ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

新刊「投資は米国債が一番」幻冬舎刊
「証券会社が売りたがらない米国債を買え」ダイヤモンド社刊
電子版も販売中

「安全資産の円買い」について・・・大丈夫か日本財政のおまけ

2016年02月27日 | 大丈夫か日本財政

  北海道ニセコへのスキーツアーから戻りました。ニセコは街からスキー場まで、 ますますオーストラリアン・コロニー化が進展しています。オーストラリアのみなさん、八方、野沢、ニセコにどんどん進出いただき、本当にありがとうござい ます。おかげで寂れていたスキー場に活気が戻っています。

  ニセコのコロニーぶりを最も象徴する場所が、花園エリアです。ニセコは4 つのエリアが頂上でつながってできている広大なスキー場ですが、その一つが花園エリアです。聞くところによればリゾートセンターからレストランまで、すべ てオーストラリア人の所有とオペレーションになっているため、日本にいながら不思議な海外空間をリアル体験できます。

  そこではスキーヤーの8割がオーストラリア人で、彼らの多くは家族で来る ため子供たちの雪遊び施設が充実しています。子供たちに雪遊びとスキーやボードを教えるのもすべてオーストラリア人のスタッフ。もちろん大人に教えるス キーの先生も全員がオーストラリア人です。スキー場、レストハウスにあるほとんどの標識も英語という徹底ぶり。たまにいる日本人の若いスタッフと話をする と、みんなが口をそろえて言うのは、「ここで働く一番の目的は英語を学ぶことです」という返事が返ってきました。アルバイトで稼ぎながら英会話が勉強できるなんて、サイコーです(笑)。

   さて、4日間の留守の間、ブログのコメント欄ではずいぶん活発な議論がありましたね。そのやりとりについて、つれづれなるままに感想を書かせていただきます。

  まずは真剣に議論をされたみなさんに感謝いたします。楽しませていただきましたし、本音がたくさん聞けてよかったと思います。今後の参考にもさせていただきます。

   どなたかが書いていらしたように、私は自分のブログをどなたにも開放する主義で、議論の白熱も歓迎です。口汚いののしり合いだけは歓迎しませんが(笑)。ここに集まる多くの方は、実に秩序をわきまえた方が多いので、安心して見ていることができます。

   ブログ主催者の私の見方が常に正しいことなどあり得ません。お互いの切磋琢磨のためにも異論・反論は大歓迎です。ただし、私は常々申し上げているように、経済・金融は数字がすべてだと思っていますので、できれば実証できる数字で議論したいと思っています。

   私が本を書き、ブログを書いている動機も話題に上りました。私は著書の「あとがき」にあるように「義侠心」から書いています。かっこよすぎますか(笑)。

  世の中の多くの方が投資で損失を出されストレスを感じ、幸せになっていないことをおかしいと思い、世の中には「ストレスフリーの資産運用」という単純な投資スタイルがあるのだということを知っていただこうと書いているのです。

  もっともこのブログのスタートは、最初に私の原稿に興味を示した出版社と喧嘩したので、出版してもらえない時のヘッジでもありました(笑)。

   資産運用や経済、金融など市場の動向によって左右される内容を含む本 は、その多くが出版したそばから使い物にならなくなることが往々にしてあります。そこで、出版したあとのブログは、本を買って損したと思われないよう、市 場動向に合わせて本の内容をフォローする必要もあると感じ、書き続けています。

   私は90年代に在籍した投資銀行時代から様々な方にアドバイスを差し上 げていますが、幸いなことにアドバイスを実行された方はこれまでのところ例外なく幸せになっています。著書の内容にあるお薦め投資対象もそこそこのパ フォーマンスを上げているため、特段のクレームも受けていません。その理由はいたって簡単。危ない投資をお薦めしていないからです(笑)。

  ちょっとリスクを取るならということで著書で薦めた豪ドル債は13年に新規投資はやめるべきだとブログでフォローしましたが、それが一つの例です。

   米国債への投資を実行されていない方にとっては、「そんなことは何の慰めにもなんねー」かもしれませんし、「あんたの見通しが間違ってるから投資し損ねたんだよ」、かもしれません(笑)。

  それでも、今後も私は米国債への投資を薦め続けます。投資した人だけが感じられる、「ストレスフリーの幸せ投資」ですから。

 

