ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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憲法改正~信教の自由の3

2005-11-15 11:23:12 | 憲法
 信教の自由について、自民党の改正案では、昭和憲法の第二十条の第1項・2項はそのままである。第3項のみ修正を施している。

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●自民党案

(信教の自由)
第二十条 信教の自由は、何人に対しても保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
3 国及び公共団体は、社会的儀礼の範囲内にある場合を除き、宗教教育その他の宗教的活動をしてはならない。
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 昭和憲法の条文に対して修正を行っているのは、「国及びその機関」を「国および公共団体」に変え、「社会的儀礼の範囲内にある場合を除き、」という文言を補い、「その他のいかなる宗教的活動」から「いかなる」を取っている。
 この修正は、明らかに限定分離説に立っており、憲法の条文を改正して、厳格分離説による曲解を防ぐ意図があるものと思う。私は、基本的にこの考え方に賛成である。

 次に、第1項にある「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない」という文言をどのように解釈するか。それによっては、改正の必要を生じる。現実問題として、公明党という事実上の宗教政党があり、連立与党になって、国の行政を行っている。わが国はデモクラシーの国家ゆえ、今後、選挙で第1党となることも理論的にはあり得る。一体、「政教分離」という考え方の発祥の、ヨーロッパではどうなのだろうか。  
 イタリアでは第二次大戦後、「旧キリスト教民主党」が第一党を長く占めた。ドイツも長期政権だった保守党の名は、「キリスト教民主同盟(CDU)」である。現在の連立政権もCDUが中心となっている。スペインでも「キリスト教民主党」が政党の自由化決定とともに、真っ先に誕生した。これらのキリスト教政党は、キリスト教内の特定の宗派ではなく、広い意味でのキリスト教を政治理念の根本に置いている。

 もしこのような国々を基準に考えれば、宗教政党が政権を担っても、「政教分離」の原則に違反しないことになる。ただし、創価学会は、仏教の一宗派である日蓮正宗の在家団体である。一宗派の、またその一部の信徒集団のみで政党を結成し、それが国政に影響を与えているという点では、西欧にも例がないと思う。
 公明党は現在、連立与党の一角を占めている。それによって、宗教団体が間接的とはいえ、政治上の権力に参加し、一定程度行使していると見ることができる。外国人参政権付与法案や人権擁護法案には、創価学会の教勢拡大の意図があると見られる。何度か国会で「政教分離」の問題が問われはしたが、司法において憲法問題として本格的に問われるには、いたっていない。

 私は、もし宗教団体の政治活動を憲法が規制する場合、何を規制するのか、もっと絞り込む必要があると思う。宗教者にも、政治的な自由は保障されねばならない。しかし、選挙によって、宗教団体が事実上、国家権力を掌握し、権力の行使によって、国民にその信仰を強制するようなことになっては、いけない。そこで、憲法に規定すべきは、宗教団体が政治上の権力を行使して、その特定の宗教または宗派の信仰を、国民に強制してはならないことが、第一となると、私は思う。
 次に、第二としては、仮に宗教政党が第1党となり、その政党から首相を出る場合となっても、政府及びその機関は特定の宗教または宗派の活動をしてはならないことだと思う。この際、行政と司法の関係が、非常に重要になる。
 私は、独立の憲法裁判所を新設すべきという意見を持っている。こうした問題を審査できる機関としても、憲法裁判所が必要だと思う。

 上記のような考えをもって、次回は自民党以外の改正案を次に見てみよう。