ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

憲法改正~財政の透明性

2005-12-27 09:57:06 | 憲法
租税法律主義について、昭和憲法は、以下のように定めていた。

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●昭和憲法

第八十四条 あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。
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 法令というものは、誰が誰に何をどうするということを具体的に定め、権利義務関係を明確にしなければならないものだろう。ところが、上記の条文には主語がない。また、「法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」という表現は、日本語として練れていない。そこで、次のようにしたいと思う。

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●ほそかわ案

(租税法律主義)
第百二十条 国の行政府及び立法府は、租税を新たに課し、または現行の租税を変更する際は、法律、または法律の定める条件によらなければならない。
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 国費の支出及び国の債務負担について、昭和憲法は以下のように定めていた。

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●昭和憲法

第八十五条 国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする。
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 これも主語がない文章であるので、改めたい。

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●ほそかわ案

(国費の支出及び国の債務負担)
第百二十一条 内閣は、国費を支出し、又は債務を負担する際には、国会の議決に基づくことを必要とする。
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 次は予算についてである。ここは重要な条項である。昭和憲法は以下のように定めるのみであった。

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●昭和憲法

第八十六条 内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。
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 私は、ここで財政の透明性を実現するための具体的な規定として、以下のように盛り込みたいと思う。

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◆ほそかわ案

(予算、公会計)
第百二十二条 内閣は、毎会計年度の予算案を作成し、国会に提出して、その審議を受け、議決を経なければならない。
2 内閣は予算作成に際し、前年度決算を前提にその審議を経なければならない。
3 公会計は複式簿記とする。一般会計と特別会計は連結する。
4 内閣は、国会において議員が提出した法律案が可決されたときは、その法律の執行に必要な費用を補正予算案、または次の会計年度の予算案に計上しなければならない。
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 第2項は、予算・決算の本来あるべき関係を明記するものである。
 第3項については、国民が財政の実態を把握するには、複式簿記の導入が必要である。日本の公会計は江戸時代の大福帳のような単式簿記のままである。そのため、日本全体でいくらの資産と負債があるか全く分からない。それを放置したまま、郵政民営化だ、年金だ、増税だ、小さい政府だと言っているのは、おかしい。
 複式簿記に変更して、ストックとフローの増減を連動させ、一般会計と特別会計・特殊法人会計・認可法人会計を連結させる。それが第3項である。こうしなければ、財政の透明性が得られない。
 私は、憲法の条文から財政の透明性を打ち出さないと、国富に寄生して私利私欲をほしいままにする悪質な政治家や官僚の行動を止めることができないと思う。
 第4項は、愛知和男氏の提案に基づく。ほぼそのまま採用した。前条において主語をはっきりさせるための修正を行ったが、全体に財政の章では、内閣と国会、行政府と立法府の関係を明示すべきと思う。

 次に、予算案が年度内に成立しなかった場合について定めておく必要があると思う。自民党案は、以下のように提示している。

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●自民党案

(予算)
第八十六条 (略)
2 当該会計年度開始前に前項の議決がなかったときは、内閣は、法律の定めるところにより、同項の議決を経るまでの間、必要な支出をすることができる。
3 前項の規定による支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。 
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 基本的にこれでよいと思う。これに非常事態における内閣の責任支出を定めておきたい。

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◆ほそかわ案

(予算不成立の場合の処理)
第百二十三条 当該会計年度開始前に前項の議決がなかったときは、内閣は、法律の定めるところにより、同項の議決を経るまでの間、必要な支出をすることができる。
2 前項の規定による支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。 
3 第十九条に定める非常事態宣言が発せられたとき、国会召集の不能または余裕のない場合は、内閣の責任支出を認め、事後に国会の承認を求めるものとする。
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