Owlsさん、いつもコメントをいただき、ありがとうございます。大変重要な点に関する鋭いコメントですので、私からもコメントを差し上げたいと思います。Owlsさんのコメントを引用しながら反応をお返しします。
先日の日銀の政策決定会合後の記者会見での発言をOwlsさんが引用しています。
>消費税アップをしなかった場合への対処は難しい
私のほうで黒田氏の発言をそのまま引用しますと、
>政府の財政健全化の意思、努力が市場から疑念を持たれることになると、確率は低いとは思うが、そういった事態が起きると、政府・日銀としても対応しようがない
市場が、日本の財政赤字はコントロールが出来ず膨張したままになると判断すれば、日銀が追加緩和で国債などの資産購入額を大幅に増やしても長期金利の上昇と円安が昂進し、最悪のシナリオになるということをはっきりと発言してしまったのです。いくら仮定の話でも、今までだったら「仮定の話はしません」でかわしていましたが、今回は違いました。これは大きな変化としてノートしておきましょう。
Owlsさんは、以下のように続けています。
>首相はともかく、黒田総裁は異次元緩和は博打と認識しているのではないでしょうか?
黒田氏は大蔵省にいた90年代末から超緩和論者でした。それは日銀総裁になった辺りの私のブログで彼の10数年前の発言を引用し、お示しました。
しかしクロちゃんはとてもおりこうさんなので、Owlsさんのおっしゃる通りこの緩和策が博打であってしかもこれ以外に手の打ちようがないこともわかっているのでしょう。
>立場上言えないでしょうが、博打は失敗と内心は思っているような気がします。政治家は脳天気だが、黒田総裁は脳天気でもなさそうです。
いやまだ結論までは出していないのではないでしょうか。何故ならアベノミクスというよりは、アベノマジックに国民のほとんどはまだかかっていると思われる証拠があたくさんあるからで、その限りにおいては一縷の望みは捨てていないでしょう。
>戦争には反対だったものの、真珠湾攻撃の立案をした山本五十六と同じ立場なのかもしれません。
その説に賛成です。先月BSで放送された山本五十六の特集番組では、新たに発見された彼の書簡集で彼がアメリカには勝てっこないと思っていた証拠を提示しましたね。黒田氏はまさに同じ心境なのでしょう。
少し違う点は、彼の超緩和策はその先を見据えているに違いない。つまりいずれ国債償還に行き詰るのが見えているので、そうなる前に徐々にインフレを起こし人々を慣れさせようとしていることです。山本五十六の場合も先手で勝利したうちに和平交渉入りという先を見据えてはいたのですが、真珠湾で先手を打ったとたんに逆に勝利間違いなしと軍部も政治も国民も錯覚してしまい、シナリオが狂いました。
黒田氏はみんなが錯覚してうまく踊ってくれればそれに越したことはない。踊らなければインフレで事を収束させる。つまり、私が著書を含めて何度か申し上げているように、国債は一気に元利払い停止という破綻は絶対にさせられないので、インフレからあるいはハイパーインフレ一歩手前くらいで収めたいのです。ハイパーインフレ一歩手前でも国民は強烈なインパクトを受けますが、ショック死には至らずに済むでしょう。どんな強いショックでも時間さえ稼げれば、慣れる、あるいはこなせるものです。
では折角ですのでクロちゃんの通信簿をつけておきましょう。2%のインフレとマネー・ストック増加の2つが大命題ですが、今回は物価についてです。
大命題;2年で2%のインフレ
就任からすでに1年半がたち、あと残された時間は半年に迫りました。2%の物価目標はもちろん消費増税分抜きで2%にもっていくという目標です。直近の消費者物価指数をみておきます。4月以降増税は3%ですが、税金がかからないものがあるため消費者物価に反映される増税分は約2%で、それを差し引いた数字も示します。
5月 6月 7月
総合指数 3.7 3.6 3.4
除く増税分 1.7 1.6 1.4
8月末に発表された7月の総合物価指数では増税除きで1.4%になっています。ここまでは一見うまくいっているように見えます。
5月 6月 7月
食料・エネルギーを除くコア指数 2.2 2.3 2.3
除く増税分 0.2 0.3 0.3
しかし変動の激しい食料・エネルギーを除くコア指数では、わずかに0.3%の上昇率に過ぎません。大本営の発表ではいつも天候不順などの言い訳が入っています。ここでもそうした撹乱要素を除いて本質的なトレンドつまりコア指数は0.3%の上昇と見てあげましょう(笑)。プラスにはなっていますが、実は誤差に毛の生えた程度のプラスです。先行きはどうか。
先日このブログでも紹介した東大の発表するバーゲン品を含んだ実態に近い全国日次物価指数は、トレンドがすでに明らかに下向きになりつつあります。実質賃金がマイナスのため、みなさんますますバーゲン品に頼るので、物価は対前年でマイナス・ゾーンに入りました。こちらの方が実態を反映していると思われます。
前回の消費増税時でも東大物価が一足先に下降トレンドに入り、総務省発表の数字がそれを追いかけています。東大サイトを引用します。増税インパクトを厳しく見ているため、すこし数字が違います。
http://www.cmdlab.co.jp/price_u-tokyo/
総務省指数最近値(2014年07月) 1.14%の上昇
東大指数最近値(2014年09月03日) 0.97%の下落
さて、このマイナス0.97%をあと半年でプラスの2%にもっていけるか?
