荒れ模様はこのところの天気だけでなく、相場も相当に荒れたままですね。今年4回目のスキー、野沢温泉スキー場から戻りました。2日目、3日目と天気に恵まれ、楽しくすべることができました。
野沢温泉も町中からスキー場まで「熱烈歓迎海外スキーヤーご一行様」状態です。と言っても中国人旅行客は少なくオーストラリア人が圧倒的で、その他も欧米人がほとんどでした。彼らはスキーだけでなくアフタースキーも大いに楽しむため、町は活気に溢れています。足湯につかっているのも、野沢温泉の街に10か所以上ある公衆温泉浴場も、海外からのお客さんばかり。カフェやバーでゆったりとした時間を楽しむものも欧米人が圧倒的で、日本人の存在感はほとんどありませんでした。
我々の定宿はハウス・サンアントンという小さなホテルで、料理が自慢のオーベルジュと言ってもよいプチ・ホテルです。ここのテーマは、「野沢温泉なのにヨーロッパ」です。http://st-anton.jp/
美味しい料理を作ってくれる片桐健策という若きシェフは、元全日本クラスのスキーヤーでしたが、オーストリーのホテル学校で学び、今や評判のシェフ。それを姉たちが支えています。その一人は元JALのCAで、一緒に行く仲間の元パイロットの方とは会社時代からの知り合いで、我々を家族の里帰りのように迎えてくれるホスピタリティのプロです。ここのお客さんも海外からの長い逗留客が多く、チェックアウトの時に来年の予約を入れる人がたくさんいます。
さて本題ですが、マイナス金利の続きです。
マイナス金利の導入開始で、様々な影響が出てきています。まず株式相場と為替相場を数字で確認しておきましょう。日銀の決定前日である1月28日の終値からスタートし、当日の29日、ピーク2月1日、ボトム2月12日、現状2月19日と追います。
1月28日 29日 ピーク1日 ボトム12日 2月19日 28日対比
日経平均 17,041 17,518 17,865 14,865 15,967 ▲6.3%
ドル円 118.8 121.0 120.9 113.2 113.0 ▲4.9%
株価が発表前日より上昇したのは当日の29日と翌日の2月1日のみで、あとは乱高下を繰り返し、12日には発表前日比▲13%となりました。そして今週末現在ではどうにか半値戻しの▲6%というところです。
債券相場も確認しますと、こちらはひたすら混乱し長期金利の指標である10年物金利まで一時はマイナスを記録し、トレーダーや投資家は混乱の極みとなっていました。そして生命保険会社が年金商品の販売を停止するというような事態に追い込まれています。銀行の預金金利も引き下げが相次ぎ、ほぼゼロ状態。
我々への直接の影響としては預金金利の下げのほかに、住宅ローンや自動車ローン金利が下がるというプラスもあり、プラスとマイナスのインパクトが交錯しています。といってもいずれも超低金利が超々低金利になったという程度です。インパクトの総合的評価にはまだ時間がかかりそうです。
日銀内部でも今回の決定は相当な軋轢をよんでいます。決定会合での評決は賛成5対反対4。前回14年10月のバズーカ2号も薄氷を踏む評決でしたが、今回も同様でした。しかし決定的な違いがあります。それは、反対票を投じた審議委員の一人である石田委員が、昨日2月18日の会見で今回の決定の危険性についてはっきりと言及したことです。これまで審議委員は反対票を投じても、その後の会見などで正面切って批判するというのはあまり聞きません。日経ニュースを引用します。
引用
日銀の石田浩二審議委員は18日、福岡市での講演後に記者会見し、16日に始まったマイナス金利政策について「このタイミングで導入しても効果が期待できない」と指摘した。石田委員は1月末の金融政策決定会合で導入に反対した一人。円高・株安など市場の動揺が続く時期の決定に疑問を示し、黒田東彦総 裁ら執行部との認識の違いが浮き彫りになった。石田委員は三井住友銀行出身。マイナス金利に反対した理由について、「金融機関による貸出金利の低下余地が小さいことに加え、国内の利ざや縮小で金融機関による海外向け投融資が増えても国内経済の活発化にはつながらない」と説明した。・・中略・・「市場が不安定な時にさらに(政策変更を)やるのはいかがなものか」と苦言を呈した。
引用終わり
彼は任期がもう短いこともあり、かなり本音を述べているのではないかと思われます。発言の中で私が注目しているのは次のくだりです。「金融機関による貸出金利の低下余地が小さいことに加え、国内の利ざや縮小で金融機関による海外向け投融資が増えても国内経済の活発化にはつながらない」。この発言は、今回はタイミングだけが悪かったと言っているのではなく、これ以上は何をやってもダメと言っています。
そもそも政府から独立し、通貨の番人が本来の仕事であるはずの中央銀行ですが、日本に限らず政府の経済運営に加担するのが当たり前という危険な考え方が世界で蔓延しています。こうしたことをしていると、必ず手痛いしっぺ返しが来ます。
中央銀行の甘い政策により、一国の経済の競争力が増し、経済が成長軌道に戻り、国力を回復するなどということはありえません。低金利政策にしろ量的緩和策にしろ、競争力を回復するまでの時間稼ぎをするための政策で、それが中央銀行の限界です。逆にインフレファイターとして非情なほど厳しい政策を取ることで、インフレを退治したということはかなりの国で経験していますが、逆はないのです。
今回のマイナス金利導入に賛成したのは、黒田総裁、岩田副総裁委員、中曽副総裁、原田委員、布野委員の5人。反対は、白井委員、石田委員、佐藤委員、木内委員の4人でした。面白いことに賛成委員は黒田体制になってからの任命つまりはアベチャンのいいなりの「御用委員」。反対委員は前の白川体制での任命です。反対派は今年3月までの任期である白井委員や、6月までの石田委員など、5年任期の最終段階の方が多く、その後は政権と黒田総裁の息のかかった御用委員がほとんどになるため、アベクロコンビの独裁体制がより強固になると思われます。ということは、将来はますます恐ろしいことになりそうです。
次回は、現在当たり前のように行われている住宅ローンの金利引き下げなどが、どれほど将来に禍根を残すことになるかを解説します。