ギリシャ問題は決着もせず実質的にデフォルトもしないで7月になってしまいました。6月末期限の借金の返済はあくまで「支払いの遅延」という扱いで、デフォルト認定はされないということです。一般的には支払いの遅延でも債務者は「期限の利益の喪失」をしたとしてデフォルトの認定を受けるのですが、今回の債権者がIMFであり、一般投資家への影響がすくないという理由からデフォルトとはしないようです。実はIMFが今回は「遅延の扱いという温情」を与えたと私には見えます。そして格付け会社はそれを認め、デフォルト認定はしないとのことです。
ただし欧米の報道機関の扱いはどこもヘッドラインでは「ギリシャはデフォルトした」となっています。解釈の違いということでしょうが、こうした事態でもっとも重要なのは、格付け会社の認定だと思いますので、実質的にデフォルトはしていないと考えるのが妥当でしょう。
普通は債務者(この場合はギリシャ)が一つの借金でデフォルトを起こすと、クロスデフォルトという条件がついている場合が多いので、他の全債務が同時にデフォルト認定を受けます。そうなると大ごとになるので、IMFが温情を与えてデフォルトを回避したと思われます。ギリシャ問題について私は前回の記事ではこう書いています。
>何らかの妥協、先送りの案を双方が飲んで本当の解決には至らないがデフォルトは避ける、というものです。そしてよしんばギリシャがデフォルトを選択したとしても、09年から11年にかけての事態とは異なり、他のユーロ圏には波及せず、市場はさほど動揺しないと見ています。
この見通しはちょっと当たっていないところがあります。というのはチプラスは自分が妥協したんだから支援してくれと言っていますが、IMFや欧州委員会はそんなのは妥協じゃないと言っていますので(笑)。しかも実はIMFは遅延を容認しているので、厳密にはIMFが一方的に妥協したのです。
まあそんな厳密な議論はいいとしても大事なことは「他のユーロ圏には波及せず、市場はさほど動揺しない」という部分です。株式市場は下げを演じましたが、その後は小康状態で、大事には至っていません。日経平均は600円の下げを回復できていませんので、株式投資をされている方にはインパクトはそれなりにありましたね。今後も同じ様なことは繰り返されるで要注意でしょう。
では、今後はどうなるか?
私は以前から「ギリシャの国民はユーロからの離脱など望んでいない」と言い続けて来ました。ドラクマに戻るのは悪夢だとわかっているからです。7月5日の国民投票でも、きっと民意は「EUの緊縮を飲んでも離脱はしない」ということになるでしょう。ニュースでも世論調査の結果を以下のように報道しています。
朝日のオンラインニュースから引用
「6月28日付のギリシャ紙トビーマに掲載された世論調査によると、ギリシャがユーロ圏に残留するか否かについて、「残留」は67・8%で、「離脱」の25・2%を大きく上回った。緊縮に不満はあるものの、ユーロ圏から離脱すれば、経済や政治がさらに混乱するのではないかという人々の警戒感を表した結果とみられる。」
引用終わり
国民投票がこの通りの結果に終わると、次のシナリオはあの威勢いいオニイチャン、チプラスの辞任でしょう。もちろんコワモテおじさんバルファキスも一緒です。その後はまたどこの誰が政権をになうかで混乱は続くでしょう。しかし方向性は「緊縮策の容認」しかないので、時間の問題だと思います。
ただその前に、日本の市場で発行されたギリシャのサムライ債の償還期限が来ます。今回は発行量が少ないのですが、その扱いがどうなるのか、私のような債券の専門家には興味津々です。
ちょっと利率がいいからといって、リスクの大きな発行体のサムライ債などには絶対に手を出さないことです。