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西日本の豪雨災害

2018年07月10日 | ニュース・コメント

 今回の豪雨被害、平成に入って最悪だそうですね。特に岡山県倉敷市真備(まび)町の被害は甚大でした。災害に合われた方々には、心からお見舞い申し上げます。読者の方にもいらっしゃるかもしれません。


  3年前のちょうど今頃、私は家内と一緒に岡山県の倉敷と県央にあるのれんの街真庭に行きました。倉敷からレンタカーで高梁(たかはし)川に沿って北上したのですが、今回の豪雨で被害が大きかった真備は倉敷を出てすぐにある町です。洪水は南北に流れる高梁川と東西に流れる小田川が合流する地点の小田川に沿った真備あたりが最もひどかったようです。

  真備の洪水は大きな河川である高梁川に注ぎ込む小さな小田川の氾濫によるものですが、その理由はバックウォーター現象、つまり逆流だそうです。高梁川は漢字が読めなかったので、やけに印象に残っている川です。水量が多く急流の高梁川の水嵩が増したため、小さな小田川に逆流してしまいました。しかもその小田川、川底が周辺より高い天井川だったとのこと。上流からの流れが行き場を失って堤防を壊し氾濫。付近の浸水は一階の屋根を超え2階にまで達し、2階の天井裏まで逃げ込んだ方がいたそうです。

  真備の地名は他でもない天平時代、朝廷に重用された吉備真備(きびのまきび)にちなんで名づけられたとのこと。真備を通り過ぎてすぐ隣街が総社(そうじゃ)市で、そこには私が経営のアドバイスをしている中小企業の本社があります。小さいながらも特殊な技術を持つ優秀な企業で、東南アジアへの進出を目指し実現しつつある企業です。昨日やっと経営者の方と連絡が取れ、無事が確認できました。幸い被害は小さいとのことでしたが、周辺では交通の遮断などがあるため、復旧までには時間がかかりそうだとのこと。インフラだけでも早く復旧するといいのですが。

  それにしても今回の西日本豪雨、死者が100人を超えるとは本当に驚きですね。この真備のようなひどい水害や各地で山崩れなど、九州から四国を含む西日本全域が大きな被害を受けました。私の心配はこうした水害からの復旧の最中に地震が起こらないだろうかということです。弱り目にたたり目です。まさかとは思いますが、全くないとは言い切れないのが地震です。特に南海トラフの大津波を伴う大地震の確率の高さは尋常ではありません。最近大阪の地震をはじめ地震がとても多いので、起こらないようみんなで神様にお祈りしましょう。

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トランプでアメリカは大丈夫か15 貿易戦争5

2018年07月09日 | トランプでアメリカは大丈夫か?

     ついに戦闘開始ですね。トランプはいつもの高めの直球を、ボール球のつもりで投げたら相手の中国がそれを本気で打ち返してしまったのか、それとも最初からトランプも本気で戦おうとして戦争を起こしたのでしょうか。

  貿易赤字は本当にいけないのか、そもそも貿易とは何かについて単なる交易から解きほぐしてみます。

  トランプの頭の中には企業収支も貿易収支も赤字はいかん。黒字でないといかんという原理原則が染みついていて、赤字は損だと少しの疑いもなく信じています。

  多くの方も貿易は赤字より黒字がいいに決まっていると思われているでしょう。その考え方、必ずしも正しくはありません。意外に思われるでしょう。ちょっと面倒ですが、大事なことなのでなるべく簡単に説明を試みます。

  まずそもそも交易とは何かを考えます。こういう文章をあることろで拝見しましました。

>「取引」とはアップサイドを自分のものにしてダウンサイドを他人に押し付けることです。

  そうでしょうか。私は違うと思います。そもそも太古の昔から行われていた物々交換も現代の交易や海外との貿易も、双方ともに交換したほうが得だから交換するのです。一方が得で一方が損なら、誰も交換などしません。

  このことは今も昔も同じで、現代では物々交換しないのはおカネが代替してくれるからです。例えば、1万円のバッグを買うときに、買う人は自分の保有する1万円札を差出してバッグを買うほうが得だ。売る人は自分の作ったバッグを保有するより、それを差し出して1万円をもらったほうが得だと思うから売買が成立するのです。

  このことは、一つ一つの商品の売買の積み上げである国対国の貿易でも全く同じで、双方が得をするから貿易をするのであって、片方が得でもう片方が損することなどありえません。そのような取引は誰もしません。

  ここまでの議論、多くの方には釈迦に説法で申しわけありませんが、トランプには馬の耳に念仏なので困ります。

  しかし国と国の貿易では国際収支として赤字黒字の数字が出てきます。個々の交易は双方とも得をするのに、国際収支になると赤字と黒字という言葉を使用するため、あたかも会社の収支と同じに思えるので損だの得だのという議論になってしまう。会社の赤字はもちろんいけません。赤字では会社の持続性がなくなるからです。一国の収支も同様で、持続性を考えるなら赤字続きというわけにはいきません。

