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ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

「パル判決書」を世界に発信

2009-07-28 06:26:51 | 歴史
 「史実を世界に発信する会」(代表 加瀬英明氏)は、7月24日、渡部昇一氏による『パル判決書の真実』の英訳全文をサイトに掲示した。また同時に世界のマスコミ・学者・政治家等に案内文を発信した。 
 下記は、同会による通知である。英語を話す外国人を友人・知人にお持ちの方は、ぜひご活用願いたい。

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http://news-hassin.sejp.net/?eid=1265053

2009.07.24 Friday
author : 発信する会:サイト管理者
SDHF Newsletter No. 16: 『パル判決書の真実』(渡部昇一)英訳全文をアップ

 『パル判決書の真実』(PHP)の序文で渡部先生は「東京裁判についてはもう知る必要がない。われわれが知る必要があるのは『パル判決書』のみである。」と書いています。
 『パル判決書』こそは、マッカーサー自身が認めた東京裁判の誤りを先行的に指摘した書であり、大東亜戦争、昭和史の真実を述べた書でもあります。
 700ページを越える『パル判決書』の重要なポイントを、判決書からの直接引用によってまとめ上げたのが『パル判決書の真実』です。この英訳版によって、世界の心ある人々に『パル判決書』を知ってもらい大東亜戦争の真実を知ってもらえるものと期待しています。
 発信する会のサイトに掲載するとともに、下記の案内を世界のマスコミ・学者・政治家等に発信しました。               

 史実を世界に発信する会 茂木


 The Tokyo Trials and the Truth of “Pal’s Judgment”

Of the eleven judges at the Tokyo Trials, only Radhabinod Pal had specialized in international law. Basing his position strictly on the law and rules of evidence,
he maintained that the Tokyo Trials were in error. He wrote a dissidenting judgment, in which he concluded that “each and everyone of the accused
must be found tnot guilty of each and every one of the charges in the indictment and should be acquitted of those charges.”
Prof. Watanabe introduces the major points of the 700 page “Judgment” by directly quoting Pal’s words in his book “The Tokyo Trials and the Truth of the Pal’s Judgment.”
You can read summary and the whole text at our site:

Summary: http://www.sdh-fact.com/CL02_1/63_S2.pdf
The whole text: http://www.sdh-fact.com/CL02_1/63_S4.pdf

Any questions are welcome.

Sincerely,

MOTEKI Hiromichi
Deputy Chairman and Secretary General
Society for the Dissemination of Historical Fact
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現代の眺望と人類の課題134

2009-07-11 08:52:56 | 歴史
 本シリーズは、今回をもって一旦休止する。

●郵政民営化をやめ、日本のための経済政策を

 郵政民営化法は、民営化後、3年ごとに見直しを行なうことを定めている。「かんぽの宿」売却問題をきっかけに、郵政民営化は根本的に見直すべきである。
 私は、小泉―竹中政権による郵政民営化に反対した。小泉―竹中政権の郵政民営化案は、途中から郵政公社を株式会社にし、郵貯・簡保345兆円を市場に出すことに狙いが絞られた。推測していた通りだった。これが強行されれば、国民の貴重な資産はアメリカに奪われる。再検討しなければ、日本が危ないと私は判断した。
郵政民営化を進めると、日本経済は従米化を一層進めることにある。そして、日本経済が弱体化し、企業や銀行の株価が下がりきったところで、アメリカの投資家が、次々に日本企業や銀行を掌中に収めていく。濡れ手に粟とはこのことだろう。その時、狙われている最大のごちそうが、民営化されたゆうちょ銀行株式会社ということになる。これまで行われてきた郵政民営化は止め、根本的に再検討すべきである。
 20世紀半ば第2次世界大戦では、米英蘭ソ等による国家の連合体が、連合国として日本と対戦した。それがわが国の戦った大東亜戦争である。この戦争でわが国は大敗した。これに比し、20世紀末から21世紀初頭にかけての大東亜経済戦争では、米英蘭等の所有者による資本の連合体が日本と対戦した。今回の戦いにおいても、わが国の為政者は、大東亜戦争の時と同じ失敗を繰り返した。大東亜戦争における「失敗の本質」を把握せず、敗戦の教訓を学習せず、また同じ失敗を繰り返しつつある。
ここで過ちに気づき、わが国のあり方を正さないと、日本をアメリカ型社会に改造する改革が徹底的に進められてしまう。日本の伝統や文化を考慮せず、アメリカ的な自由主義・個人主義の価値観を押し付け、自由競争・市場万能・訴訟本位の社会に変えようとする動きを止めなければならない。

●日本の改革は日本人自身が自主的に行わなければならない

 こうしたなか、2008年(平成20年)9月、アメリカ発の世界経済危機が起こった。日本を全面的に占領するはずだったアメリカのほうが破綻した。前年表面化したサブプライムローンの危機をきっかけに、金融機関が次々に経営危機や倒産に陥り、アメリカ経済が重大危機に陥った。そのため、日本占領計画は頓挫した。日本は危なかった。無理に無理を重ねてきたアメリカが破綻したから、日本は、窮地を免れたと私は見ている。これを奇貨として、日本は主体的な経済政策を立案・実施すべきである。
 世界経済危機は、1980年代以降の強欲的・賭博的資本主義の誤りを明らかにした。さらに、近代資本主義の根本的な問題点を掘り下げて検討する機会ともなった。私は、資本主義において、生産・消費だけでなく流通・金融の重要性を強調する者だが、とりわけ貨幣経済の仕組みこそ問われねばならないと考える。近代資本主義を資本主義たらしめてきたのは、17世紀西欧に発生した部分準備金と債務通貨のシステムである。そのシステムが利潤最大化のために極限的な形態に達したのが、ドルの不換紙幣化後の通貨制度である。それゆえ、部分準備金と債務通貨のシステムにまで、改革は進めなければならない。これは、資本主義を改革し、新しい経済システムを生み出す世界的な大改革につながるだろう。

