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どうするプーチン 2

2023年06月24日 | ロシアのウクライナ侵攻

  プリゴジンが牙をむき、プーチンが本気で怒っていますね。

いよいよ内戦かと思わせるほどのののしり合いが始まりました。そもそも日本で報道されているプリゴジンの枕詞、「プーチンの料理人」。そしてレストランの経営者で財を成した、という決まり文句は全くの間違いです。

 ちょっと考えれば、そんなことで5万人以上の軍人と武器を調達し実戦投入なんかできっこないことはわかります。実際には彼の経済力の源は、アフリカなど国内で混乱を極める国々の独裁者に軍事的支援をし、見返りとして資源の利権を得て莫大な財をなしているのです。

 今回の反乱は、私が5月4日の投稿で指摘したプリゴジンの反プーチン的言動がいよいよ言葉から実際の行動に移されたものだと思われます。

 そこでまず5月4日の投稿を再掲しておきます。

5月4日 投稿

タイトル;どうするプーチン、ワグネル・プリゴジンの驚くべき声明

再掲

やっと今頃になってロシアの民間軍事会社ワグネルのプリゴジン氏の「悲痛な叫び」が報道されるようになりました。

 私が最初にそれをTVで見たのは4月中旬テレビ朝日の番組ワイドスクランブルでした。日本ではそれ以外の報道はあまり見かけませんでしたし、欧米のメディアもプリゴジンの泣き言など信用できないとか、自己アピールのプロパガンダという評価が多く、報道はほとんどされていませんでした。

 しかし私はプーチンに反旗を翻したとも取れる声明を、ウソや冗談で語るとは思えず、いつかはこれを投稿しようとため込んでいました。その内容をサンケイニュース4月15日から引用します。

引用

ロシアによるウクライナ侵略で、露軍側で参戦している露民間軍事会社「ワグネル」トップのプリゴジン氏は14日、「プーチン政権は軍事作戦の終了を宣言すべき時だ」とする声明を交流サイト(SNS)上で発表した。同氏はまた、露軍は「東部ドネツク州全域の制圧」とする主目標を達成できそうもない上、ウクライナ軍の反攻で敗北する可能性があるとも警告した。

ワグネルの部隊は最激戦地の東部ドネツク州バフムトを巡る攻防で露軍側の主力を担当。プリゴジン氏は、露軍側の戦力低下を認識し、作戦の終結を求めた可能性がある。ただ、プーチン政権は「軍事作戦は目標達成まで続ける」としており、現時点で停戦に動く可能性は低いとみられる。

プリゴジン氏は声明で、ロシアはウクライナ領の重要地域を占領し、露本土と実効支配するクリミア半島を結ぶ陸路も確保するなど十分な「戦果」を達成したと指摘。侵攻開始から1年に当たる今年2月24日時点の前線を停戦ラインとすべきだと主張した。停戦しない場合、露軍はウクライナ軍の反攻で占領地域を奪還され、威信も失う恐れがあると指摘。「ウクライナはかつてロシアの一部だったかもしれないが、今は国民国家だ」とも述べ、「ウクライナはロシアの一部だ」とするプーチン露大統領の持論に暗に異を唱えた。

引用終わり

  この声明ではプーチンが侵略の根拠としている「ウクライナはロシアの一部だ」という歴史認識を事実上否定し、戦線の膠着は今後敗北につながるとまではっきりと言っていました。SNSテレグラムを使ったこの声明自体、国家反逆罪で終身刑に値する犯罪行為です。これを取り締まれないということは、「プーチンにはオレ様を逮捕する力はない」と言っているに等しいのです。

 彼は4月末になってさらに以下のような声明を出しました。4月30日、TBSのニュースサイトから引用します。

引用

東部の要衝、バフムトで激しい戦闘が続く中、ロシアの民間軍事会社ワグネルの創設者は、「ロシア軍が弾薬供給で協力しなければ前線を離脱する」と述べました。
複数の独立系メディアによりますと、ウクライナへの軍事侵攻で戦闘員を送っているワグネルの創設者・プリゴジン氏は29日に公開された軍事評論家のインタビューで、「ワグネルへの弾薬供給の問題をめぐりロシアのショイグ国防相に対し最後通牒として手紙を送った」と明らかにしました。
4月28日までに問題が解決されなければ、ウクライナ東部の要衝バフムトを去るとしています。
インタビューでプリゴジン氏はワグネルについて「間もなく存在しなくなる」とも語っています。また、プリゴジン氏はウクライナ側の反転攻勢が5月15日までに開始されるとの見方を示したうえで、ロシアにとって「壊滅的な結果をもたらす可能性がある」と指摘しています。
プリゴジン氏は、今年2月にもワグネルに弾薬が十分に供給されていないとショイグ国防相らを批判していました。

