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円高トラップに嵌まり込む日本 その13.じゃ、結局何が原因なの?

2011年12月30日 | 資産運用 
 ここまでさまざまな為替の決定理論をみてきましたが、みなさんも感づいているように、圧倒的に説明力をもつ理論はないと思われるます。

 なにしろ相手が相場ですから。これが決定的理論だ、というものがあればみんながそれに集中して取引を実行し相場は行きすぎるので、結局その裏をかく方が勝ってしまうという、相場独特の作用・反作用の法則が働き、理論通りには絶対に動かないのです。ですので大事なことは短期の相場の動きに惑わされずに、長期のトレンドをどう見るかです。

 じゃ、林さんは長期にわたる円高をどう説明するの?

 私は数量的にも把握できて、取引動機もクリアー、反論しようのない経常黒字説が主因だと思っています。こればかりはこの数十年にわたり通奏低音のようにドルをはじめとする外貨を売り続ける動かしようのない円高の原因です。

 最近出版された、「弱い日本の強い円」というタイトルの本があります。元日銀マン、現在は投資銀行で為替のアナリストをされている佐々木融という方が書いた本で、タイトルからして非常に的を射ている優れた本だと思います。
 佐々木氏は著書の中で、「為替は国力に比例しない」と言っています。大賛成です。円高は国力に見合わないと思ってドルなどの外貨をFXで取引したりすると、大きなケガをします。そうした取引自体、しょせんドルを買って円を買い戻す短期の往復取引がほとんどです。

私がここまで述べてきたことをまとめてみます。

1.為替相場は為替取引の結果であってそれ以外の因果関係ではない。

2.取引には動機があってその動機を調べると、一方的な長期の円高トレンドを作り出しているのは、外貨を得た輸出企業が外貨を売る取引と外人の円資産投資である。その対抗勢力は、日本人による外貨投資や最近は海外企業のM&Aなどだが、円高を相殺するほどの量ではない。

3.それ以外の様々な説や投機的取引はしょせん往復取引なのであまり説得力をもっていない。


というものでした。ということは間接的に佐々木説「為替は国力に比例しない」と軌を同じくしていることになります。

 佐々木氏の本は、為替の実務家としての経験やアナリストとしての金融・経済の知識、そして充実した裏付け資料と、これまでの為替の説明本を遥かに凌ぐ出来栄えで、新書ではもったいない気がします。みなさんにも一読をお薦めします。

 私のここまでの説明と比べると理論構成の仕方や考え方はかなり似通っていますが(ちょっとおこがましい、笑)、個々の話題への考え方にはかなり違いがあります。そしてもっとも異なるのは、

今後の為替と日本はどうなるのか?

という将来の見通しです。

つづく
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