日本の改革は本来、日本人が自らの意思で行わなければならないものである。幕末の日本も危機だった。迫り来る欧米列強を前に、わが国は植民地化される恐れがあった。しかし、日本人は、この危機に発奮し、自らの伝統に基づいた維新を成し遂げ、新しい国家を築き上げた。そのことを思い起こそう。
自らに潜在する自律能力を発揮するならば、日本人は、自国の伝統・文化を保守しながら、日本の改革を進めることが可能である。それには、公務員たる政治家・官僚が、まず国民に範を示さねばならない。それができるかどうかに、日本の将来はかかっている。党利省益や私利私欲ではなく、日本の運命、日本の将来という観点から、判断を誤らないようにしてもらわねばならない。
 その為政者を動かすものは誰か。国民以外にない。今こそ日本人は日本精神を取り戻し、日本再生に立ち上がらねばならない。国民一人一人が、国の運命と自分の運命は不離一体であることに目覚める時、新しい維新が始まる。日本の再建は、単に日本人のためではなく、人類全体にとって、極めて重要な意味がある。文明を転換し、物心調和、自然調和の文明を創造するために、その指導原理を内在した日本の再建は、必要不可欠の課題である。

●本シリーズについて

 拙稿「現代の眺望と人類の課題」は、第2次世界大戦から今日までの世界の動きを眺望し、人類の課題を確認することを目的とする。途中まで書いたところで、日米の経済問題を中心として記述を補足した。
 ここで一旦休止し、別の連載を行なう。その連載はエマニュエル・トッドに関するもので、本シリーズと響き合う内容となる。トッド論を終えてから、時期を見て、改めて本シリーズを再開する予定である。

現代の眺望と人類の課題134

2009-07-04 08:47:01 | 歴史
●宮内義彦にもロックフェラーの影

 「かんぽの宿」の売却で宮内オリックスに、莫大な利益を供与しようとしたのが、日本郵政の西川善文社長である。西川氏を日本郵政に送り込んだのは、竹中郵政民営化担当相(当時)だった。西川氏については「ゴールドマン・サックスの代理人」という見方があることを先に書いた。西川氏が社長となった日本郵政は、郵貯・簡保の資金のうち、20兆円の運用を、ゴールドマン・サックスに委託している。今後、委託金額が増大していくことが予想される。西川氏は、GSを通じて、ジェイ・ロックフェラーとロスチャイルドとの強い結びつきを持っていると見られる。
 一方、西川氏と「かんぽの宿」の譲渡で結託していた宮内氏のほうはどうか。宮内氏には、デイヴィッド・ロックフェラーの影がある。宮内氏は、デイヴィッドが創設した三極委員会(TC)の会員である。TCについては、別の項目に書いたが、アメリカ主導で新たな世界秩序を形成しようとするデイヴィッド・ロックフェラーの構想の産物である。欧米支配者集団の排他クラブ的な組織であるビルダーバーグ・クラブと違い、日本人を会員に含むのが特徴である。TCは、近年日本だけでなくアジア諸国をも取り込んでいる。
 デイヴィッド・ロックフェラーは、グローバリズムすなわち世界資本主義的な地球統一主義の唱道者である。グローバリズムの経済思想は、経済的自由主義であり、市場原理主義である。

 デイヴィッド・ロックフェラーのTCの会員である宮内氏は、市場原理主義の信奉者として知られる。自由主義を経済において徹底しようとするのが、市場原理主義である。宮内氏は、「市場経済による競争社会は強いものが弱いものを取り込む弱肉強食の社会ではなく、優れたものは消費者に支持され、劣ったものは消費者に支持されず消えていくという当たり前の社会、優勝劣敗の社会である」というのが持論である。
 市場原理主義による規制緩和を理論的に推進したのが竹中平蔵氏だとすれば、その理論を実現するために、具体的なテーマを設定して規制緩和に肉付けをし、民間人として正当化したのが宮内義彦氏だった。小泉―竹中政権の構造改革は、宮内氏という経営者がいたことで、現実化・具体化したのである。
 政府中枢にあった竹中平蔵氏のアメリカ人脈は、ロックフェラー財閥につながっていた。ロックフェラーを初めとする米欧の巨大国際金融資本の意思を体現して、日本の構造改革を進めたのが、竹中氏である。一方、民間の側にあった宮内氏もまたTCの会員として、ロックフェラー財閥とロックフェラーを初めとする米欧の巨大国際金融資本に人脈がつながっている。

●国を売って私利を得る買弁的日本人

 宮内氏は市場原理主義に基づく持論を政府の審議会で説くことで、規制緩和・民営化を進め、外資の日本進出を容易にした。それによって、宮内氏は自らの利益を拡大した。すなわち、宮内氏は、「アメリカによる日本改造」への協力者となることで、分け前に預かってきたのである。宮内氏は、外資が参入できる場所を拡大するとともに、自分の会社に新たなビジネスチャンスを作ってきた。こうした宮内氏のように、米欧の巨大国際金融資本に仕える日本人がいることで、日本の売国が進められている。竹中氏も同様である。郵政民営化は、日本売国の過程における過去最大の出来事なのである。
 19世紀、欧米諸国の植民地と化したシナでは、外国資本への奉仕によって利益を得、自国の利益を抑圧するものを、買弁と言った。これを一般化して、植民地・半植民地において、外国帝国主義の利益に奉仕する立場・行動・態度を、買弁的という。現在のわが国は、法的には独立主権国家である。しかし、その実態は、戦後一貫してアメリカへの従属国的な状態にある。そして、さらに、1990年代からわが国はアメリカへの従属の度合いを強めてきた。それは、買弁的な政治家・企業家・学者・ジャーナリスト等の活動による。政治家における小泉純一郎氏、企業家における宮内義彦氏、学者における竹中平蔵氏は、中でも最も買弁的な日本人と言えよう。

 政民営化を実現した後、アメリカが次に日本に強く求めているものは、健康保険や医療制度、教育等の民営化・自由化である。この点は、関岡英之著「奪われる日本」(講談社新書)や本山美彦著「売られ続ける日本、買い漁るアメリカ」(ビジネス社)に詳しい。アメリカは日本に対し、混合診療や株式会社による病院経営の解禁、刑務所等の政府業務の民間委託等を要望している。
 宮内氏は、小泉内閣の「規制改革・民間開放推進会議」という審議会の議長でもあった。この審議会は、アメリカの要望に応じて、規制緩和や民営化を一層広く推進する場となっている。このままこの動きを許せば、日本はアメリカに完全に従属し、徹底的に改造されてしまうだろう。

