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アベノミクス、海外の評価

2014年09月01日 | 2014年の資産運用
 涼しいのは歓迎ですが、東京は毎日雨がちなのがイヤですね。

 多くの方からカミングアウトと勉強で得たものについて率直なコメントをいただき、ありがとうございます。どなたかのコメントにありましたが、いいことは自慢げに公表されたものが多いのですが、悪い結果を目にする機会は多くないとおもいます。私も含め、みなさんのよい勉強にもなったことと思います。ではまずその後カミングアウトをされた方へ

おちょこちょいのななしさん

 カミングアウト、ありがとうございます。ななしさんはおっちょこちょいの側面と超慎重な側面があって、資産運用の割合が低いのは超慎重な側面が実は95%を占めているっていうことだからなんでしょうね。総資産の5%の運用なら勝負は好きなだけしてもかまわないと思います。あとは巨額の円資産の外貨転換を計画的に進めることですね。

>更にトンチンカンなこと言いますが、今後のリスク管理の一つとして、家族食べる分位の自給自足(土のある生活)もアリと思っています。あと、どこの国に住んでいようが自分で稼げるスキル+、健康な体+エクセルで管理する(ザル勘定しない)かな?

 そうですよ、それで十分じゃないですか。ストレス感じながらの運用よりもよほど充実ライフを楽しめますよ。ご自分でトンチンカンとおっしゃいますが、これってみなさんにもとてもよい勉強になると思います。もっとも「どこでも稼げる力」は誰でもが持ち合わせているものではありませんね。しっかりと磨きをかけておいてください。

ひでひでさん

 カミングアウト、ありがとうございます。

>放置はダメ、忘れるな! 頼まれて投資はダメ

 バブル以前は、放置戦略こそ最善の策という時代もありましたが、バブル後はいつまでたっても戻らない世界になってしまいました。このひでひでさんの失敗は、実はいまだに引きずっている方がけっこう多いと思います。その証拠にアベノミクスが始まって一年ほどは海外勢の買いに個人が一貫して売りに回っていました。少しでも戻ったら売るのが塩漬け株を抱える典型的古きよき個人投資家の姿だと思います。その間、超安全な日本国債(笑)や米国債に投資していたら大変な利益が出ていましたが、それは後知恵ですね。

 さて、今日の話題は海外からのアベノミクスのレビューです。

 このところ海外の有力メディアからアベノミクスに対する手厳しいレビューが出されています。例えば先週英国のフィナンシャルタイムズの記事を日経新聞がまとめてコラムに掲載していましたが、タイトルは「的をはずすアベノミクス」。内容を要約しますとおよそ以下のとおりです。

・3本の矢はもともと1本しかなく、通貨の下落のみだ
・通貨下落でも輸出は増えない。日本の製造業が優位性を失ったからだ
・賃金が上昇せず、内需へのシフトも起きなかった
・抜本的構造改革に取り組むという約束を果たさない彼は真の改革者ではない
・せめて4本目の矢として軍国主義が復活しないように願いたい


 非常に手厳しいコメントで、すでにダメだと結論付けてしまっています。イギリス系はエコノミスト誌も非常に厳しいコメントを出していました。

 ではアメリカ系を代表して、経済専門ではないCNNはどうか。8月29日付オンラインサイトのコメントを以下に要約します。

・金融緩和、構造改革、財政出動の3つともワークせず、日本経済を引き上げることに失敗した
・企業業績が向上しても賃上げにつながらず、そのため消費需要が増加しないので4‐6月期のGDPはなんと▲6.8%に終わった
・黒田総裁は労働者が移動しないことが原因の一つと言うが、日銀は対処案を持っていない


 こちらもかなり手厳しいコメントで結論づけています。こうした海外の厳しい評価は、日本では素直に耳を傾けようとする人は少ないのですが、海外投資家はそれをしっかりと聞いています。海外勢の買い手控えを反映して日本の株価が低迷していることがそれを映しだしています。ウォールストリートの各指標が市場最高値を更新する中、日経平均は昨年の高値にすら追いついていません。

 私は従来からお伝えしているようにアベノミクスを懐疑的に見ていますが、ここにきてその思いを一段と強くしています。その理由は、今回の海外メディアは触れていませんが、財政問題です。来年度予算の概算要求が出そろい、史上最高の101兆円の要求額になったというニュースに驚いています。本気で構造改革をして財政を立て直す気があるなら、たとえ要求段階でもシーリングを作り抑え込んだ要求を出すのが当然です。しかし自民党大臣のもと各省庁は史上最高の要求額を提出しました。財政再建などクソ食らえという暴挙です。日本をこれほどまでにダメにした元凶である公共投資ですら何と前年比+16%だというのですから、あきれる以外にありません。

 実際には実を伴わない「気合いだ、気合いだのアベノミクス」がワークしないことが明らかになると、今後アベチャンはどうするのでしょうか。そのミエミエの手口の一端を羅列しますと、

・株式を年金・簡保に買わせて上げようとする
・それでも足りないと日銀により一層株式市場に資金投下させる
・公共投資を追加しGDPを上げようとする(+16%は来年度です)
・外交問題に目をそらさせる


アベチャンもよくやっているな、と思うことはいくつかあります。例えば、

・企業トップを伴い海外諸国を頻繁に訪れ日本を売り込む
・女性の雇用・育児問題を正面切って取り上げる
・地方問題に取り組む姿勢を強めている


それらに比べると、ほころびの見えてきたアベノミクス三本の矢に対する糊塗策は、あまりにもお粗末と言わざるを得ません。

 私がみなさんに向かって、何故これほどまでにアベノミクスを叩くのでしょうか。個人的に恨みを持っているわけではありません。理由は「ドイツに敗れた日本」の記事の最後に述べた私のコメントに集約されます。

 アベノミクスの本質とは、アリに負けそうなキリギリスの最後の賭け「プッシュ」だからです。プッシュ先方は勝ってもツケがなくなるだけ、負けるとこわいこわい「倍返し」が待っています。勝ちの可能性は非常に低いので、そうなった時の準備をしっかりしておくべきだ、ということが言いたいのです。

 ではどうしたらプッシュに付き合わなくて済むのか。我々日本人で日本に居住する人間にとってできることは限られます。いつも申し上げているように、資産を外貨にして防衛することです。それ以外に有効な自衛策はありません。

 これからもカミングアウトされた方々の教訓を忘れずに、みなさんと来る日に備えて準備に励んでいきましょう。

コメント (17)
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