ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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2013年からの資産運用 その9、 年金保険はどうすべきか

2013年02月25日 | 2013年からの資産運用
前回は、生保の運用の中身は長期の国債に極端に偏っている。資金の4割は国債に投資され、その平均年限が10年だとお伝えしました。そのため生保の存続はひとえに国債にかかっていることになります。

生保にオカネを預けるということは、国債リスク=生保の倒産リスク、そして円リスク、なんかリスクの塊のように思えますね。

 「外貨建て年金保険」というのが最近売れているそうですが、これならどうか?

  証券会社で米国債を買うと、証券の管理口座は分別され証券会社の倒産リスクは避けられます。しかし保険会社はそうはいきません。もちろん破綻後に残余財産が残れば多少の分け前にはあずかれますが・・・

  というように保険会社にオカネを預ける、つまり貯蓄性のある保険商品は、私の投資スタンダードからすれば最悪の選択です。保険会社は運用の4割を国債投資に回しています。普通の円建て貯蓄保険であれば、自分で国債を買えば同じこと。保険会社の儲け分得しますし、保険会社の倒産のリスクも回避できます。といっても、国債が破綻するのでは自分で買っても破綻は破綻ですが・・・

  外貨建て年金保険でも同じで、自分で外債を買えば保険会社の倒産リスクから解放され、保険会社の儲け分は自分で確保できます。もちろん、定期的に○万円を受け取り続ける、というような仕組みは自分では作れません。しかしリスクの回避に比べれば、それくらいの不便は我慢すべきです。

  米ドル建ての年金保険の裏の仕組みは、保険会社がみなさんから預かったオカネで米国債に投資しているだけ。豪ドルなら豪州国債への投資だし、ユーロ建てならドイツ国債などへの投資をしていて、年金の支払いに備えているのです。そうすることで保険会社は為替のリスクを回避し、金利収入を得て、儲けを確保してから余った分で加入者に年金を払うのです。

  ということで、年金保険とはいかにもそれらしいネーミングのためメリットがありそうですが、仕組みからして余計なリスクと保険会社の利益に貢献する商品なのです。

じゃ、保険部分は?

  年金保険は年金部分といざという時の保険部分に分けられます。もし保険部分に必要性を感じているなら、掛け捨て保険に加入すればよいのです。掛け捨ての場合支払った保険料は少ないので、保険会社が倒産したらあきらめがつきます。そして次回分からは他の保険会社にすれば済みます。外資系のほうがコスト構造からして保険料も割安になっているようですし、日系と違い年金保険を扱っていないので、日本国債暴落で倒産というリスクも比較的小さいと思われます。

  「なるほど、言われてみれば手数料払って保険会社のリスクまで取って、いいことないね」

  そうでしょう。個人の加入する年金保険とはしょせんそういう構造を持つものなのです。

じゃ、もう買ってしまった年金保険はどうしたらいいの?

  端的に言うと、解約をお薦めします。

  長期に渡る年金での受け取りより、解約で一時金を得るほうにメリットがあると思います。メリットとは

1.保険会社の倒産リスクから解放される
2.一時金を外貨に投資すれば円安リスクを回避できる
3.インフレリスクから解放される(通常インフレスライド条項はない)


  もちろん解約はタイミングによって得失が出ますので、みなさんの個々の契約状況により結論の出し方は異なります。しかし基本的に銀行より倒産のリスクの大きな生保に年金保険を頼るのは危険です。生保は銀行と違い、みんなが加入しているわけでもないし預金と違い毎日オカネを引きだしたりする決済機能もないので、いざという時にオクニは守ってくれないおそれがあります。

  そしてアベチャンの政策リスクは預金のところで示したリスクと同じで、円安とインフレのリスクにさらされることになります。


 まとめますと

1.保険会社は資産の4割を「長期国債」メインに投資し、オクニと心中するつもりだ(笑)
2.貯蓄性保険は保険会社のリスクをマルマル取るので、やめたほうがよい
3.特に年金保険は金額も大きく長期にわたり保険会社のリスクと付き合うことになるので、解約を検討すべし
4.アベチャンは円安、インフレを目指しているので、インフレスライド条項のない年金保険は最悪の選択
5.保険そのものはリスクの少ない掛け捨てにすればよい

保険会社さん、ごめんなさい ペコ
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3 コメント

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タイムリーで助かった^^ (ななし)
2013-02-27 08:38:23
タイムリーでした(笑)。昨日10年満期定期つき終身保険の3回目の更新案内が来てましたが、きっぱり、ななし家の今後の保険は全て掛け捨てにします。(セールスレディーさん、ごめんなさいね)
何処の保険会社が倒産リスクが大きいか少ないか?私には全然わかりません。質問その①
素人は保険会社の倒産リスクをどこで見分けたらよいのでしょうか?株価ですか?

質問その②>証券会社で米国債を買うと、証券の管理口座は分別され証券会社の倒産リスクは避けられます・・とありますが

これは今後も絶対変更する予定とか可能性は無いのでしょうか?

どうぞよろしくお願いいたします。









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ななしさんへの回答 (林 敬一)
2013-02-27 13:22:08
ななしさん、本当にいろいろな商品を持っているんですね。よかったですね、タイミングがおそすぎくなくて。といっても緊急を要するとはおもえませんが。


ななしさんへ、回答です。
質問その①
素人は保険会社の倒産リスクをどこで見分けたらよいのでしょうか?株価ですか?

回答;損保は株式を上場していますが、生保はほとんどが非上場会社なので、株価はありません。
本文で書いたソルベンシ―・マージンの大小で一応の目安にはなりますが、あまり信用はできません。企業の倒産と同じで、寸前まで高い自己資本比率があったのに、ある日突然債務超過になって倒産する。
一番最近破綻した大和生命の倒産は08年10月でした。同年3月のソルベンシ―マージンは555%、それが倒産時には突然27%ですから、信用おけないのです。

質問その②
証券会社で米国債を買うと、証券の管理口座は分別され証券会社の倒産リスクは避けられます・・とありますが、これは今後も絶対変更する予定とか可能性は無いのでしょうか?

回答;うーん、絶対ない、とは言えません。
でも「ほとんどありえない」とは言えます、国家が国民を騙し資産を泥棒する犯罪者にならない限り。

その時は北○○と同じで、国民は出国もできないでしょうから、救われるのはななしさんだけかも(笑)
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早速ご回答ありがとうございます (ななし)
2013-02-27 15:01:25
>ソルベンシ―・マージン
ググったら、支払い余力という意味なんですね。
支払い余力は毎月判りますか?決算時のみ?
いずれにしろ当てに出来ない数字なら同じですね。



私は英語も何も判らないので、海外で食事する時はお客さんのわんさか多い店に入り、みんながよく注文してるのをチラッと見て店員さんにその人の皿を指差し、「これっ」ってオーダーします。まず間違えなく美味しいけど、虎の子を死守するためには「みんな頼んでるから」じゃダメなんですね。
了解しました。

いずれにしても日本がガラポンにかけられないことを願うばかりです。








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