 次回に続く。


現代の眺望と人類の課題132

2009-06-26 10:13:00 | 歴史
●宮内オリックスに「かんぽの宿」を投売り寸前

 「かんぽの宿」は、土地・建物合わせて総額2402億円で作られた。日本郵政は、「かんぽの宿」等の計79箇所の施設を、108億8600万円で、宮内善彦氏がグループの総帥の座にあるオリックス不動産に売却しようとした。郵政公社は03年(15年)の発足時、これらの施設を1726億円で国から引き継いだ。その後、日本郵政が引き継いで入札にかけるまでの5年半の間に、8回も値下げしていた。08年9月の時点では簿価は123億円となっていた。
 しかし、08年(20年)2月に「かんぽの宿」売却のアドバーザーとなったメリルリンチ日本証券は、日本郵政との間で、成功報酬は売却金額の1.4%または6億円かの高いほうの金額とするという契約を結んでいた。428億円以上で売却しないとそれだけの報酬金額にならない。それゆえ、日本郵政とメリルリンチの間では、「かんぽの宿」等の資産価値は428億円程度という共通認識があったことがわかる。

 国会で「かんぽの宿」が問題になった当初、日本郵政は、譲渡は「競争入札」と説明していた。しかし、国会で追及されると、西川社長は競争入札ではなかったと認めた。「かんぽの宿」売却問題が発覚した後、大阪市のある不動産会社は、400億円で購入したいと手を挙げていたが、入札の予備審査の段階で外されたことを明らかにした。
 日本郵政とメリルリンチの間に資産価値は428億円程度という共通認識があったようだが、400億円は、それに近い数字である。それだけの金を出して買いたいという希望者がいるのに、それを外して約4分の1の金額で他に売るのは、普通ではありえない話である。
 入札とは、少しでも高いところに売るものである。しかも、売却するのは、国民の金で作った施設であり、実質的に国の財産である。「出来レース」にしても、ひどすぎる。仮に400億円で落札されるべきものが、109億円で落札されたとすれば、その差額は291億円にもなる。
 
●郵政民営化の見直しで、日本の元気を取り戻そう

 「かんぽの宿」は赤字経営だったが、70施設の平均客室稼働率は7割以上ある。それでいて赤字となっていた原因は、簡保加入者の福利厚生を目的とする公的施設なので、利用料金を低く抑えていたからである。料金を上げるなど、収益性を追及すれば、黒字に転換する可能性はある。そうした物件を、ただただ払い下げのように民間に激安で譲渡するのは、経営感覚が疑われる。
 しかもこの激安譲渡には、特大のおまけがついていた。オリックス不動産に一括譲渡されようとしていたのは、「かんぽの宿」70箇所だけではなかった。売買契約には「かんぽの宿等の各施設に附帯する社宅等の施設及び首都圏社宅9施設を含む」とされていた。そのうち首都圏にある9つの社宅は、大半が駅から徒歩圏内に立地し、土地も広いという。不動産調査会社によると、これら9物件の合計は、約47億円になるという。この金額は、「かんぽの宿」の売却総額の43%になる。支払金の109億円の43%にも当たる。激安の上に、特大のおまけというのは、このことである。

 2009年(平成21年)1月、当時の鳩山邦夫総務相は、オリックス不動産に「かんぽの宿」を一括譲渡することに反対する方針を明らかにした。オリックスの会長でグループのCEOは、宮内義彦氏である。宮内氏は、上記のような法外な利益を、自らが推進した郵政民営化によって手にしようとしていたのである。「現代の政商」という宮内氏のあだ名は、言い得ている。
 政府は「かんぽの宿」の売却を止めた。それは問題を明らかにするためではない。追求が拡大すると、政界・財界に重大な影響が出るのを防ぐためだろう。宮内氏の疑惑が追求されれば、郵政民営化利権が、いっそう暴露される。宮内氏は「ミスター規制緩和」と呼ばれ、「規制改革の司令塔」「小泉改革の旗振り役」だった。小泉元首相と竹中元郵政民営化担当相の責任が追求される。さらに、もっと大きな構図が明らかになるだろう。宮内氏は「ハゲタカ外資の総代理人」でもあるからである。
 本稿に書いてきたような構図、つまり郵政民営化を強要したアメリカと、それに服従した日本。こうした日米関係を生み出した戦後の日米関係。「大東亜経済戦争」における日本の敗北と対米再従属。巨大国際金融資本による旧長銀の買収。利権に預かりながら、日本の売国を進めるわが国の一部所有者・経営者の集団の存在等を確認できるだろう。
 日本の再建のためには、郵政民営化の見直しによって、日本に巣くうガンの病巣を明らかにし、ガンの毒素を排出して、日本の元気を取り戻さなければならない。

 次回に続く。

現代の眺望と人類の課題131

2009-06-20 09:35:28 | 歴史
●「ミスター規制緩和」「現代の政商」

 宮内義彦氏は、2001年(平成13年)小泉内閣が成立すると、総合規制改革会議の議長となった。04年から07年(16~19年)までは、規制改革・民間開放推進会議の議長を務めた。宮内氏が政府の審議会に参加した1995年(7年)以来、首相は何人も替わった。しかし、宮内氏は10年以上、一貫して規制緩和と民営化を推し進めてきた。人は彼を「ミスター規制緩和」と呼ぶ。

 宮内氏は「規制改革の司令塔」であり、「小泉改革の旗振り役」だった。
 小泉―竹中政権の5年間、「官から民へ」のスローガンのもと、規制緩和や民営化政策が強力に進められた。6000項目以上にのぼる規制緩和が推進された。規制緩和と民営化政策は、自民党による政界・官界・財界の癒着を断ち、日本の旧弊な体質を変える画期的な政策であるかのように、国民の多くには見えただろう。
 しかし、その実態は、先に書いたように、外資の要望によって外資の進出を許し、日本のアメリカへの再従属化をいっそう進めるものだった。またその結果、日本の社会に生じたものは、経済的な格差の拡大、それに伴う自殺や殺傷事件、家庭崩壊等の多発だった。その過程で、規制緩和や民営化政策は、日本の内部に新たな利権を生み出し、一部の企業や投資家を潤した。この利権を最大限に追及した者こそ、宮内だった。

