(2)日本人は何故大間違いをするのか : 資産バブルに続き国家債務バブル
繰り返されるバブルとそのメカニズム
バブルとはあとで考えれば単純きわまりない自己増殖である。株や土地・ゴルフ会員権バブルと国家債務バブルは同じメカニズムが働いている。
<資産バブルのメカニズム>
80年代後半の資産バブル時代、企業は特金・ファントラという手法で自社株式を買い価格を釣り上げ、高株価で株式を大量に発行し、それをまた株を発行した資金で買い上げるという自己増殖に励んだ。証券会社はそのエクイティ・ファイナンスに加担するメカニズムを提供し、株価は永遠に上げ続けられると誰もが錯覚。株価が天井を打って反転すると、売りが売りを呼ぶ暴落となり、証券会社は損失補填で財テクに励んだ企業もろとも大崩壊。
銀行は土地担保でローンを出し、企業はその資金でまた土地を買い上げ、担保価値が上昇するとさらに銀行が貸し込み、企業は土地を買い続けるという自己増殖メカニズムが大バブルを形成。株式同様、不動産価格がピークから反転するとすべてが逆回転を始め、日本型金融システムは大崩壊した。
<財政バブルのメカニズム>
日本財政はバブル崩壊以降、大きく膨れ上がった。累積債務の対GDP比率はバブル崩壊開始時点で60%だったものが、97年の金融危機後120%ほどになり、現在は230%となっている。戦時国債の大量発行で、終戦時の累積赤字の対GDP比率は現在とほぼ同レベルである。
赤字国債発行を可能にしたのは国民の貯蓄である。貯蓄は銀行や政府管轄下にある郵貯、簡保、年金機構に貯まり国債を買い支えてきた。
国民は知らぬ間に貯蓄を通じてそれに加担させられている。国が発行したものを国の息のかかった組織が買うのは自己増殖機能の典型で、資産バブル時代のエクイティ・ファイナンスのメカニズムと同じ。
直近の2年はさらに日銀が加わることで、まさに政府・日銀一体となって自分が発行した国債を自分が買うという自己増殖機能がフル稼働している。中央銀行は財政ファイナンスをしてはならないという不文律は日銀自らが捨て去った。日銀の資金供給により世の中にオカネが回るはずが、供給した資金はほぼすべてが日銀口座にブタ積みされていて世の中には回っていない。
バブル時代、渦中の人間は株も不動産も永遠に上がると信じ込んだ。
「自分が買い続けるのだから株や不動産の暴落などあり得ない」
同様に、
「日銀が買い続けるのだから国債暴落などありえない」
最近財務大臣ですら「破綻・破綻と言うけれど、言うたびに金利は低下しているじゃないか」と述べ、破綻懸念を笑い飛ばしている。日本はすでに国家債務がGDPの230%まで膨らみ、減る可能性はほぼ皆無。
格付け会社ムーディーズは消費税先送り決定直後に日本国債の格付けをダウングレード。それを大量に抱える銀行の資産も毀損可能性ありとしてダウングレードした。銀行の国際監視機関であるバーゼル銀行監督委員会は銀行が自国の国債を大量に抱えるリスクに警鐘を鳴らし始めていて、いずれ歯止めをかけることになる。日銀総裁はオフレコ発言でそのリスクに言及した。
<注目点>
・日本財政が「破綻する派」は数字でモノを言う
・「破綻しない派」は数字を使わず感情論でモノを言う
先の太平洋戦争もアメリカの実力と日本の実力を数字で把握し冷静に判断すれば開戦などありえなかった。
また国内情勢のみを見て海外を見ないと間違いを犯す。江戸幕府の鎖国は国の破綻をもたらした。開国したことで成長が始まったが、ふたたび軍部の統制により鎖国状態となり破綻。原爆が落とされるまでそれに気付かない。そうした日本古来の気質は繰り返される。
80年代後半のバブルも狭い日本で内弁慶になっていたことが破綻の原因。そして今日に至っても「日本だけは違う、財政の破綻などありえない」という根拠のない楽観論が蔓延する。
以上が団塊の世代に属する林が「戦後70年、経済敗戦に向かう日本」に抱く経済史の認識とバブル生成の解説です。