  ここまではまずご理解いただけますでしょうか。

  では国際収支ですが、世界全体を一国として見るとどうなるか。もちろん世界中を合算すれば赤字と黒字は同額なので、収支トントンになります。

  収支トントンだと世界レベルでは損得なしでしょうか。いいえ、違います。ここが大事なのですが、最初に申し上げた通り、もちろん全員が得します。双方得だから貿易したのですから。

  国際収支の差はそのままにはできません。それをどのように埋める、あるいは決済するのでしょう。基本的にはハードカレンシーで支払う、特にハードの中でも基軸通貨であるドルで決済します。もし赤字国が十分に決済通貨を持っていなかったら、双方合意のもと貸し借りを計上し、後払いも可能です。

  こうして世界は貿易によりみんなが得をして幸せになり、発展することができるのです。

  では赤字国はいつまでも借金生活を続けられるでしょうか。もちろん持続性はありません。相手がこの国はヤバイと思ったら、ツケでは買えなくなります。するとIMFに駆け込むか、買うのを我慢し、通貨価値を切り下げ、競争力を増して黒字を目指すことになります。

  ところが、アメリカは万年赤字ですが、ヤバイということはなく、IMFの支援を必要とするところまで行ったことがありません。80年代にラジカセや自動車を打ち壊して騒いだ時代から赤字続きですが、一度もヤバくないのです。何故か。

  それは言うまでもなく、基軸通貨ドルが自国通貨だからです。いくらでもドルを発行し、相手はいまのところドルを信用して持ちたがるので全く心配いりません。アメリカとの貿易で黒字を積み上げた日本や中国のような国はドルを大量保有しています。それを遊ばせず、アメリカ国の借金である米国債を買ってドルをアメリカに還流させたり、赤字の発展途上国に貸し付けたりして、バランスを取っています。

  ここで「アメリカがドルを発行する」というのは、必ずしも実物貨幣の発行とは限りません。帳簿上の借金でいいのです。日本国の外為勘定で米国債を買うのは現ナマによらず、ただ単に二国間で帳簿上の付け替えをしているだけです。

  日米に限らず、世界中の国々は世界中の国々とこうして決済、あるいは貸借関係を結びます。それによりモノやサービスが活発に国境を越えて世界の経済は活性化するのです。

  そしてアメリカはこの何十年、赤字ばかりですが、それで困ることはありません。先ほど申し上げた通り、基軸通貨のドルを赤字という手段で世界に供給し、それがあることで世界の交易が成立しているのです。

   逆に基軸通貨の国が黒字だと、世界は流動性不足に陥り、交易がスムーズにできなくなるのです。自国通貨のドルは世界中に欲しがる国があるので、赤字でも問題はありません。赤字=損と思っているおバカなトランプちゃんは、このことを理解できず、赤字イコール悪という企業経営の世界しか理解できません。

  なん度も言います。赤字を作り出す交易も、損得でいえば双方が得するから実行されるのです。アメリカ国民は他国から買うことで満足するので買うのであって、損なのに買っているのではありません。

  ここまでの議論をおさらいします。

1.  交易はいつでも双方が得だと思うから実行される

2.一国単位では黒字国赤字国はあるが、世界全体の国際収支は常にバランスしている

3.黒字国は赤字国をファイナンスすることで世界のバランスが取れている

4. 一国にとって赤字より黒字のほうが持続性があるのでよいのだが、アメリカは例外。基軸通貨国は赤字でないと世界に流動性を大量に供給できない

5.世界はドルが潤沢にないと交易するのに支障が出る


  わかりづらい話になりましたので、こよいはこころらで・・・

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トランプでアメリカは大丈夫か14 貿易戦争4

2018年07月04日 | トランプでアメリカは大丈夫か?

  事前のダメ予想を大きく覆した西野ジャパンにエールを送りたいと思います。

  楽しませてくれて、本当にアリガトウ!