 宮内氏は、政府の審議会のトップとなり、規制の緩和・撤廃を、第三者・有識者の立場から強く、また具体的に要望した。その一方で、規制緩和が実施されると、緩和された分野に投資をして、新会社を立ち上げ、利益を上げていた。たとえばオリックスは、規制緩和でトラック、タクシーの事業用リース(賃貸)車両が解禁されると、リース業界のトップとして恩恵を受けた。また製造業への労働者派遣を解禁した04年(16年)の労働者派遣法改正も、規制改革会議が推進したものだったが、オリックスは人材派遣会社の大株主となって利益を上げた。また、オリックスは、医療分野の規制緩和により、自由診療の高度医療の株式会社参入が認められると、オリックスはその第1号の株式会社の主要株主となって、事業を展開している。
 政府に規制緩和を求める民間人の中心人物が、規制緩和で儲かる事業をして、莫大な収益を得る。規制緩和に関するインサイダー情報をつかみ、その情報を使って儲けを図っていたのである。宮内氏が、現代の「政商」といわれる所以である。政商の生みの親は、小泉元首相だった。小泉政権誕生が、宮内オリックスの急成長のきっかけとなったのである。

 こうした宮内氏の利権追及がついに社会問題化したのが、「かんぽの宿」の問題であると私は思う。宮内氏は、小泉―竹中政権の郵政民営化政策を民間の立場から支持・推進した。そして、民営化された日本郵政が「かんぽの宿」を売却しようとした先が、宮内氏のオリックス不動産である。ブッシュ子に追従した小泉元首相と「外資の手先」と批判された竹中元郵政民営化担当相が生み出した郵政民営化利権に、宮内氏のオリックスが預かったという構図である。
 オリックスというと、日本の企業のように思うが、実態は外国人持ち株比率が50%を超える外資系企業である。宮内氏は、外資系企業に雇われている日本人経営者なのである。

●竹中大臣が叩き売りを可能とする附則を押し込む

 2009年(平成21年)1月、当時の鳩山邦夫総務相は、宮内のオリックス不動産に「かんぽの宿」を一括譲渡することに反対するという方針を明らかにした。鳩山氏は、売却に不正があった場合には「郵政民営化自体に疑問が出てくる」と指摘した。民営化したとはいえ、日本郵政の株式はすべて国が保有している。それゆえ、「かんぽの宿」は、実質的には国の財産である。売却は、国民にオープンな手続きの下で行うべきなのに、入札の詳細が公開されず、「出来レース」と受け取られる状況だった。そこが追求されれば、郵政民営化そのものが問い直されることになる。
 私は、辞任した鳩山大臣が一括譲渡に反対したのは、法と正義によるものとは見ていない。鳩山氏は郵政民営化賛成派である。郵政民営化をよきものとし、民営化を正当化したかったのだろう。だから、鳩山氏は「かんぽの宿」問題が郵政民営化そのものの見直しへと拡大しないように、動いたものと推測する。見直しが拡大すれば、批判は郵政民営化を推進した政治家に及ぶ。さらに自民党の政権基盤を揺り動かす。鳩山氏の行動は、そうならない範囲で行動だったと思う。

 実は04年(16年)9月に閣議決定された「郵政民営化の基本方針」には、「郵便貯金関連施設事業、簡易保険加入者福祉施設事業に係る施設、そのほか関連施設については、分社後のあり方を検討する」としか書いていなかった。その後も、郵政民営化準備室が国会議員ら向けに作った説明資料でも、これらの施設を譲渡・廃止とは書いていなかった。ところが、成立した郵政民営化法案の附則には、日本郵政は郵貯や簡保の施設につき、「譲渡又は廃止等の業務を行うものとする」と明記してあった。
 この附則を押し込んだ者は誰か。担当責任者は、当時の竹中大臣である。竹中氏が、郵政民営化法案に外資への叩き売りが可能となる附則を押し込んだのである。そして、当然、当時の小泉首相はその動きを承知していただろう。

 次回に続く。


現代の眺望と人類の課題130

2009-06-13 08:51:58 | 歴史
●日本郵政・西川社長の進退問題

 日本郵政の西川社長の進退問題は、6月12日鳩山邦夫総務大臣が辞任するという結末になった。鳩山氏は、西川氏の責任を問い、社長再任を認可しない意思を明らかにしていた。これに対し、麻生総理大臣は、西川氏の続投を認める方針を表した。自説を変えない鳩山氏は、自ら内閣を去る道を選んだ。
 日本国民の多くは、小泉-竹中政権が画策した郵政民営化を、国民にとって有益なものと思っている。郵政選挙で小泉自民党に投票し、歴史的大勝を実現したのは、有権者大衆である。小泉純一郎氏を継いだ安部晋三、福田康夫、麻生太郎の歴代首相は、郵政民営化に賛成し、民営化路線を継承・推進する立場にある。だからこそ、彼ら総理総裁となり得た。現在の自民党は、郵政民営化=私営化の真の問題点を隠すことによって成立している。特にアメリカ資本の圧力を深く問う動きを封じることでしか、自公連立政権は存続できない。これが、わが国日本の現状である。日本の再建は、郵政民営化を問うこと抜きに、なし得ない。

 事の発端は、2009年(平成21年)1月に浮上した「かんぽの宿」売却問題である。この問題は、郵政民営化を根底から揺るがすマグマを含んでいた。
 「かんぽの宿」とは、簡易保険による保養宿泊施設であり、郵政民営化までは「○○保養センター」が正式名称だった。施設は、全国に70箇所ある。08年(20年)の年末、日本郵政の西川社長は、「かんぽの宿」及び関連施設、計79箇所をオリックス不動産に一括譲渡しようとした。
 これに対し、09年(21年)1月6日鳩山邦夫総務大臣は、一括譲渡に反対の方針を表明した。なぜオリックスなのか、なぜ一括譲渡なのか、なぜ不動産価格が急落しているこの時期なのかと、鳩山氏が日本郵政に問い合わせたところ、納得のいく説明がなかったという。その後、この問題は、西川社長の進退問題へと発展した。しかし、冒頭に書いたように、鳩山大臣のほうが辞任するという結末となった。

