でも戦後は、ベビー・ブームが起こる。わが国でも、昭和22年~24年頃のベビー・ブームは、戦争で減少した人口を補う役割をした。その時に生まれたのが、いわゆる「団塊の世代」である。その世代の父親は、戦地から復員してきた人たちが多かったわけだが、戦前の男子に比べると、平均的に心身の劣化が見られただろうと思われる。

 上記のことは、ひとつの生物学的な条件である。戦後は、こうした敗戦国としてのハンディをどのように乗り越えていくか、その方針を立てて、日本の復興・再建を進めなければならない課題だった。
 ところが、わが国は、こうしたものの考え方をしっかり持つことなく進んできたように思う。それは占領政策の影響である。その影響は戦後、世代が代わるに従って、顕著になってきた。私は、近年の少子化の進行にも、この影響が一つの条件となっていると思っている。その点を次回書きたい。