 さて、「トランプでアメリカは大丈夫か?」に戻ります。

  今回の貿易戦争で明らかになったアメリカの真実とは、アメリカはろくなものを作っていないということでした。中国にしてもEUにしても、対米報復といいながら、追加関税の対象は、豚肉、バーボン、オレンジジュース、ジーンズ、オートバイ、大豆・・・正直言って笑っちゃいますよねこのリスト。

  赤字の原因は、そもそもろくなものした作れない自国の製造業なのに、トランプはそれを棚に上げ、他国を非難しています。ハーレーダビッドソンはそのトランプの顔に泥を塗りましたが、もっと強烈なパンチを浴びせる企業が出てきました。他でもないアメリカの製造を象徴する企業であるGMです。大統領専用車ビーストはGMのキャデラックをベースに作られ、キャデラックはアメリカンドリームを象徴する車です。そのGMが輸入車に関税をかけることを真っ向から批判し、6月29日に商務省に意見書を提出したのです。理由は、

「25%もの関税は車の価格を上昇させ、消費者のためにならない。その措置はいずれ自国に跳ね返り、雇用を減少させる。」というもので、数字まで示しています。

・25%の関税だけでもアメリカ人の雇用は20万人も失われる

・相手から報復関税をかけられると、60万人の雇用が失われる

  さすがGM。輸入車排除による自社の短期的販売促進など、はなから考えていません。自動車販売業や自動車金融なども含めて自動車関連産業全体のデメリットを計算し、国全体の受けるデメリットをきちんと計算したのです。

  さておバカなトランプちゃんのお顔ですが、自分の唾は落ちてくるはハーレーに泥を塗られるは、GMには強烈パンチを浴びせられるはで、あの怒髪天顔がさらに真っ赤に染まっています。ハーレーにも「報復してやる」と言い放ち、ツイッター口撃をしていますが、GMに対してどのような口撃を繰り出すのでしょう。「俺のビーストは他社に作らせる」とでも言い放ちますか(笑)。

  そして一昨日、ついにトランプ政策を讃えていた全米商工会議所までもが反トランプののろしをあげましたロイターを一部引用しますと、

「全米商工会議所は、世界的な貿易摩擦へのトランプ米大統領の対応を批判し、米国が導入した関税と貿易パートナーによる報復措置は米経済に悪影響を及ぼすとするリポートを公表した。」このあと州別の影響額が延々と示されていますが、それは省略します。

  一方、前回の解説で指摘したように、例えば中国からの輸入赤字の6割くらいが実はアメリカ企業が製造委託をしているアップルなどのアメリカ製品です。つまりアメリカ製造業の構造は、コストの高いアメリカでは作らず、世界中で最適な生産拠点を設けて製造しているのです。先ほどのアイフォンでも主要部品は日本・韓国、組み立ては台湾企業が中国で行うというような具合です。そして肝心なコンセプト、ソフトやデザインはアメリカで行っていて、販売価格の半分以上をアイデア代としてアップルが持っていくという収益構造なのです。

  この事実、トランプ政権は実は把握しています。そのため今回の中国に対する制限リストからアイフォンに代表される携帯電話は除外されているのです。日経新聞によれば、この一品目で約8兆円もの輸出が中国からアメリカに行われています。それがもしアメリカで25%も値上げになったら、消費者も黙っていないでしょう。

  アメリカはそうした国際分業でしっかりと経済構造ができているというのに、おバカなトランプちゃんはそれをぶち壊そうとしています。もともとアメリカは世界に比べて生産性が低く賃金の安い鉄鋼などをギブアップし、その代わりFANGと略されるフェースブック・アップル・ネットフリックス・グーグルなどのハイテク企業に集中し、社員は超高給取りで我が世の春を謳歌しています。

その連中が今さら鉄鋼業などに誰が行くもんですか!

  こんなおバカなトランプで、アメリカは大丈夫か?

「ダメでしょう(笑)」、が一義的回答です。

  アメリカはこの先も高度化にシフトしたことを理解できない支離滅裂なトランプの貿易政策により大きな損失を被るでしょう。みずほ総研によれば、「アメリカの保護貿易と中国の報復により米中間の貿易が2割減少すると、中国のGDPは約3%減少し、アメリカも1%減少する」と試算を示しました。

  それにEU自動車メーカーの自動車への関税に報復措置が加わりそうです。

このところの世界の株価の低迷は、こうしたことを如実に反映しているのだと私は思います。

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西野戦術に対する、私の見方

2018年07月01日 | ニュース・コメント


ポーランド戦最後の10分間の西野戦術に賛否両論が渦巻いています。それぞれの言い分はもっともなのですが、私は他の方々とは違う観点から西野戦術に賛意を表します。

いさぎよくない、とか、おもしろくないと言っている方々に質問します。

「もし日本が勝っていて時間稼ぎをしたら、賛成ですか反対ですか」

私はこの質問を数人の方にしてみたところ、すべての方が「そりゃよくやることで、勝ってりゃ別の話だよ」。つまり勝っていたら文句はないというのです。だったら、

「勝っていた日本の西野戦術のどこが悪いの?」

というと、きょとんとします。

で、私が「いちばん大事な勝ち点上、日本は勝っていたじゃない」というと、不満そうな顔をして黙ってしまう人がほとんどでした。

さて、読者のみなさんは私の考えをどう思われますか?

コメント (8)
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