●郵政民営化利権に預かろうとした宮内義彦

 「かんぽの宿」の一括譲渡先とされたオリックス不動産の親会社は、リース業最大手のオリックスである。オリックスの会長でグループCEOの座にあるのは、宮内義彦氏である。宮内氏は、政府の規制改革会議の議長を務め、郵政民営化を推進した。鳩山氏は、その宮内氏の企業に「かんぽの宿」を一括譲渡することは、「出来レース」と受け取られる可能性があるとして反対した。宮内氏は、政府の審議会のトップの座にあることで、郵政民営化の推進に深く関与した人物である。
 宮内議長のもと、総合規制改革会議は、公的宿泊施設は廃止するか、民間に譲渡すべきという議論をした。04年(16年)8月の報告書で、公的施設の廃止、民営化を掲げた。それを推進した人間が、民営化の後に自ら入札に名乗り出ていた。宮内氏は「かんぽの宿」の一括譲渡によって郵政民営化=私営化による利権に預かろうとしていたのである。
 ここに、郵政民営化利権の存在が、天下に暴露された。しかし、これを覆い隠し、封じようとする動きが活発に行なわれている。

 宮内義彦氏は1958年(昭和34年)に、米国ワシントン大学に留学し、MBAを取得した。帰国後は、商社のニチメンに就職し、渡米してリース事業や企業買収のノウハウを身につけた。この間に、宮内氏はアメリカの政財界に人脈を作った。
 オリックスの社長となった宮内氏は、1980年以降、不動産融資と米国仕込みの企業買収(M&A)に力を入れた。オリックスはバブル崩壊による影響をあまり受けることなく、パチンコ店やラブホテルを買収し、消費者金融向けの融資を手がけ、韓国系銀行等の顧客を吸収するなどして、業務を拡大した。そして宮内氏は、政府の審議会に入り、規制緩和・規制改革を進める民間の騎手となった。
 宮内氏は、オリックスの社長をしていた1990年代半ばから、政府の諮問機関に参加し、民間人として規制緩和と民営化を推進した。95年(平成7年)村山内閣で行政改革委員会規制緩和小委員会の参与となったのを始めとして、橋本・小渕・森の歴代内閣で規制緩和、規制改革の委員会の委員長を務めた。この時期は、アメリカが日本に対して対日経済戦争を仕掛け、94年(6年)から年次改革要望書を出して「アメリカによる日本改造」を進め、98年(10年)にわが国が「第二の敗戦」にいたった時期と重なる。
 外からの日本への圧力とともに、日本の中でそれに呼応して、外資の参入に道筋をつける動きがあった。その先頭に立っていたのが、宮内氏なのである。

●旧日本債権信用銀行が外資に渡る

 オリックスが世間の注目を受けたのは、日本債券信用銀行の買収の時である。日債銀は、長銀とほぼ同時期である1998年(10年)12月に経営破綻して、一時国有化された。やはり公的資金を3兆2000億円投入した後、2000年(平成12年)に投資グループに売却され、翌年「あおぞら銀行」に改称された。旧長銀の買収の時と同様、ここでも「瑕疵担保条項」がつけられた。宮内氏はこの買収に名乗りを上げた。他に動いたのも日本の投資家だったので、旧長銀のときほど話題にならなかった。しかし、ここでもわが国の国益を損なう重大なことが起こっていた。
 旧日債銀の買収には、宮内氏とともに、ソフトバンクの孫正義会長が乗り出した。02年(14年)におけるあおぞら銀行の株主比率は、ソフトバンクが49%、オリックスが15%だった。ところが、03年(15年)孫氏は、サーベラス・グローバル・インベストメンツに持ち株を売り払った。あおぞら銀行がスタートしてまだ2年もたっていなかった。孫氏は500億円出して1000億円で転売したのだから、大儲けである。最初から外資に転売するつもりで日債銀の株を買ったのだろう。

 サーベラスは、ハゲタカ投資ファンドである。当時の会長は、ダン・クエール。ブッシュ父政権の副大統領だった人物である。サーベラスは、リーマン・ブラザーズ(2008年破産)とタッグを組んで、三井住友銀行に競り勝ち、あおぞら銀行の株式を買占め、62%を保有する筆頭株主になった。このサーベラスの日本法人であるサーベラス・ジャパンの顧問会議の議長が、オリックスの宮内氏なのである。宮内氏は、クエールとともにあおぞら銀行の取締役ともなっている。
 旧長銀の場合は、直接、外資の投資組合に売却されたが、旧日債銀の場合は、いったん日本の投資グループに売却された後、外資に売り渡された。この過程で、宮内氏は、外資が日本の銀行を買収することに協力し、それによって自社の利益を拡大したことが推測される。宮内氏が「ハゲタカ外資の総代理人」(副島隆彦氏)、「外資系企業の利益代理人」(横田一氏)等といわれる所以である。
 なお、サーベラスは現在、クエールが顧問に移り、ジョン・スノーが会長となっている。スノーの前職は、ブッシュ子政権の財務長官だった。経済閣僚のトップが、退任後、ハゲタカ投資ファンドの会長になって、強欲的な買収・転売をしているのである。しかも、その前任者は、アメリカ政府のナンバー・ツー、副大統領だった。こういう国の支配層が、わが国の資産を食い物にしているのである。そして、その分け前に預かっているのが、宮内義彦氏を始めとする私利私欲の権化のような日本人なのである。

