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大丈夫か日本財政 その3 財政破たん派、どこが間違っているのか

2016年01月17日 | 大丈夫か日本財政

  連ドラでは「はるがきた」らしいけど、スキーヤーにはやっと「ふゆがきた」(笑)。

  今週また3日間スキーです。今回は本州で一番好きな白馬八方尾根です。でも実はいまだに雪不足で、いつもなら全ゲレンデ滑走可のはずが、いまだ半分も滑走不可のままです。19日から大雪モードなので、それに期待します。でも東京も雪かもしれないので、「期待します」なんて言うと、怒られそう(笑)。

  では本題です。

  私を含め日本財政の危うさを指摘している人たちの破たん時期予想は、だんだん先に延びているようです。私の場合はリミット17年にあと2年の余裕はあるのですが、今のところ破たんの気配は全くありません。

  今回は途中経過ではありますが、ここまでの見込み違いの原因がどこにあるのか、冷静に分析してみましょう。みなさんが「日本は大丈夫か」を見通す役に立つと思います。

  もちろん自分が間違うかもしれないことを分析し、指摘するのは心苦しいところもありますが、それでこそこのブログだと思っているので、やってみることにします。

  私のメインシナリオは2つあります。

 「円安シナリオ」と「 政府債務の家計資産超過シナリオ」です。

  2つのうち政府債務について最近このブログで話題になったので、こちらから詳しくみることにします。シナリオを図式にすると、

  貯蓄率低下+高齢者増加で家計の金融資産減少⇒

  国債ファイナンス不能⇒日銀の国債大量買入れ⇒ハイパーインフレ

  このうちまず前半についてです。

見込み違いその1.貯蓄率低下と高齢者増加で家計の金融資産減少

日本の家計の貯蓄率は順調に低下しています。そして高齢者も増加していますが、それが金融資産の減少にはつながっていません。

  まず貯蓄率の低下から数字を追います。貯蓄率とは、毎年の収入のうち貯蓄に回した分の率です。四半期ベースの統計が日銀の資金循環統計にあります。

2000年 家計の貯蓄率;+8%

その後順調に下げ続け、13年にマイナスに突入。

2013年 家計の貯蓄率;▲1.3%

  これが14年にまたゼロ付近+0.1%に少しだけ改善し、15年はほぼゼロ近辺での横ばいとみられます。つまりこのところ家計の収入から新たに貯蓄にはまわっていません。そしてこの間、高齢化だけは間違いなく進展しています。

  普通でしたら高齢化により貯蓄の取り崩しに動くはずですが、それが逆で家計の金融資産は増えています。

  2000年に約1,400兆円だったものが、15年9月末で1,684兆円です。その大きな要因は、15年間のあいだに団塊の世代がリタイアして、いちどきに退職金をもらい家計の現預金が増加したこと。そして最近3年の株式の値上がりによる増加に加え、円安により外貨建て資産が増価したことです。

  日本の高齢者は貯める一方で使いません。

  私のところにアドバイスを求めてくる高齢の方とお話をしていると、例えば80歳を超えていても、何のために資産運用をするのかと訊ねるとほぼ全員が、「老後の安心のため」と回答されます(笑)。

  私から見ると十分老後に入っていると思われる方でも、ご自分は老後のために「運用」したいと思っているのです。使わずに死んでいくことをもったいないとは思わない。安心して死にたいということのようです。もちろん孫子のために遺産を残すということもあるでしょうが、お金を貯めるだけ貯め、使う喜びを知らずに死んでもよいようです。もったいないですよね。私のように全部使いきって死のうと思っている方はほとんどいません。

  現在先頭が68歳となった大集団である団塊の世代が、稼ぐ側から取り崩し世代に入っているはずなので「取り崩しが勝るはず」、との見込みはすくなくともここまでは間違っていました。団塊の世代は私を含めだれも高齢者だとは思っていません(きっぱり!)。だからきっと、これから「老後」に備えて運用するのです(笑)。

  使ってこそなんぼの貯蓄なのにね、大丈夫ですかご同輩たち?

 今回はこのへんで。

  スキーのため、ちょっとお休みします。

コメント (9)
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