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香港と台湾選挙

2020年01月10日 | ニュース・コメント

  今年のスキー初すべりから戻りました。行ったのは群馬県の丸沼高原スキー場です。いつもシーズン最初はこのスキー場に行っています。理由は他が雪不足でも比較的雪があるからです。ロープウェイ到着地点の高度が2千メートルととても高く、シーズン初めでも雪がしっかりと付いていました。私が好きでよく行く八方尾根でも最高地点の高度は1,800メートルですから、ここの高さが際立っているのがわかります。12月下旬になってもゲレンデの一部が雪不足で閉鎖されていたため心配だったのですが、年末年始の荒れた天気でかなりの降雪があり、一気にほとんどの滑走コースがオープンしました。スキーヤーやスキー場にとっては嬉しい雪も、雪国の方にとってはあまりよろこばしいことではないかもしれませんね。

 

  どのニュースもゴーンと米国・イランのニュースばかりですが、それは置いておき、今回は天安門事件から香港の問題、そして台湾の総統選挙についてです。蔡英文再選を目指す民主派と、親中派が激突していますね。民主派には「今日の香港は明日の台湾」という追い風が吹いたため、勝利は間違いないようです。

 

  一方、昨年から香港の惨状は目に余るものがありますね、本当に憂慮されます。国際金融におけるアジアの中心の一つであったはずが、97年の中国への返還でいったん潮が引くような場面はありましたが、その後は中国資本の本格進出により不動産が息を吹き返し、それが他の産業にも波及していました。しかし今回の混乱で国際的地位がもう元に戻ることはないと思われます。共産中国支配の香港から国際社会は離れるのみでしょう。

  97年の返還まではアジアの金融拠点としての機能を有し、多くの金融機関とそこで働く関係者が居住していました。アメリカの投資銀行も拠点を構えていましたが、返還とともに香港を脱出する動きが見られました。金融だけではなく、香港は中国の出島としての機能を持っていました。海外企業が中国に出る際の窓口であったり、逆に中国が外に出る時の窓口でもありました。しかし中国本体から海外への資本や人の移動が自由になるにしたがって、中国は出島であった香港を必要としなくなったのでしょう。それが中国の香港に対する厳しい対応からうかがえます。

 

  年末に2つのNHKBSのドキュメンタリー番組を見ました。一つは「天安門事件」。もう一つは香港の区議会選挙と台湾の選挙についてです。候補者への密着取材で、二つの別番組を連続放映していました。天安門事件は30年も前の事件ですが、現在の香港の状況に共通性を見出し、連続放映したのでしょう。

  「天安門事件」のドキュメンタリーは相当なカネと時間を使い、様々な立場で事件にかかわった人たちの取材に成功した優れた番組でした。様々な立場とは時の政府側で民主化への道を模索し、最後には失脚した趙紫陽総書記の側近やその他政府の要人。逆に鄧小平の側にいて、鄧小平によるデモ隊排除と戒厳令を発動、実行する側にいた人。彼の「排除するため武力行使しろ」という指示が書かれた内部文書も出ていました。やはりトップの命令だったことがうかがわれます。

  また実際にデモを行った側では、主導的な人々やデモ参加者で撃たれ負傷した人たち、戦車のキャタピラーに巻き込まれ両足を失った人もインタビューされていました。この人はあの有名な買い物袋を持って戦車に立ち向かった「戦車男」あるいは「無名の反逆者」と呼ばれた人ではありません。また、危険を顧みず現地で取材を続けたBBCの取材陣、そして逆に学生を包囲した軍人の中で実際に学生に向かって発砲し、いまだ中国に留まっている人。軍人でも海外に逃れて今回初めて発砲の事実を告白した人までいました。両サイドからこれだけ多くの関係者が含まれていたので、かなり真相に肉薄したものだと感じました。

   この番組のおかげで私はいままで知らなかった多くのことを知ることができました。特に元兵士でデモ隊に向け発砲をした人の証言は衝撃的でした。彼は今アメリカに住んでいるので顔も出していましたが、発砲に関して次のように証言していました。「我々はデモ隊への発砲などしたくなかった。しかし軍には我々を見張るいわば憲兵隊がいて、発砲しなかったりすると反逆者とされ罰せられるため、無差別的に発砲せざるを得なかった」。同胞を無差別に撃った一兵卒の実態とはこうだったのだということを初めて知り、衝撃を受けました。

 

  次回は香港の区議会選挙の番組内容について記します。

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