 次回に続く。

現代の眺望と人類の課題129

2009-06-06 08:40:38 | 歴史
●ゴールドマン・サックスの代理人が日本郵政の社長に

 2006年(平成18年)10月に郵政民営化の準備企画会社「日本郵政株式会社」の初代社長に、西川善文氏が就任した。本年(2009年)、後に触れる「かんぽの宿」の一括譲渡問題で、西川氏の責任が問われ、社長職の留任を認めるかどうかが、大きな政治問題となっている。
 日本郵政の社長に西川氏を起用したのは、小泉内閣当時の小泉首相・竹中大臣である。西川氏は日本郵政に転ずる前、三井住友銀行の頭取をしていた。さらに前は住友銀行にいた。住友銀行は1986年(昭和61年)、ゴールドマン・サックス(GS)に対して5億ドル(約700億円)を出資し、証券業務のノウハウを学んだ。三井系のさくら銀行と合併して三井住友銀行となった。西川氏は、その頭取となった。
 西川氏は、2002年(平成14年)1月に三井住友銀行の持つGSの株式をすべて売却し、3000億円の売却益を得た。この年12月、西川氏は、当時GSのCEOだったヘンリー・ポールソンに付き添って、竹中平蔵大臣を訪問した。竹中氏は同年秋、金融担当相となり、不良債権処理を加速させる「金融再生プログラム」を策定し、05年(17年)3月末までに不良債権比率を半減させるよう、金融機関に求めていた。そのため竹中氏は、大手銀行と必ずしも友好的な関係にはなかったのだが、西川氏とは親密な関係にあった。

 三井住友銀行は、資本増強のため2003年(平成15年)に優先株を5000億円規模で発行した。そのうち、1500億円をGSが引き受けた。当時、三井住友銀行は、存続の危機にあった。旧三和銀行が金融庁から追い詰められて三菱東京フィナンシャル・グループに吸収合併された直後のことで、「次の標的は三井住友銀行だ」と言われた。頭取の西川氏は三井住友にとって極めて不利な増資引き受けをGSに頼まざるを得なくなったのである。ちなみに、明治時代から、三井はロスチャイルドと、三菱はロックフェラーとの関係が深い。
 もともとロスチャイルド系だった三井住友銀行は、GSと深い関係を持つようになり、やがてGSの下で動くようになった。西川氏は「ゴールドマン・サックスの代理人」とも言われた。そうした西川氏が日本郵政の社長になったのである。
 先に書いたように、ゴールドマン・サックスは、旧長銀の買収において、重要な役割を果たした。日本国政府のアドバイザーとなって、旧長銀の売却を進めた。リップルウッドやニューLTCBパートナーズに配置した同社の人脈を使って、日本から大きな利益を上げた。そのGSと、日本郵政の西川社長はつながっているわけである。
 ゴールドマン・サックスは、ロスチャイルドとロックフェラーが相乗りしている金融機関である。実質的なオーナーは、デイヴィッド・ロックフェラーの甥ジョン・デヴィソン "ジェイ" ロックフェラー4世と見られる。デイヴィッドとジェイの間では、世代交代の争いが行われているようだが、ジェイは、単独ではデイヴィッドに対抗できないので、ロスチャイルドと提携している。その提携の主要な機関の一つが、ゴールドマン・サックスなのである。
 私は西川氏を日本郵政のトップにすえた人事は、小泉元首相・竹中元大臣の個人的な判断ではなく、巨大国際金融資本の意向を反映したものと推測する。そこには、郵貯・簡保の資金を金融市場に引き出し、外資と買弁によって山分けしようという思惑があるに違いない。

●ロックフェラーを中心とした外資と日本の資本との戦い

 郵政の民営化=私営化を推進してきた政治家たちは、旧長銀を外資にただ同然で売り渡した政治家たちと重なる。従米売国の政治家によって、日本の金融的な隷属が徹底され、日本の伝統文化が破壊され、日本がアメリカの属州のごとき存在と化していく。経済的自由化は、合理主義の思想である。しかし、その理念を追求することで、日本を売り渡すことは、日本の自滅行為である。
 郵政民営化は、日米保険摩擦であり、アメリカの保険業界が簡保を狙って要望してきたものである。アメリカの十大保険会社のうち6社は、ロックフェラー系である。ロックフェラー系保険会社の筆頭は、世界最大の保険会社AIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)である。AIGの元会長モーリン・グリーンバーグは、デイヴィッド・ロックフェラーの影響下にあるCFRの副会長をしていた。日本に郵政民営化を求めるアメリカ保険業界を牛耳っているのは、ロックフェラー財閥なのである。

 私は、本稿で簡保の次は郵貯が狙われており、郵貯こそ最大の獲物だと書いてきた。ロックフェラー系を中心とするアメリカの金融機関は、日本の銀行を買収の対象としてきた。旧長銀は、見事に買い取られた。買収には、デイヴィッド・ロックフェラーが関わっていた。デイヴィッドは、改称後の新生銀行の取締役になってもいた。デイヴィッドらのアメリカの金融資本家が本当に狙っていたのは、旧長銀程度の規模の銀行ではない。日本を代表する大手銀行こそ、吸収合併の対象である。
 旧UFJ銀行は、三和銀行と東海銀行が合併して出来た銀行だった。三菱東京と三井住友の争奪の結果、現在は三菱東京UFJ銀行になっているが、UFJ銀行だった時に、デイヴィッド・ロックフェラーらが触手を伸ばしていた。当時の小泉首相は、UFJグループがデイヴィッド系のシティ・グループやハゲタカ投資ファンドのサーベラスに買収されないように、ブッシュ子政権と交渉した。その結果、シティ・グループとの関係の深い東京三菱フィナンシャル・グループがUFJを買収することで、米国側と妥協したと見られる。
 この件について、副島隆彦氏は著書「重税国家日本の奈落」(祥伝社)に次のように書いている。
 「UFJ(旧三和銀行・鴻池財閥系)が解体され、旧三和からたくさんお金を借りて不良債権になっていたダイエーが潰された。ミサワホームも潰されてトヨタグループに乗っ取られた。だから本当の話は、UFJを無理やり潰すことによって、そこからお金を借りていた大企業群を、『借金の返済能力なし』と追い詰めて乗っ取らせる初めからの計画的な動きだったのである」「アメリカのUFJ潰しの最後の標的は、実はトヨタ自動車そのものであるとささやかれている」と。UFJ銀行を外資に買収されると、トヨタが外資に資金源を押さえられ、窮地に陥るおそれがあったのだろう。
 アメリカの代表的な銀行には、シティ・グループとJ・P・モルガン・チェイスがある。また2008年(平成20年)世界経済危機後、投資銀行から商業銀行に変わったゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーもある。これらの企業買収に巧みな外資系金融機関は、日本の大手銀行を狙ってきた。そして将来的に最大の目標物が、完全民営化=私企業化された場合の「ゆうちょ銀行」なのである。
 2008年世界経済危機で、デイヴィッド・ロックフェラーのシティ・グループをはじめ、アメリカの多くの金融機関は経営が悪化している。日本侵攻計画は頓挫した。これは、わが国にとって、僥倖である。この機をとらえて、郵政の民営化=私営化を見直し、わが国民の資産を守り、わが国の国益にかなった形に修正すべきである。

