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西日本の豪雨災害 その2

2018年07月14日 | ニュース・コメント

  みなさんはご自分が家を建てたりマンションを買ったりする際、災害ハザードマップを確認したり、過去の災害履歴を確かめますか。今は全国どこでもそういった情報はネットで簡単に検索し、確認することができます。この情報環境はきっとこの20年くらいで充実したのだと思いますがそれ以前でも各自治体にいけばある程度の情報は得られました。

  家は買うとなると数千万円もするし、土地があって家屋を建てるだけでも最低2・3千万円もかかる大事な買い物です。そして家は自身の命を守る道具でもあります。その防災道具でもあるはずの家が住人の命を奪っていく様子を見ていると、私は大きな疑問を感じるのですが、みなさんはいかがでしょう。

   私は自分が住むところの安全性は徹底して調べ、確認できなかったらそこには住みません。

  そんなことは都会に住む人間の勝手な言い分だよ、という声も聞こえそうですが、あえて続けます。日本は狭く土地が限られるため、そんなに自由度がないことは重々承知ですし、先祖のことや親類縁者、仕事のこともあるため、居住地は安全だけを考えて決めることはできないという事情もあるでしょう。しかし命あっての物種です。

  このところの災害を見ていると「さもありなん」という所に住んでいる人が多すぎるような気がします。家の裏に山が迫る、家の前が崖になっている、そばを川が流れていて堤防だけが頼りのところなどです。

   広島県呉市は山と海の迫る狭隘な土地に住宅地があります。下は広島県呉市のサイトにあった過去の災害履歴の一部です。災害研究をされている方によれば、「昭和20年の枕崎台風によって呉市は山津波のような状況により2千人が死亡した。それ以後地形に変化はなく、山崩れを防止する根本対策などしていないし、そもそも不可能で、また同じ災害が来るのは当たり前です」。そして今回は10日までに150人くらいの死者が確認されています。

広島県の主な災害

 

No.

発生年月

要因 

    

被害概要

1

大正15年9月

集中豪雨  

広島市

山本川(祇園町死者24名),温品川(温品町,死者4名),畑賀川(瀬野川町,死者69名)他

2

昭和20年9月

枕崎台風

呉市

死者行方不明者2,012名

 

  今一つの例を挙げます。先に私が書いた例の岡山県真備町のことです。市のハザードマップを見ると、洪水可能性の場所が色分けされていて、今回の浸水地域とぴったりと重なっています。それに関する日経ニュースを引用します。

「西日本豪雨で4分の1が冠水した岡山県倉敷市真備町地区は想定される浸水区域や避難場所をまとめた「洪水・土砂災害ハザードマップ」を2016年に作製していた。今回浸水した区域と予測した区域はほぼ同じで想定内だったが、多数の犠牲者が出た。「見たことがない」という住民もおり、市からは「繰り返し確認を促すべきだった」との声も出ている。

  「ハザードマップは一度も見たことはなかった」。真備町地区を流れる小田川が決壊した堤防近くに住む穂井田良さん(64)は悔やむ。倉敷市が6日に流した避難指示の放送は聞き取れなかった。実際に川を見に行くと水位は高くなく、その日は自宅で過ごした。 7日未明に堤防は決壊。数分後に自動車で避難を始めたが、渦を巻きながら水が迫り、間一髪で逃れた。「昔から堤防が決壊したら民家の2階まで浸水すると言われていたが、まさか本当に起こるとは……」と苦い表情で振り返った。

 ハザードマップは水防法に基づき、国や都道府県などの河川管理者が洪水の危険性が高いとして指定した河川が流れる流域の市区町村が作る。河川管理者が予想される降雨量や堤防の場所などを基に作った浸水想定区域図に市区町村が避難所などを加える。17年3月時点で全国で約1300市区町村が公表しており、倉敷市も16年にマップを作り全戸に配った。 真備町地区は今回の堤防決壊で地区面積の4分の1が水没し、浸水区域はハザードマップの想定とほぼ同じ。」


  「まさか自分が巻き込まれるとは」というのが毎度繰り返されます。

  こうした災害を見るにつけ、東日本大震災の津波で家を流された大船渡の漁師の人のインタビューを思い出します。

「俺の爺さんもチリ地震津波で家を流された。そのまた爺さんもその昔津波で家を流されたそうだ。俺もだ。でもまたここに家を建てるさ。50年くれーたつとその家も流されて、息子や孫はまた新しい家に住めるさ」。

  すごい達観だと思いました。日本人の場合、「そこに暮らすということ」はそういうことなのでしょうか。でも達観していない人は、お気をつけくださいませ。後悔先にたたず。


   それにしても死者が200人を超える大災害の中、首相を囲んで自民党の幹部などが飲み会を催し、それを自慢げにネットにアップする神経がわかりません。しかもその連中は、その後にドサクサ紛れで参議院議員の定数を増やすという決議をしています。これまで必死に定数削減を行ってきたのはなんだったのでしょう。

  定数増は許しがたい暴挙です。

 

