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香港と台湾選挙2

2020年01月17日 | ニュース・コメント

  前々回の記事で私は「次は香港の区議会選挙についてです」と申し上げましたが、ゴーンの言いたい放題に反撃を食らわせたくなって「公開質問状」というアイデアを出しました。ゴーンについてはその後の個別インタビューなどもあり、報道が続いていますので、言いたい放題に一撃を与えるためにも早くマスコミが私のアイデアに乗ってくれることを希望します。

  では中国と香港の問題に戻ります。台湾の総統選挙は「今日の香港は明日の台湾」という追い風があって、民主派の蔡英文氏が大勝利を飾りました。めでたしめでたし。中国はその勝利を報道しないといういつものブラックアウト戦術に出ています。海外のニュース番組の途中でヤバい画面になると放映を中断するというミエミエの手を使っていますが、やればやるほど民意は離れるということをわかっていないようです。いや、正確に言えば、わかっていても反政府の動きを封じるためにやらざるを得ないのでしょう。

   現在の香港の若者たちのデモ隊の活動とそれに対する香港当局の鎮圧は、SNSのおかげで手に取るように見ることができます。いきなりの銃撃も世界に衝撃を与えました。それでも動画だけでは若者たちが何を考え、将来どうしたいのかついて把握するのは難しいと思います。NHKBSの番組、「激動の世界を行く」はそんな中、11月24日に行われた香港の区議会選挙の様子を長期取材し、詳細にレポートしてくれました。それをかいつまんで以下に紹介しながら、私のコメントをまとめてみました。

  区議選の焦点は民主派と親中派の正面切っての対決でした。そもそも区議会選挙という名が、我々日本人にとっては地方の小さな選挙でしかないというニュアンスのため、何故そこまで注目されるのかよくわかりません。そこで香港の政治体制をちょっとお知らせします。構造は以下の3層になっています。

1.行政長官;トップに君臨。本来は07年に市民による普通選挙に移行するはずがそうはならず、04年の選挙から少数の選挙人による名ばかりの選挙で実質は中国政府の思うがまま。それに抗議して始まったのが14年の「雨傘運動」でしたが、鎮圧されています。

2.立法会;日本の国会に相当。議席の半数は香港市民による選挙、あとの半数は職能団体による選挙であるが、実質は中国政府の思うがまま。

3.区議会;日本の地方議会に相当。香港全体で18選挙区、479議席。うち94%の452議席が市民による選挙であるため、市民の声を反映できる唯一の選挙。

  番組では中国取材のスペシャリストともいうべきNHKの鎌倉千秋キャスターがマイクを持って取材をしていました。彼女は母親が台湾人で、慶応大学の総合政策学部を卒業していますが、その他に台湾や中国の大学院などにも留学し、中国語、英語、日本語のトライリンガルの才媛です。番組ではデモ隊と警察部隊の衝突を間近で取材したり、ある選挙区の民主派候補と親中派候補の戦いぶりを選挙の開始から投票結果まで追いかけていました。ご承知の通り、もちろん民主派の勝利に終わっています。

  前回選挙では民主派が得た議席はわずか3割、親中派は7割を占めていましたが、今回の選挙では民主派が8割へと大幅増になり、親中派はたった2割に終わりました。半年前に始まった「犯罪者の中国送還反対運動」をきっかけに始まった若者たちによる運動と警察による過剰とも思える警備が、香港市民全体を動かしたのでしょう。投票率も71.2%と高い投票率となり、親中派は大敗北を喫しました。

 

  一国二制度を確約して97年に始まった中国による香港統治ですが、行政長官の普通選挙の約束は履行されず、立法会も中国の思うがまま、学校教育は中国色を強めるなど、この20年余りで2制度の約束はどんどんくつがえされ、中国共産党による独裁色がどんどん強まっています。

  しかし私は現在の学生を中心とした破壊行為を伴う反政府デモのやり方に賛成はしません。もっと非暴力的行動に徹しないと、どこで天安門事件の二の舞になるかわからないからです。店舗や駅舎への破壊行為は中立的な人々の反感まで買うことになります。彼らはスマホの地図上でひとつひとつの店舗に民主派と親中派のレッテルを張りつけて、破壊対象を特定しています。たとえ親中派の店舗であっても、デモの参加者に対して害を及ぼしているわけではありません。そのテンポを襲撃対象にする行為は香港のみならず国際的にも支持を得られるものではないと思います。

  中国という国、そして共産党のひどさを見くびってはいけない。その実態をみなさんにもお知らせしたいと思い、わざわざ30年も前の天安門事件のドキュメンタリーに触れたのです。デモの続く過程で香港は観光客を失い、アジアの金融センターとしての地位も失ってしまいそうです。それだけでなく、この状態が続くと中国共産党は香港全体を収容所にしかねない。ウィグルやチベットをみれば、それが決して杞憂ではないと思うのです。

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