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不気味なほど静かだった金融市場と平穏無事な経済動向 その13 欧州経済⑦

2015年07月07日 | ニュース・コメント

  岡山への旅行から戻りました。はると14さんから真庭だけでなく倉敷へもとコメントをいただきましたが、ホテルを倉敷に取り真庭と往復しましたので、倉敷もゆっくりと楽しむことができました。倉敷への旅行は、私は中学の修学旅行以来50年ぶりだし、家内は初めてでしたので、美観地区が本当に美しい美観地区に変貌していて驚きました。鶴型山を含め歴史散歩を楽しませていただきました。梅雨の最中でしたがそこは名だたる晴れ男ぶりを発揮、レンタカーでの移動中以外には雨にも降られず、楽しい旅行ができました。その報告は次の機会にさせていただきます。

   さて、ギリシャ悲劇は私の見通しとは半分反対のシナリオに向っていますね。ただただ驚くばかりです。銀行業務の部分封鎖や引き出し制限を受けても、全く懲りずに都合のよい自己主張を続ける国民とそれを主導する首相、先進国にこんな国があることを私は全く読めませんでした。今は笑う以外にありません(爆笑)。

   それでも私は「ユーロからの離脱なんぞできっこない」との従来からの見通しを依然として持ち続けています。「私の見通しとは半分反対」と申し上げたのは、国民の選択は「緊縮反対、借金棒引き、でもユーロ残留」だからです(笑)。


   問題がここまできても週明けのNYの株式市場を見てわかるように、金融市場全般はさほどの動揺をきたしていません。月曜日の日本市場はかなり下げましたが、今日火曜日は戻しています。そして為替も思いの他動いていません。円ドルで言えば買い場を期待されていた方々には、ちょっと不満が残りそうですね。しかしまだまだこのギリシャ悲劇は終わったわけではありません。

   私はギリシャがどっちを向こうと、世界を震撼させるようなことにはならないとも言ってきました。11年の危機との差はこれまでみてきたように、欧州全体のファンダメンタルズが改善していることと、スペイン、イタリアなどのサイズの大きな問題児が、経済・財政状況をだいぶ改善してきているからです。

   ですのでギリシャ問題の先行きについてはEU内他国への波及の心配もいらないし、たとえギリシャのユーロ離脱があったとしても、悲観的に見る必要はないと思います。もしギリシャがロシアや中国へ亡命を求めるなら、ノシを付けて送り出してあげましょう。ノシとは新たな支援ではなく、これまでの借金返済スケジュールの先延ばし程度のお話です。EUの先行きを見据えるなら、ギリシャに対して甘い措置をとることは決して得策ではないと思います。予備軍もいますし、今後参加する国も覚悟を持って参加してもらうことが必要だからです。

  私は欧州問題の最初の回の記事でこうも書いています。

   「欧州にとってはウソをついてEUの加入基準を満たした困り者のギリシャなど、いなくなったら支援も必要なくなりせいせいとする存在なのですが、政治的・軍事的にはロシア側に行かれるのは好ましくありません。特に軍事同盟であるNATO にはギリシャは1952年から加盟していて、地中海の不沈空母の役割を果たしているからです。」

   ギリシャの地政学上のリスクについて、報道でもだいぶ触れ始めています。私が本当のキナ臭さを判断する基準の一つは原油価格です。ギリシャ問題にもかかわらず昨日のNYの原油先物市場は3カ月ぶりの安値を付けました。高値ではなく、安値です。ギリシャに対してロシアが秋波を送ろうが、中国が現ナマをちらつかせてみせようが、キナ臭さは全くない。しかも中東での混乱が全く収束を見せず、ISILが反転攻勢に出ている中での価格の下落です。少なくとも原油市場はギリシャ問題などどこ吹く風で、むしろ中国経済のスローダウンを見極めることに集中しているように私には見えます。

   EUの先行きを見る時にもう一つ重要な視点は各国の政治状況です。欧州問題に入って第3回目、イタリアのことを解説した時に私は以下のように述べました。

緊縮拒否グループはいずれの国にもいて、移民拒否の極右政党と連携することもあり、決して侮ることはできません。」

   私はEUとは経済連合だけでなく、将来の政治的な統合も大切だと思うのですが、各国とも国内政治で悩ましい問題を抱えたままですし、最近はアフリカからの難民問題が大きくなりつつあるため、極右や極左が先鋭化しつつあります。

   超長期的視点で見ると、EUとはそれをテコに数百年も続く独仏戦争を終わらせ、欧州に恒久平和をもたらすステップであると見ています。欧州の平和とはギリシャ、バルカンなど周辺の火薬庫の平和などではなく、本当に重要なのは中核の独仏間の平和だと思うのです。それさえしっかりと保てれば、周辺国のドタバタなど現実的には取るにたらない問題なのです。

コメント (6)
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