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5 コメント

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諦観と天災 (Tomo)
2018-07-14 19:32:16
最近の被災地情報を見るたびに、ローン組んで家を建てるのはリスクだなあと思います。それでも、持ち家信仰は無くならないでしょうね。落合陽一も書いてますが、高度経済成長の三点セットの一つが住宅ローンだそうですから。
先生の仰るとおり、リスク管理が出来るようになれば良いのでしょうが、残念ながらそんなことは教えてくれないし、消費を煽るだけの・・・・

ところで、知人が興味深い薩摩焼の窯元の話等を書かれてましたので引用します。

ー以下引用
韓国にルーツを持ち、日本に根を下ろして生きてきた者として、沈壽官さんは両国の文化について、こんな話をしました。

「韓国の古い陶磁器としては、高麗時代の青磁があります。ところが、14世紀末に李氏朝鮮が成立すると、それまでの青磁は打ち捨てられ、以後は白磁一色になりました。それまでのものを否定して、新しいものを創っていく。否定と創造の文化です。日本はまるで異なります。災害から逃れられない社会だからでしょうか。日本人の心には無常観が染み込んでいます。そして、連綿として受け継いできたものを大切にして、それをより良いものにしていく。諦観と継承の文化と言っていいのではないでしょうか」・・中略・・
日本も韓国も、大昔に中国の漢字を導入して長い間使ってきました。日本はその漢字を崩して平仮名と片仮名を生み出しましたが、漢字もそのまま使い続けました。一方の韓国は、15世紀に漢字とは関係なく「ハングル文字」を生み出し、その後、歴史的な経緯もあって漢字を締め出して今日に至っています。現在の両国の言語状況もまた「否定と創造」、「諦観と継承」の一例のように思えてきます。
 歴代政権のトップが追いつめられ、断罪される韓国。一時は野に下ったものの自民党が息を吹き返し、権力を握り続ける日本。これも「否定と創造」、「諦観と継承」の一例かもしれません。
ー引用終わり

我々に染み付いている?「達観」or「諦観」。
これだけ災害が続くと「喉元過ぎれば・・」でなく、真剣に一人ひとりがリスク管理について考える時代なのでしょうね。
返信する
Unknown (目白のおっちょこちょい)
2018-07-17 09:55:02
私は先祖代々江戸に住んでる家系の末端ですが、色々言い伝えが残っていて未だにその教えを守っています。
・川のそばには住むな
・川向こうには住むな(向島や深川)
・米屋は信用するな
江戸時代から地震と火事、近年では戦争にはやられているので、この手の言い伝えには事欠きません。
私は、ハザードマップも確認しますし、地震の時の想定被害も確認しています。
そして怖くて武蔵野台地から離れられませんので、家賃が高いですが目白に住んでいます。

私と同じく子育て中の知り合いは「家賃補助が出る」ので嬉々として台東区に引っ越しました。こちらから見ているとまさに「死地に赴く」との感がしましたが、この知り合いはハザードマップも見たようですが「まあ大丈夫だろう」という希望的観測で特に懸念はなく目先の生活が優先でした。
怖い怖い。

ヨーロッパから見たら「良く地震が多い日本に住んでるね!」と思われるかもしれませんが(笑)

返信する
様々教えていただき有難うございます。 (さっちん)
2018-07-17 20:27:58
もうすぐ現住所に住み始めて5年になります。
私は、恥ずかしながら、ハザードマップ、初めてちゃんと目にしました。
近くの川(直線距離600m)が氾濫したら、1階軒下まで浸水でした。。。
しかも液状化の危険あり。
知らぬは私ばかりで、家族は知っており達観しているのか。
相談してみます!
返信する
目白の台地のおっちょこちょいさんへ (林 敬一)
2018-07-19 13:55:32
お暑うございます。

ご先祖様からの言い伝え、

>・川のそばには住むな
・川向こうには住むな(向島や深川)
・米屋は信用するな

いいですね。その通りだと思います。向島・深川にお住まいの方がいらしたら、ごめんなさい。ちょっと住居費が高いのは、命と住宅の保険代と心得ましょう。

おとといもきのうもこんなに暑く熱中症警戒警報発令中の中、子供がなくなってしまったり、運動場で集団熱中症になる子供が出るなど、警戒警報を軽視する人たちが多いのにあきれるばかりです。

子供の場合は学校側の注意が絶対必要です。

災害ハザードマップをいくら配布しても、無視する人たちが多ければ役に立ちません。

少なくともこのブログの読者のみなさんは無視しないで気を付けましょうね。

返信する
さっちゃんへ (林 敬一)
2018-07-19 13:58:07
私のブログをお読みいただき、ありがとうございます。

>様々教えていただき有難うございます。

どういたしまして、お役に立てれば幸いです。

>ハザードマップ、初めてちゃんと目にしました。
近くの川(直線距離600m)が氾濫したら、1階軒下まで浸水でした。。。
しかも液状化の危険あり。

えー、600mあっても軒下まで浸水とは、ショックですね。

でも気づいたからには、警戒を怠りなく!
返信する

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