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世界の株式市場の暴落について

2016年01月14日 | ニュース・コメント

  世界の株式市場の下落が止まりません。毎日のように下げ続け、NYダウは1週間あまりで約1,100ドル、日経平均は約1,800円もの暴落で、記事を書いている14日の前場も暴落していて、いまだに止まっていません。

   「いったいどうなっているんだ、世界経済は大丈夫なのか」、とある方から問い合わせを受けましたので、私の勝手な解説を付けてみます。

   年始の株式暴落の一番の原因は中国経済に対する懸念です。なんだそんなことかと言われそうですが、それが様々に波及しているのだと思っています。原油価格の暴落を原因の一つに挙げる人もいますが、それとて中国需要の減少が大きな原因です。昨日13日には15年一年間の中国の輸出と輸入額を単純に合計した額が、前年比マイナス8%になったというニュースが流れ、いったん止まったかに見えた株式がまたNY市場から下落しました。中国政府の見通しはプラス6%だったのがマイナス8%と、大きな見込み違いだったからです。

   じゃ、このままいくと世界経済はリーマンショックのようにチャイナショックにみまわれるのか。

   「そんなことはない」、それが私の結論です。

   地政学的リスクの世界的権威であるイアン・ブレマー氏の「16年の地政学的リスク」を年初に取り上げました。彼も重要なリスクとして取り上げていたのが「中国の存在」つまりさらなる台頭でした。もっとも彼の指摘は経済中心ではなく地政学的上のリスクですし、さらなる台頭がリスクだということなので、今回の中国経済の縮小とは指摘している点は違います。今回の暴落は、「中国経済の縮小」に世界の株式市場が驚いたからです。

  中国の昨年の10-12月期のGDP統計は1月19日に発表されますが、これはあてになりません。何度か申し上げているように、GDPは大本営発表だからです。じゃ、さきほどの輸出入統計はどうか。これはあまりひどい大本営発表はできません。何故なら中国の貿易相手が中国との貿易の本当の数字を発表するからで、世界のまともな発表を足し上げればウソがばれるからです。昨年の貿易総額の目標は6%で、中国政府の成長率目標におよそ沿っていますが、実績はマイナス8%でした。大きなかい離があります。GDPはすでに7-9月分までは発表済で、およそ7%を掲げる政府目標通りの推移になっています。10-12月期もそんなにひどい数値は出せないでしょうから、貿易統計とのかい離は縮小しないでしょう。

   ここまで市場が荒れると、株式投資をされている方は、さぞ大変なことと思います。昨年の夏から秋にかけても中国株式の暴落で世界の市場が大きく揺さぶられました。そのとき私が申し上げたのは、「水鳥の羽音に驚くな」でした。そして各国の市場は驚いたけど、戻りました。

   今回は中国の株式市場からの動揺ではなく、「実体経済からの動揺」ですから、今泣いたカラスがもう笑った、というわけにはいかないと思います。しかし中国発の深刻な事態は、不動産の大暴落でも伴わない限り心配するには及びません。各国の対中国輸出はすでに昨年から落ちていましたし、対中投資も昨年から落ちています。経済はアメリカ一国頼みではありますが、株式暴落はやがて止まるでしょうから、株価の目覚ましい回復がなくとも心理的安心感につながるでしょう。

   世界の金融市場が大きく動揺しているとき、唯一買われているのはいつも申し上げていますが「米国債」です。FRBによる利上げをものともせずに価格が上げ、金利が低下しています。利上げを理由として金利上昇を見込み、米国債への投資タイミングを計っている方には申し訳ありませんが、アメリカ経済は堅調ですのでしばしお待ちを。

コメント (1)
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