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戦後70年、第2の敗戦に向かう日本 その⒑ 財政問題 世代間格差

2015年03月09日 | 戦後70年、第2の敗戦に向かう日本

   「戦後70年、第2の敗戦に向かう日本」のシリーズも次第に佳境に入りつつあります。前回までのまとめで私は以下の様に述べました。

>ツケを後の世代に先送りすることは世代間格差を決定的なものとしてしまった

  この「世代間格差」はあるのはわかっているけど、じゃ実際にはどれほどの差なのかしっかりと数字で示している議論はほとんど見かけません。私は数字でないと納得できない人間です。第1の敗戦である太平洋戦争も日米の実力の差を数字でしっかりと把握していれば、竹槍で勝とうなどとは思わなかったはずで、数字のない議論は机上の空論です。

  世代間格差を数字で把握するのは簡単ではありません。既製品はないので自作を試みます。数字でどれほどの世代間格差差がありそうかの見当をつけて、それが非常に大きいと若い世代にとって本当にやる気を失うもとになるため、第2の敗戦が見えてくることにつながります。私は二つの数字を考えてみました。

  第一の数字はちまたにあふれる政府債務の大きさですから簡単にみつかりますが、そのうちのいくらが世代間格差になるのか説明を試みます。政府債務を量的に把握するには普通絶対量と対GDP比率でみます。

財務省発表;累積債務 15年3月末見込み 1,010兆円  対GDP比率202%

OECD推計;232% 
(国際比較などで使用されるのは大本営発表ではなくこのOECD数値です。)

  国の債務はバブルの頂点の90年でGDP比率は60%程度でした。EU加盟の必要条件をクリアーできる数字です。その後バブル崩壊の後遺症を緩和すると称して財政出動を繰り返した結果、98年にはすでに120%程度と2倍になりました。崩壊を90年とすればすでに8年を経過し状況はさらに悪化する一方で、前年の97年には山一や拓銀など証券・地銀の破綻が相次いでいます。

  だったら財政出動はしかたなかったのか。いいえそうではありません。アメリカのリーマンショックの破綻処理を思い起こしてください。アメリカは救済する金融機関と破綻させてしまう金融機関を峻別し、破綻するものは破たんさせた結果巨大金融機関は政府からの支援を2年後にはほぼ返済を終えています。製造業のGMですら3年で復活し終えました。そして大型公共事業などはやっていません。延命措置がいかにナンセンスなのかを示す好例です。

  その後も日本経済は低迷が続き政府はさらに財政出動を繰り返し、現状では累積債務は98年の約2倍の230%とバブル崩壊時の4倍近くにまでなってしまっています。この数字は実は太平洋戦争中に戦時国債を発行しまくり敗戦を迎えデフォルトした時の政府債務のGDP比率と同じレベルです。

  財政出動で多少でもメリットを受けた世代は主にバブル生成の主役であった80歳代・70歳代の世代と、ほぼリタイアしかけている団塊の世代です。受益世代は今は返済を免除され、さらに年金や社会保障でメリットを受け続け、返済能力があっても後代に債務を残します。そのツケは甘めに見てGDPの100%、500兆円の債務で、これが絶対人口が少ない後の世代に残されます。これが世代間格差を計る第一の数字だと私は考えています。

  参考までにOECDの数値で主要国債務のGDP比率を比較しますと、アメリカは106%、ドイツは83%です。国際比較からもドイツの80%台はできすぎとしても、100%くらいまでは許容範囲で、それ以上は返済困難になりうる後世へのツケだと考えることができそうです。

  次回は第2の数字をみてみます。


つづく

コメント (25)
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