ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

DINKSと将来の世代

2006-06-16 19:59:11 | 少子化
 昨日書いたことに「はん」さんという方から、コメントを戴いた。ご返事を書こうと思ったところ、長くなりそうなので、今日の日記に書くことにさせていただく。

 結婚しながら子を設けることなく一生を夫婦のみで過ごす夫婦を、DINKS(ディンクス)という。
 DINKS は「Double Income No KidS(=ダブルインカム・ノーキッズ)」の略称で、「共稼ぎで子供は持たない」の意味。
 1980年代の半ば、アメリカから大都市圏の若い世代の新しいライフスタイルとして、わが国にも入ってきた。
 私より少し下の世代で、高学歴・キャリア志向の夫婦に目に付く。特に妻の側がそういう志向を持っている夫婦である。

 子供は授かりものである。夫婦がともに健康であっても、授からない人たちもいる。子供を望んだが得られないという夫婦は、いつの時代、どこの社会にもある。これは自然的な条件である。しかし、DINKSは違う。人為的に、自分達の意思で子供を作らない生き方をしている点が違う。

 DINKSは、夫婦で働き、子供の生活費や教育費を支出することがないわけだから、娯楽にお金を費したり、貯蓄に励んだりする優雅な生活を送っている人が多いようだ。DINKSという言葉は、今も不動産業や保険業等で、商品名に使われている。前記のような夫婦を対象としたマンションや生命保険がいろいろ販売されている。

 最近は「共立(ともだち)夫婦」などという言い方もある。夫婦が自立して、互いを束縛せず、子育てにも煩わされず、自由に豊かに生きる。そういう生き方が、素敵な生き方であるかのようなイメージが広がっている。
 いや、自分たち夫婦だけ、自分達の世代だけ、豊かで楽しい生活が出来ればよい、将来の日本の社会のことなど考えないというのでは、自己本位というものだろう。ワン・ジェネレーション主義は、その世代だけ栄えて、後は消滅ということになる。家で言えば、絶家という。さらにその家、その世代だけでなく、日本という国、日本人そのものが衰滅に向かっていく。これは、亡国という。

 これから10数年たつと、DINKSの夫婦と、子供を生み育てた夫婦が、ともに年金生活に入っていくようになる。
 どちらの夫婦も、年金や税金の条件は基本的に同じである。当然、妻も長年、職業生活をしている方は、年金額や貯蓄は多いだろう。
 現在の年金制度は、将来の世代が高齢者を支える仕組みになっている。それを支える子供たちは、子供を持った夫婦が育てた子供たちである。
 そのため、DINKSは、子供を育てた夫婦とその子供たちに、今から老後を依存する関係になっているわけである。と同時に、自分の子供を生活費や教育費を費やして育てている夫婦は、DINKSの老後までを間接的に経済的に支援している形になってもいるのである。
 今後、少子化を根本的に改善していかないと、こうした社会関係をどう是正すべきか、問題になってくるだろう。これは、単に個人の経済問題ではなく、公共倫理の問題として考えるべき事柄である。

 かつての日本人は、子孫の幸福と繁栄を願って、汗水を流した。私たちの祖先は、そうやって豊かで平和な国を残してくれた。今、この時代を生きている日本人は、逆に自分たちのつけを将来の世代に回している。ますます少なくなっていく子供たちに。しかも、自分の子供や孫ではなく、他人様の子供や孫にまで回していることに気付かないのではまずいだろう。
 繰り返しになるが、子供は授かりものであって子供を望んだが得られなかったという夫婦と、自分たちの意思で子供を作らない生き方をしている夫婦とは違う。ここで私が言うのは、人為的な場合である。
 おそらく将来、若い世代から、不満と批判が吹き出てくるだろうと思う。その世代は、自分を育ててくれた親の面倒を見るだけでなく、子供を生み育てようとしなかった高齢者をも養っていかなければならないのだ。
 だから自分たちだけ、自分たちの世代だけよければいいなどと、安易に考えてはいけない事柄なのである。
 人は、だれしも、いろいろな人に世話になって生きている。直接恩義のある人だけではない。見知らぬ多くの人々にも様々な恩恵を受けている。それは、過去の世代や同時代の人たちだけではない。この国に生まれ育っていく、将来の世代にも世話になるのだ。それが社会であり、国家なのである。
 日本人は、もともと共同互助の精神を持っていた。共存共栄の精神を持っていた。そういう日本精神を取り戻すことが、ますます必要になってきている。

 各自、立場・環境は異なるだろうが、少子高齢化の問題は、日本人として、日本国民として、みなで考えていくべき事柄だと思う。いま生きている子供たちのために。さらにその先の世代のために。そして、自分たち自身のために。

■追記

 本稿を含む拙稿「脱少子化と日本再建は一体の課題」を、下記に掲示しています。
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion02f.htm