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日銀クロちゃんの通信簿、その2

2014年09月10日 | 2014年の資産運用
 ドル高が恐ろしいほど昂進しています。このままどんどん行かないことを祈りますが、行かない保証はありませんね。

 さて、前回のクロちゃんの通信簿その1では、デフレ克服の最大の眼目である物価の上昇率を見てみました。おさらいします。物価は消費税増税分を除いた分で示し、それと東大発表の日次統計を比較しました。すると、

総務省指数最近値(2014年07月)     1.14%の上昇  (ただしコア指数は0.3%程度)
東大指数最近値(2014年09月03日)    0.97%の下落

 一応1%を超える上昇率を達成したかに見えますが、いわゆるコア指数は0.3%程度の上昇にすぎず、しかも先行指標と考えられる東大日次指数がマイナス領域に入っているため、2年で2%の目標は実現が困難になってきている、という指摘をしました。


 では経済活性化、そしてデフレ克服を目指して世の中に供給するオカネを増やす日銀の異次元緩和政策がどうなっているかを見てみます。それはマネタリーベースという日銀の統計を見るとわかります。

 このブログでは半年前にクロちゃん就任1周年で通信簿をつけました。その時の数字も並べてみましょう。数字は前年からの増減です。日銀のサイトでみることができます。

                         14年4月  14年8月
マネタリ―ベース、1年の増加額;   +74兆円  +71兆円
日銀当座預金のブタ積み、増加額;  +71兆円  +67兆円


 8月末までの1年にクロちゃんが国債をメチャ買いして供給したオカネは71兆円ですが、そのうちのほとんどである67兆円が日銀当座預金にブタ積みされている様子がわかります。4月も同様でした。

 でも、これだけではちょっとわかりずらいので、世の中の貨幣流通量も並べてみます。この数値は増加分ではなく、実際に世の中にある貨幣の流通高です。

            13年8月    14年8月     前年比
貨幣流通高    45.7兆円   46.0兆円     +0.3兆円


  世の中の貨幣流通高は1年でたった0.3兆円増えただけで、これは誤差です。

 クロちゃんは毎月国債を銀行から7兆円も買って、その代金が銀行から貸し出しなどに回ることを期待していました。しかし実際にはそれらはブタ積みばかりで、流通している貨幣量は去年も今年も46兆円ほどでほとんど増えていません。

 もう一つ大事なのは国債を売却した銀行が、そのオカネで貸し出しを増やしているかどうかですが、ほとんどを日銀の当座預金にブタ積みしているので、もちろんわずかにしか増えていません。
 全国銀行貸出残高の前年比増加率は2%です。しかも都銀はわずか0.4%で、地銀が増やしているので2%になっています。数字は以下のサイトでみることができます。
http://www.zenginkyo.or.jp/stats/month1_01/details/20140905150000.html

  こうしてみると異次元緩和の名の元にバズーカ砲を打ったはずのクロちゃんですが、どうやらバズーカの弾は真上に打ったので、自分に返ってきて自爆しているようです(笑)。それがここまで1年半の異次元緩和の実態です。
 
 ではあと半年で何ができるか。バズーカをテポドンに変えてメチャ打ちするかもしれません。例えば株式市場で株を買いまくり、外債を買いまくって円相場をさらに安くもっていくなどです。しかしそれでも懐具合の改善していない消費者は無駄な買い物などできず、物価は下落するかもしれないし、経済成長率はどんどん低下するかもしれません。

 そしてクロちゃんは自ら、消費税は再値上げしないと国債の信認が危うくなる可能性が大きいというニュアンスの言葉をすでに発してしまいました。

 ということは、彼はアベチャンと一体ですから消費税は何が何でも上げるのでしょう。8%でも庶民の懐はたいへんなのに、10%になったらどうなるのか、とても心配です。
 かく言う私も10%にはいずれせざるを得ない、いや先々はもっともっと上げなくてはいけないと思っています。キリギリス生活をしたつけは、キリギリスが払うべきで、アリん子に払わせることはできません。

「その前にやることがあるだろう!」などという議論は、自民党にしても無駄です。


コメント (19)
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