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講演会の内容 地政学上のリスク

2016年10月23日 | 地政学上のリスク

  私は11月中旬に講演会を予定していていることをお伝えしました。今回はその中で述べる内容について、みなさんに簡単にその一端をお知らせしたいと思います。

   講演会のタイトルは「日本のゆくえ」ですが、講演内容はこれまでいつも経済・金融・財政に偏っていましたが、今回は若干範囲を広げ、地政学上のリスクも見据えて、「日本のゆくえ」を見ることにしました。

   理由はBREIXTやトランプの台頭などに見られるように、純粋に経済的問題ではない問題が、経済問題に大きな影響をもたらすことが多くなっているからです。

   BREXITにしてもトランプ現象にしても、よく言われるように根っこには共通点があります。それは経済格差の拡大からくる反グローバリズム、反移民、反ウォールストリートなどが国民のナショナリズムを煽り既存の政権基盤を揺るがすという点です。こうしたナショナリズムはいわゆるポピュリズムと結びつき、それが大きな影響力を持ってしまうと、これまでの秩序が大きく崩れるおそれがあります。そうしたことを懸念して、以下のようなストーリー建てで講演会を行います。

タイトル;日本のゆくえ

1.国際秩序の変化

・アメリカの覇権に対するロシアと中国の挑戦

特に台頭著しい中国への対処が最重要で、国際法を守らないと宣言する大国が出現した。

 ・中東の混乱がもたらした欧州の弱体化

経済的にはメリットが多く成功するかに見えた統合欧州が、中東からの移民問題で国内が割れ、それが統合欧州にも亀裂を入れ、崩壊の危機に発展する恐れさえ出てきた。

 ・今後の地政学上のリスクはどこにあるか

日本周辺の独裁政権の暴発。北朝鮮、中国。さらにナショナリズムを煽るポピュリズム政治が新たなリスク。フィリピンの例では、東アジアの安定がドゥテルテ大統領の中国接近によりくつがえる恐れまででてきた。

 

2. 国際秩序の変化が日本へどう影響するか

・地政学上のリスクは日本経済に甚大な影響をもたらすか

中国の進出が東シナ海、南シナ海にとどまらず太平洋に拡大すると、日本が防衛すべき領海・経済水域が広大になり、防衛費が上昇。石油輸送路だけでもホルムズ海峡とマラッカ海峡だけでは済まなくなる。北朝鮮の暴発に対してもより強固な備えをする必要が出てきた

 ・国際秩序への貢献で日本は間違ってはいけない

 上記の国際的環境を踏まえ、議論は少し飛びますが、

3.アベノミクス検証

・日銀の自己検証

・検証のないアベノミクス

・大丈夫か日本

  財政、年金、保険は

 4.我々は何にどう備えたらいいのか

 国際秩序の激変リスクに備える手段も、やはり個人資産の分散。といっても、やはり円からドルへのシフト

 

  今回は一方的に講演をするというより、参加者のみなさんと多くの時間をディスカッションに当てることにしています。そのためサマリーを作ることもしていませんので、それをここで披露することができません。


   この講演会のテーマの一つである「国際秩序の変化」に当たることで注目され日本に影響が出そうなのが、今度日本を訪問するフィリピンのドゥテルテ大統領です。私の忌み嫌う無責任なポピュリズムの旗手として、世界のメディアではトランプと並び注目されています。

   なにせフィリピンが折角勝ち取ったハーグの仲裁裁判所の完全勝訴判決を自分勝手な取引材料にしようとしているのですから。

   この判決に関して、まず7月のニューズウィークの名前入り記事を引用します。書いているのはけっこう名の売れている小原凡児という東京財団の研究員の方で、中国で防衛駐在官を経験した方です。

タイトルは、「仲裁裁判所の判断が中国を追い詰める」

『仲裁裁判所は、中国が主張する南シナ海のほぼ全域にわたる管轄権について、「法的な根拠はない」として、全面的に否定した。フィリピンの主張をほぼ全面的に認めたのだ。そして、この「判断」という言葉には、法的拘束力を持つニュアンスの言葉が使用されている。中国とフィリピンは、この「判断」に「従わなければならない」のである。従わなくても罰則規定はないが、国際社会の中で「無法者」のレッテルを貼られることになる。』

   私も7月までは、お説ごもっともと思っていたのですが、ドゥテルテはすでにトンデモないことを中国に向かって言い放っています。

「もしオレの出身地ミンダナオに鉄道を敷いてくれたら、判決を無視してやってもいい」。

   中国を追い詰めるどころか、それをエサに地元に利益誘導するぞと世界に宣言しているのです。このことはあまり報道されていませんが、フィナンシャル・タイムズはドゥテルテを非難する社説で書いていました。

   反対に、この言葉は覚えている方もいらっしゃると思います。大統領になりたてのころ彼が南沙諸島に関して言っていた「中国の難癖に耳を貸す必要はない。オレが奴らの島に直接出向いてフィリピンの国旗を立ててやる」

   本来であればこの判決こそ国際的な海洋秩序を取り戻すものです。それを期待していた日本を初めとする周辺国やアメリカにとっては、彼の変身は全くの想定外です。

   そして今回の中国訪問ではさらに世界が驚愕するほどの発言がありました。

「アメリカとの決別宣言」です。一昨日北京でのスピーチで、「経済的にも軍事的にもアメリカとは決別だ」と宣言しています。

  すでに彼が国内で法律を無視し、超法規と称し麻薬犯罪人を3千人も処刑しているのは世界の誰もが知ることです。大統領自身が無法者となってリンチを行い、それを警察が支援しているので、彼を殺人犯として逮捕できる警察はいないし、国民はますます支持を強めています。

  その人権無視ぶりを非難したオバマ大統領を「売春婦の息子」だとか、「地獄に堕ちろ」とののしっていて、挙句の果てにアメリカとの長年の同盟関係を無視し「米比軍の合同訓練はもうしない」とも言っています。アメリカがフィリピンに制裁を加えたとしても「武器は中国とロシアがくれるって」と言ってはばかりません。

   そして今回のアメリカとの決別宣言です。

   彼の場合は国民の支持が8割を超えていて、トンデモ発言をすればするほど支持率は上がるという典型的ポピュリズム政治の様相になっています。こうした事態は半年前までは誰も想定していませんでした。

   この人間の一番の問題はトランプと同じで、支離滅裂なことです。典型的サイコパシーと言えるでしょう。従って今週日本に来たらきたで、また正反対のことを平然と言い放つ可能性もあります。

  トランプのことを書いていた時に私は一連の大衆扇動・独裁政治の代表として、ロシアのプーチン、トルコのエルドアン、ドゥテルテ、金正恩、習近平、そして過去の人ではありますが、カダフィ、カストロ、チャベスなどの名前を挙げました。

   こうした連中の悪夢のような政治が、少なくともアメリカでは出現しなくなったことに安心しています。しかし、彼らの言動が世界の安全、政治、そして経済にも甚大な影響を及ぼす可能性があるため、今後もしっかりフォローするつもりです。

コメント (2)
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