 次回に続く。

現代の眺望と人類の課題128

2009-05-29 09:28:31 | 歴史
●簡保の次は郵便貯金が狙われている

 簡保への攻撃は、それにとどまるものではない。簡保の次は、郵便貯金がある。これこそ巨大国際金融資本が狙う最大の獲物である。
 郵便貯金は、全国各地にある郵便局の窓口で預けられる。少額でできる簡易で安全な貯蓄手段となっている。元利払いを国が保証していたから、金が集まった。簡易保険も同様の理由で人気があった。かくして、日本の国民の個人金融資産1400兆円のうち、約4分の1が、郵貯と簡保に預けられている。郵貯228兆円、簡保117兆円、合計で345兆円である。
 郵貯の預金高は、簡保の資産の約2倍ある。その預金高は日本国内の銀行の総預金高にほぼ匹敵する。郵便・保険・窓口とともに分割されて株式会社になったことにより、ゆうちょ銀行は、世界最大のメガバンクとして誕生した。その規模は、シティ・グループの4倍である。国民の多くは銀行とともに郵貯を利用している。地方に行けば、預金は主に郵貯に預けている人が多い。郵貯は、日本国民の金融資産のうち、約半分を占めているのである。しかし、アメリカの要望に沿う形で、郵政民営化が強行されたため、国民の貴重な資産がアメリカに奪われる危険にさらされている。

 小泉―竹中政権の郵政民営化は、とにかく郵政公社を株式会社にし、郵貯・簡保345兆円を市場に出すという露骨な姿勢だった。竹中は郵政民営化担当大臣当時、郵貯・簡保の資金を市場に開放することが、日本経済の活性化になると説いた。安易な民営化は、国民の資産に外資が食いつけるよう、市場に引き出すものとなる。
 ゆうちょ銀行は、それ自体が、外資のM&Aの格好の対象となる。韓国は、IMFの管理下に入ってから、激しい吸収・合併によって主要銀行は3行のみとなった。そのうち2行は株の7割を外資が保有する。残り1行も6割近くが外資の保有となっている。
 わが国では、海外から日本への投資を促進する目的で、2006年5月施行の会社法に三角合併が盛り込まれた。三角合併は、外国企業が日本に設立した子会社を通して、日本企業を買収する手法である。そのまま施行する危険性を感じた政治家・経済人の動きによって、1年間凍結されたが、07年5月に解禁となった。これにより、外国企業は現金を調達せずに、自社の株式を対価として、日本企業を吸収合併することができる。そのため、三菱東京UFJ・三井住友・みずほのような大銀行ですら、外資に買収されないとは限らなくなっている。ゆうちょ銀行もまたそうした企業買収の対象となる。

●アメリカ資本のための郵政民営化

 アメリカは財政赤字に苦しんでいる。その赤字解消の期待をかけたのが、日本の郵政民営化だろう。345兆円の郵貯・簡保資金は米国の経常収支赤字の4年分に当たる。民営化で売り出される株式を買い占めて、民営化された持ち株会社の経営権を握れば、郵貯資金をこの赤字に振り向けることができる。従来もわが国は米国債を買うことでアメリカの帝国経済を支えてきた。アメリカはもっと多量の国債を日本に買わせようとするだろう。ゆうちょ銀行の経営権を握れば、会社の経営判断でそれができる。
 小泉首相は、ブッシュ子大統領との会見で、再三にわたって、郵政民営化を約束した。ブッシュ子も小泉に民営化を強く求めた。ブッシュ子は、アメリカの巨大国際金融資本の経営者である。その背後にいる金融資本家こそが、郵政民営化を望んでいたのである。彼らの中心には、デヴィッド・ロックフェラーがいた。
 日本の郵政民営化は、アメリカのための郵政民営化だったと私は思う。具体的に言えば、アメリカ資本のための民営化=私営化である。
 ちなみにアメリカでは、1950年代に郵便貯金を廃止する議論が興り、66年(昭和41年)に廃止された。そのために、ニューヨークのユダヤ系を含む大銀行が、全米の各州に子会社(現地法人)を作り、郵便貯金を自分たちの資金にしてしまった。それによって、ニューヨークの金融資本が、アメリカ全土を金融で支配するようになった。郵便貯金が廃止された結果、建国以来の支配階層であったWASP(ホワイト・アングロ・サクソン・プロテスタント)が衰退し始め、ユダヤ系を含む金融資本が勢力を振るう国になったのである。これと似たことが、今度は、金融属国・日本で繰り返されようとしている。

 次回に続く。


現代の眺望と人類の課題127

2009-05-23 09:26:45 | 歴史
●アメリカの保険業界が簡保の民営化を要望

 郵便局の金融資産と書いたが、アメリカが明示的に要望してきたのは、そのうち簡易保険の民営化=私営化である。しかし、簡保を民営化すれば、次は郵貯も対象とするのは、容易に予想される。
 まず簡保の話をする。郵政民営化を直接的に要望してきたのは、アメリカの保険業界だった。「年次改革要望書」がそれを示している。簡保の117兆円の資産が、米資保険会社が目をつけた獲物なのである。
郵便局の簡易保険は、少額でできる簡易な保険である。元金を国が保証していたから、安心して加入ができる。だから、人気があり、国民の多くが利用している。簡保に預けられている保険金の総額は、わが国の国内の保険会社の保険金の合計額に、ほぼ匹敵する。日本国民が保険にかけるお金の半分は、簡保に向いているわけである。そこにアメリカの保険業界が目をつけたのである。