引用終わり

 

  主力軍の司令官がこれほどの弱音を吐くというのは、プーチン政権に対する積年の恨みを込めた声明にも思えます。2度目の声明となると、さすがに日本のメディアも注目せざるを得なくなり、あわてて報道を始めていますね。一方アメリカではこうした流れに呼応するように、報道官から以下の声明が流されました。

5月1日のロイター電です。

引用

米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は1日、ウクライナ東部ドネツク州の激戦地バフムトでの戦いでロシア軍の死傷者は過去5カ月間で10万人に上るとする米情報機関の推計を明らかにした。

カービー氏は記者団に対し、このうち死者数は2万人を超え、その半数はロシアの民間軍事会社「ワグネル」の戦闘員と見られると語った。その上で、ロシアは軍事備蓄や軍部隊を使い果たしたとし、「ロシア軍が主にバフムトで試みた攻勢は失敗に終わった」と指摘。「ロシアは実質的に戦略的かつ重要な領土を掌握することはできなかった」と述べた。

さらに、ロシア軍がバフムトで達成した一定の前進は「ひどい犠牲」を伴ったとし、10万人を超える12月以降の死傷者数については、第2次世界大戦のガダルカナルの戦いにおける米軍の死傷者数の3倍に相当すると述べた。

また、同地域におけるウクライナの防衛は引き続き強力としたほか、米政権が新たなウクライナ向け軍事支援パッケージを近く発表すると見通しとした。

引用終わり

 まさか太平洋戦争でのガダルカナル戦が比較として出てくるとは驚きです。そしてまた5月4日に3回目となるプリゴジンの非難がクレムリンに対して行われました。「ワグネルが消滅したら、クズ官僚のせいだ」。この悲痛な叫びともいえる牽制にプーチンは反論もせず、さしたる反応すら示していません。打つ手を持たない証拠でしょう。

 それとともにロシア国内ではテロ行為とおぼしきカフェでのプーチン支持派の爆殺や列車の転覆、そして燃料施設の爆破などが続いています。極めつけは、5月4日、遂に無人機でクレムリンを攻撃したとのニュースが入りました。ウクライナは犯行を認めていません。

 それでもクリミア半島セバストポリの軍事燃料施設を大規模に破壊したり、ウクライナに近いロシア側で貨物列車が別々に2回、爆発装置で爆破され脱線する大きな事故が起きています。すべてをひとくくりにはできないと思いますが、ロシアの占領地を含む内部構造は、意外にもろい可能性があります。

 クレムリンを2機のドローンで攻撃した件について、日本の軍事専門家は午前3時という時間を考え、またスピードの遅いドローンを早めに迎撃できていないことを理由に、ウクライナからの攻撃ではなく、自作自演、あるいはワグネルの実行説を指摘しています。5月9日第2次大戦の戦勝記念日にプーチンが姿を見せれば、自作自演説も有力になるでしょう。彼は暗殺を極端に恐れていますので、ウクライナ側、あるいはロシア国内の反プーチン派の攻撃であれば、出てこれないはず。クレムリンへのドローン攻撃が自作自演か否かが判明するかもしれません。

 今後西側からの最新型戦車やハイマース、ミサイルを迎撃するパトリオットなどの武器を支援してもらったウクライナの5月攻勢に期待したいところです。ゼレンスキー大統領も近日中の反転攻勢を語ってはいますが、5月2日のTV朝日のワイドスクランブルで解説していた東大先端科学技術研究センター講師の小泉悠氏は、「それほど簡単ではないはない」と解説していました。彼は昨年の侵略直後から頻繁にTVに出演していますが、海外からの情報を多くつかみ、いつも的確な見通しを知らせてくれます。反転攻勢が簡単ではない理由の一つは、戦車の台数が見込みより少なく、弾薬なども十分とは言えないからとのこと。

 いよいよ地面が乾いてくる5月に入ったため、私はウクライナの反転攻勢に期待したいと思います。

 さー、どうするプーチン?

再掲終わり

 

 いよいよ尻に火が付いたプーチンですが、はたして本当に内戦状態にまでなるのか、逆に雨降って地固まるのか。

 今回のののしり合いは単なる言葉の応酬だけではないように思われますので、しっかりとフォローしていきましょう。もちろん私の希望的観測はプリゴジン・ワグネルのモスクワ侵攻です。それで勝てずとも、プーチンに重大な危機をもたらすだけでもウクライナには大きな支援材料になります。

 

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