いくらバズーカ・クロちゃんでもそれはとても無理そうです。ということはいよいよミサイルを準備かもしれません。
先日の日銀の政策決定会合後の記者会見での発言をOwlsさんが引用しています。
>消費税アップをしなかった場合への対処は難しい
私のほうで黒田氏の発言をそのまま引用しますと、
>政府の財政健全化の意思、努力が市場から疑念を持たれることになると、確率は低いとは思うが、そういった事態が起きると、政府・日銀としても対応しようがない
市場が、日本の財政赤字はコントロールが出来ず膨張したままになると判断すれば、日銀が追加緩和で国債などの資産購入額を大幅に増やしても長期金利の上昇と円安が昂進し、最悪のシナリオになるということをはっきりと発言してしまったのです。いくら仮定の話でも、今までだったら「仮定の話はしません」でかわしていましたが、今回は違いました。これは大きな変化としてノートしておきましょう。
Owlsさんは、以下のように続けています。
>首相はともかく、黒田総裁は異次元緩和は博打と認識しているのではないでしょうか?
黒田氏は大蔵省にいた90年代末から超緩和論者でした。それは日銀総裁になった辺りの私のブログで彼の10数年前の発言を引用し、お示しました。
しかしクロちゃんはとてもおりこうさんなので、Owlsさんのおっしゃる通りこの緩和策が博打であってしかもこれ以外に手の打ちようがないこともわかっているのでしょう。
>立場上言えないでしょうが、博打は失敗と内心は思っているような気がします。政治家は脳天気だが、黒田総裁は脳天気でもなさそうです。
いやまだ結論までは出していないのではないでしょうか。何故ならアベノミクスというよりは、アベノマジックに国民のほとんどはまだかかっていると思われる証拠があたくさんあるからで、その限りにおいては一縷の望みは捨てていないでしょう。
>戦争には反対だったものの、真珠湾攻撃の立案をした山本五十六と同じ立場なのかもしれません。
その説に賛成です。先月BSで放送された山本五十六の特集番組では、新たに発見された彼の書簡集で彼がアメリカには勝てっこないと思っていた証拠を提示しましたね。黒田氏はまさに同じ心境なのでしょう。
少し違う点は、彼の超緩和策はその先を見据えているに違いない。つまりいずれ国債償還に行き詰るのが見えているので、そうなる前に徐々にインフレを起こし人々を慣れさせようとしていることです。山本五十六の場合も先手で勝利したうちに和平交渉入りという先を見据えてはいたのですが、真珠湾で先手を打ったとたんに逆に勝利間違いなしと軍部も政治も国民も錯覚してしまい、シナリオが狂いました。
黒田氏はみんなが錯覚してうまく踊ってくれればそれに越したことはない。踊らなければインフレで事を収束させる。つまり、私が著書を含めて何度か申し上げているように、国債は一気に元利払い停止という破綻は絶対にさせられないので、インフレからあるいはハイパーインフレ一歩手前くらいで収めたいのです。ハイパーインフレ一歩手前でも国民は強烈なインパクトを受けますが、ショック死には至らずに済むでしょう。どんな強いショックでも時間さえ稼げれば、慣れる、あるいはこなせるものです。
では折角ですのでクロちゃんの通信簿をつけておきましょう。2%のインフレとマネー・ストック増加の2つが大命題ですが、今回は物価についてです。
大命題;2年で2%のインフレ
就任からすでに1年半がたち、あと残された時間は半年に迫りました。2%の物価目標はもちろん消費増税分抜きで2%にもっていくという目標です。直近の消費者物価指数をみておきます。4月以降増税は3%ですが、税金がかからないものがあるため消費者物価に反映される増税分は約2%で、それを差し引いた数字も示します。
5月 6月 7月
総合指数 3.7 3.6 3.4
除く増税分 1.7 1.6 1.4
8月末に発表された7月の総合物価指数では増税除きで1.4%になっています。ここまでは一見うまくいっているように見えます。
5月 6月 7月
食料・エネルギーを除くコア指数 2.2 2.3 2.3
除く増税分 0.2 0.3 0.3
しかし変動の激しい食料・エネルギーを除くコア指数では、わずかに0.3%の上昇率に過ぎません。大本営の発表ではいつも天候不順などの言い訳が入っています。ここでもそうした撹乱要素を除いて本質的なトレンドつまりコア指数は0.3%の上昇と見てあげましょう(笑)。プラスにはなっていますが、実は誤差に毛の生えた程度のプラスです。先行きはどうか。
先日このブログでも紹介した東大の発表するバーゲン品を含んだ実態に近い全国日次物価指数は、トレンドがすでに明らかに下向きになりつつあります。実質賃金がマイナスのため、みなさんますますバーゲン品に頼るので、物価は対前年でマイナス・ゾーンに入りました。こちらの方が実態を反映していると思われます。
前回の消費増税時でも東大物価が一足先に下降トレンドに入り、総務省発表の数字がそれを追いかけています。東大サイトを引用します。増税インパクトを厳しく見ているため、すこし数字が違います。
http://www.cmdlab.co.jp/price_u-tokyo/
総務省指数最近値(2014年07月) 1.14%の上昇
東大指数最近値(2014年09月03日) 0.97%の下落
さて、このマイナス0.97%をあと半年でプラスの2%にもっていけるか?
いくらバズーカ・クロちゃんでもそれはとても無理そうです。ということはいよいよミサイルを準備かもしれません。