 バブルの崩壊後、日本生命、住友生命、明治安田生命など、わが国の保険会社は、不良債権と低金利の影響で厳しい経営を強いられてきた。そこへ、アフラック、アメリカンホーム・ダイレクトなど、アメリカの保険会社が、ものすごい勢いで進出してきた。毎日何回となく、テレビ・コマーシャルが流れ、日本の保険と比べていかに有利かが視聴者の脳裏に刷り込まれる。自動車保険や医療保険など、どんどん顧客は外資に流れる。
 しかし、簡保は郵便局がやっている。実質的に、国営の保険だった。わが国の保険市場は、それによって半分は公営、半分は私営業というような状態にあった。日本の保険市場に進出する外資にとっては、簡保があることによって、進出できる範囲が半分に限られるわけである。
 アメリカの保険業界は、日本の簡保に対して敵意を剥き出しにし、公営としての優遇措置を廃止せよと圧力をかけてきた。アメリカ保険業界は、郵便事業と保険事業を切り離して完全に民営化=私営化し、全株式を市場で売却しろと要求してきた。簡保を解体することで、日本の保険市場を全面的に占領しようと図っているのである。それゆえ、郵政民営化の核心にあるのは、日米保険摩擦なのである。

●アメリカの圧力で郵政民営化法案は書き換わった

 アメリカは、郵政の監督官庁を移せ、とわが国に要求した。郵政3事業は総務省管轄だが、民営化すれば、簡保は純粋な保険会社になる。だから、金融庁の管轄下に移管せよ、というのである。アメリカは、公正取引委員会を内閣府に移させた。これも、アメリカ資本の進出の際に、政府機関を使って揺さぶりをかけるための布石だった。
 アメリカは、2000年(平成12年)の年次改革要望書で、所管庁を総務省から内閣府に移すよう要求した。総務省は郵政事業を管轄しているため、同じ傘下にある公正取引委員会が郵政民営化において中立に動くか疑わしい、というのが理由だ。この要望の出た3年後に、公取委の所官庁が変わった。
 郵政の民営化=私営化について、わが国の政府の郵政民営化準備室とアメリカ政府・関係者との協議が、2004年(平成16年)4月以降、18回行われた。そのうちの5回は、アメリカの保険業界関係者との間の協議だった。このことは、05年(17年)8月5日の郵政民営化に関する特別委員会で大門実紀史参議院議員の質問に答えた竹中郵政民営化担当相が、明らかにしている。どうして、わが国の郵政民営化を検討するのに、アメリカの保険業界と協議しなければならないのか。アメリカの保険業界が、わが国に郵政民営化を求め、圧力をかけてきたからである。
 05年(17年)3月に発表されたアメリカ通商代表部 (USTR) の「通商交渉・政策年次報告書」には、04年(16年)9月に閣議決定した「内閣の設計図」に「アメリカが勧告していた修正点が含まれている」と述べている。アメリカの勧告でわが国の郵政民営化法案の骨格が書き換えられたことが、米国政府の公式文書に記載されているのである。

 郵政事業が分割民営化されれば、切り離された新簡保会社は、一番先に外資の餌食になるだろう。アメリカの保険会社は、新簡保会社をM&Aによって傘下におさめることができる。不良債権で含み損の多い日本の保険会社は株価が安い。株式交換による三角合併なら、手に入れるのは、苦もないことだろう。
 郵政民営化の国際的側面を延べるに当たって、まず竹中平蔵元大臣について書いたが、日本国政府の中枢に送り込まれた竹中氏は、米国政府及びアメリカ保険業界を代弁する役割を忠実に果たしていたと考えられるのである。

 次回に続く。


「現代の眺望と人類の課題」のまとめ

2009-05-21 13:18:06 | 歴史
 拙稿「現代の眺望と人類の課題」は、当初の構想より分量が大幅に増え、まだ連載中です。そこで切りの良いところまでを仮にまとめ、私のサイトに掲載しました。読んでみたい方がおられましたら、次のページへどうぞ。

■現代の眺望と人類の課題
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion09f.htm

 左下のブックマークにリンクがあります。

 目次は次の通りです。

第1章 人類史の区分と現代の世界
第2章 勝者が支配する戦後世界
 (1)戦勝国による秩序
 (2)連合国としての国際連合
第3章 新しい国際経済体制
 (1)戦後の国際経済
 (2)金融による世界支配
 (3)現代の資本主義
第4章 米ソの冷戦
 (1)米ソ冷戦の構造
 (2)冷戦下の世界
第5章 アジア・アフリカの目覚め
 (1)アジアの解放と戦乱
 (2)諸文明の競合
 (3)中東が国際関係の焦点に
第6章 共産圏の矛盾・抗争
 (1)共産主義の罪過
 (2)共産中国の虚妄
第7章 アメリカの迷走
 (1)ベトナムという陥穽
 (2)ケネディ暗殺の闇
第8章 世界は大転換期に突入
 (1)人類存亡の岐路
 (2)石油をめぐる争い
 (3)アジアの興隆
 (4)成長への妨害
第9章 現代世界の支配構造
 (1)現代社会の集団構成
 (2)大英帝国永続の夢
 (3)王立国際問題研究所
第10章 アメリカを動かす外交評議会
 (1)覇権維持のための国際機関
 (2)政治・経済・外交・軍事に影響力
 (3)アメリカ帝国の頭脳
第11章 ビルダーバーグ・クラブ
 (1)欧米主導の世界を企図
 (2)西洋文明を延命させる力
第12章 アメリカ歴代政権を操る者
 (1)ケネディからニクソンを貫く組織
 (2)象徴的存在としてのキッシンジャー
第13章 ロックフェラーのグローバリズム
 (1)日本を取り込む三極委員会
 (2)ロックフェラー家の帝国
第14章 デイヴィッド・ロックフェラーの絶頂
 (1)ブッシュ家を押し上げたもの
 (2)スカル・アンド・ボーンズの人脈
 (3)クリントン、ブッシュ子も背後は同じ
第15章 9・11とアメリカの挫折
 (1)アメリカ政府が関与
 (2)ネオコンの画策と失敗
 (3)超大国を動かすシオニズム
第16章 21世紀アメリカの衰退
 (1)オバマの危うい挑戦
 (2)アメリカに寄生する勢力
 (3)文明の転換という課題