   さて、ではコメントでたくさんいただいた現状の円高や安全資産論議についても触れることにします。

   議論を見ていた私の思いを、すでにシーサイド親父さんに代弁していただいているので、まずそれを引用させていただきます。

>現在の1ドル111円台は予想外で裏切られた?そんな感情で、正しいだの、正しくないのだのと議論して何の意味があるのでしょう。

  シーサイド親父さん、よくぞ言っていただき、ありがとうございます。相場 はいくらでも動きます。今後も世界市場は振れ幅が増大しこそすれ、小さくなることなどあり得ないと思います。今年末の円安を年初に予想したら、年初からど んどん円安にならないと満足されない方もいらっしゃると思いますが、それは高望みです。なんなら今後は振れ幅予想でもつけましょうか。

   「本日のドル相場見通し」というのが毎日出されています。昨日の終値が 113.0円だと、今日の予想は112.0-114.0円というような幅が平気で出ているので、1年間の振れ幅はスタートが120円なら、振れ幅は十分に とって1ドル50-190円の幅で、年末は130円になるとでもしましょう。ここまで幅を取ればきっと当たりますよ(笑)。

  冗談はさておき、ドル買いチャンス到来とのご意見も多かったですね。そのとおりだと私も思います。

   これだけでは真剣に議論をされたみなさんは満足されないと思いますので、最後に「安全か」の議論についてもコメントしましょう。

  最初に申し上げますが、今年の私の最初のシリーズのテーマは「大丈夫か日本財政」。クロちゃんの「マイナス金利」が入りましたが、まだ途中で継続中です。内容的には、15年までの見込み違いをきちんと並べ検証を始めていました。ところがある方の投稿から、みなさんの議論はシリーズで書こうと思っていたことを通り越して先走りしてしまっています。

 みなさん、「あわてなさんな!」ですぞ(笑)。

   さて、為替動向のニュースでは毎日のように「比較的安全資産と言われる円に買いが集まり」という解説が付きます。誰がその「安全だ」解説を出しているのでしょうか。ニュースを読むアナウンサーではありませんよね。きっと経済記者かもしれませんし、どこぞのアナリストが言ったのかもしれません。

   じゃ、円が反転し安くなったら「比較的危険資産と言われる円が売られ」という解説を何故しないのでしょう。みなさんは聞いたことはありますか。私はありません。安全と思って買われるのであれば、危険だと思って売られるのも妥当なことだと思いますが、決してそうは言わない。何故でしょう?

  「比較的安全資産と言われる円が買われ」という解説は、きっと解説しないとメシの食い上げになる、お気の毒な方々の性から出ているのでしょう。

   これと同様なことは以前にも言ったことがあります。円キャリー巻き戻しという理屈です。今回も以下のようなコメントをいただきました。

 >リスク局面では円売りキャリートレードポジション巻き戻しの為、円買いされるのではないでしょうか

   この「円キャリーの巻き戻しで円高に動いた」という解説もよく聞きましたよね。だったら巻き戻す前には「巻が入っていた」はずなので、「円キャリーの巻きで円安に動いた」という解説がないのは何故でしょう。ついぞ聞いたことがありません。

 巻きはそっとやるけど、巻き戻しは一気にやる?

 本当に儲ける投資家は両方ともステルス戦法で行きます。

   安全資産説にも巻き戻し説にも共通していそうなのは、「理屈がつかなくなると利用される常套句だ」、ということです。

教訓;為にする解説を信用してはならない

   私の常套手段は、もっともらしい解説やコメントを鵜呑みにはぜず、 ちょっと疑問を感じたら自分なりに考えるようにすることです。為替相場の微笑ましい解説はその代表で、突っ込みどころ満載です。みなさんも是非こうした視 点を変えてみる思考回路を持つことをお勧めします。世の中がもっとよく見えるようになりますよ。

  しまった、安全議論を忘れていましたね。

   いつも言っていますが、「日本は危ない派」は数字で議論し、「安全派は数字を決して出さない」。これだけは不滅です(笑)。

おっと待った。意味不明の数字を使う魔術師も一人だけいましたね(笑)。

  日本財政が安全か否かの議論の滑稽なところは、数字を最も詳しく知っている当事者である大本営は「負け戦になりそうなので増税するぞ」と言い、外野には勝ち組がいて「いや神国日本は大丈夫だ」と言っているところです(笑)。

   今まで破たんしていないじゃないか、という議論は今後の予想には何の役にも立ちません。

   為替がちょっと動いただけで日本や円が安全と危険の間を行ったり来たりするなんてことはありえない。

  以上、徒然なるままに書いてみました。

コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする