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民主党大会 アップデート

2016年07月28日 | アメリカアップデート

  ブログのアップデートが滞りがちで、すみません。理由は共和党と民主党の党大会の様子をライブで見ているためです。アメリカ国債をみなさんにお薦めしている私が、最大のリスクであるトランプ・リスクをしっかりと評価できなくては無責任極まりないため、CNNをしっかりと見ています。私自身が大統領選挙の推移を見通し、それをみなさんにお伝えする義務があると思ってのことです。

   先週は共和党大会の様子を私なりにお伝えしました。それに対して現役の大阪のTVジャーナリストで、主に政治問題を扱っている方から、以下のようなコメントをいただきました。その要旨は、

   林さんの解説、トランプ氏の解析、本当に興味深いです。「大衆扇動者たちの手口は世界共通」、「今が悪いのはコイツのせいだと悪者を作り出し、俺が退治して見せる、 という古典的手口」は、まさにテレビ受けするもので、彼の発信するキャッチコピーは短く力強い、しかし内容がないとのコメントは、何度も何度もニュースやワイドショーで流れました。日本の政治でも同様な手法を使う政党があり、無責任発言で人々をひきつけています。この手法は、人々に政治的関心を呼び起こさせる良い一面もあるのですが、一方で、複雑な問題を矮小化して誤認させ、安直な解決方法を信じ込ませるという取り返しのつかない一面もあります。

   というものです。現役のジャーナリストの方からこのような言葉をいただけるとは光栄です。

   さて、現在は民主党大会の3日目が開催されていて、私はそれを見ながら書いています。まずハイライトが初日に来ました。ミッシェル・オバマのスピーチをライブで聞いたのですが、これは本当に感動ものでした。女性代表として彼女が言ったのは、

 ・高かったガラスの天井をヒラリーが破ることになる

・すべての女性の夢を実現し、遂に女性が大統領になるときが来た

・これから4年あるいは8年、我々の子供の将来を任せられるのはヒラリーだ

・トランプはMake America Great Againと言うが、アメリカはまぎれもなく今も地球上で一番グレートだ

・人種や思想信条を超えて、この国の将来をヒラリーに任せよう

  アメリカというのはスピーチの国です。一国の歴史をスピーチで変えうる国です。リンカーンのゲティスバーグ・アドレス、ケネディーの就任演説、スティーブ・ジョブズのスタンフォード大学卒業式スピーチなどがグレートスピーチの代表でしょう。私が大学に入ってESSに入部したとたんに丸暗記させられたのは、決して短くはない、ケネディー大統領の就任演説でした。アメリカがスピーチの国であること初めて知った瞬間でした。

   女性大統領が誕生すると、ミッシェルのスピーチはヒラリー礼賛ではありますが、歴史に残る名スピーチの一つになる可能性があると思いました。

   そしてヒラリーの競争相手であったバーニー・サンダースのスピーチもスケジュールを前倒しにして初日に行われ、それもライブで聞きました。彼も自己主張を徹頭徹尾抑え切り、これまた感動ものでした。

   大会寸前に民主党内のスキャンダルが飛び出しました。公平であるべき民主党全国委員長が裏でバーニー・サンダースを阻止し、ヒラリーに加担したことがバレて辞任したのです。    

   それにも関わらず、彼は怒ったりせず火消し役になって民主党をまとめるために、スピーチの順序を初日に前倒しにして、ヒラリーを完全に支持しました。あの曲者爺さんとは思えないほどの寛容さを示し、報道からも称賛されていました。

   普段客観的な姿勢を保つ報道もこの二人のスピーチはほとんど手放しで称賛していました。アメリカ大統領選挙は党大会でのスピーチが大きく左右することがたびたびあります。その決定打が2連発された、それが私の抱いた初日の感想です。

   いま実は3日目の様子をライブ見ているのですが、その前にトランプのトンデモ発言がアメリカを駆け巡り、非難の嵐が起こっています。トランプはヒラリーの消えたメールについてロシアのハッカーに「これを聞いていたら、ハッキングして見つけてくれ」と言い放ちました。これにはすべての報道をはじめ共和党のポール・ライアン下院議長までがトランプ発言を非難しています。

   民主党の応援演説もこれに触れ、軍人代表などが「命を賭して国を守っている我々の仲間を見捨てるつもりか。プーチンを仲間に入れるなどという人間に、絶対に軍の全権を掌握させてはならない」と言わせました。なんともよすぎるタイミングでの放言です。

   ついでに本日のマイケル・ブルームバーグの応援演説にも触れます。これも秀逸でした。彼はもともと私の先輩でソロモン・ブラザーズのボンド部隊にいて、共同経営者・パートナーになり、その後ブルームバーグ社をゼロから立ち上げ、世界一の金融情報会社にした実績を持ちます。そして共和党からニューヨーク市長になり、現在はどの党も支持しない独立派です。

   彼が言っていたのは、

・自分はどの党の支持者でもないのに、どうしても言いたいことがあり、ここに出てきた

・アメリカと言う国をトランプなどに絶対にまかせてはならない。大統領選挙は賭け事ではない

・選択肢は国内政治と国際政治に実績を持つヒラリー以外ありえない

・同じビジネスマンとして言うが、彼のビジネスのやり口は騙しと借金の踏み倒しで、訴訟を何千件も抱え、何千人も首切りをし、まともに自慢できるようなビジネスマンではない

・その上自分の税務申告書を公表しないが、プーチンに近いロシア人へカネを流している可能性があるからだ

・このような人間にアメリカの未来を賭けてはならない

   かなり強烈なスピーチでした。ニューヨーク市長時代、給与を年1ドルしか受け取らずに3期も務めた実績を持つブルームバーグならではの迫力のスピーチだったと思います。

  3日目の最後はオバマ大統領の出番でした。オバマの最初の言葉は事の本質を突いていました。

 「今回の選挙を外国からみたら、ちっともわけが分からず、『いったいこいつらは何をしているんだろう』と思うにちがいない。」(爆笑)。

 

 そして主旨は、

・共和党のレーガン大統領は「アメリカは山の頂にある光り輝く国だ」と言ったが、トランプは「犯罪の巣窟で、失業者があふれ、外国に乗っ取られようとしている国だ」と言っている

・トランプが言うようにアメリカは沈んでなんかいない。今でも地球上で一番偉大だし、一番強い国だ

・この大会を開催している独立宣言の街フィラデルフィアは、自由・平等と人権を重んずる国を象徴している。民主党はそれを守り、ヒラリーはそれを実行してくれる人だ

・ヒラリーはこれまでいつもブレずに仕事を堅実にこなし何事からも決して逃げない。その姿勢は私が一緒に働いた時もそれ以前も、そして将来も同じだ

・ビンラデンを追い詰めたときも決断力発揮したし、オバマケアの元を作ったのもファースト・レディー時代のヒラリーの仕事だ

・(同盟国に費用負担をさせることに関して)NATOなどの軍事同盟にプライスタグを付けるとは、トランプは何を考えているんだ。ビジネスマンらしさが裏目に出ている

・司令官として国のすべてを任せきれ、大統領に最もふさわしいのは、私でもなく、夫のビルでもなく、ヒラリー、あなただ

   この他に夫であり将来のファースト・ジェントルマンであるビル・クリントンや副大統領候補に正式指名されたティム・ケインの演説もあったのですが、私の心をわしづかみにするほどではありませんでした。

   大事なのは明日のヒラリーの受諾演説後の評価で、民主党がまとまりを示したと評価されるか否かです。民主党は少なくともサンダースがきれいな引き際を示し、党内融和を図る演説をしたことで、点を稼いでいます。

   逆に共和党はすでに分裂症状を示しているため完全にミソを付けています。それでも共和党大会直後にヒラリーとトランプの支持率が逆転したことに驚いている方も多いと思われます。これは拮抗する選挙の時のいつもの出来事で、共和党大会後は共和党候補がリードし、民主党大会が終わると今度は民主党候補がリードする。従って、両者が終わってしばらくした時点での評価が本物と言われています。                  

   次回はシリーズに戻ります。

コメント (7)
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