前回は、為替の決定要因の学説にはいくつかの説があることを列挙しました。今回はそれらに私なりのコメントをつけてみます。
1の国際収支説、これは取引の結果得た例えばドルを円に転換するために売らなくてはいけない、まぎれもないドル売り要因です。売買の取引動機、量、時期なども実にクリアーです。そして、量的に把握できているところが、私に対して説得力を持ちます。
2のインフレ格差説(相対的購買力平価説)はどうか。確かに長期的には購買力平価のカーブとドル円為替レートのカーブは同じ方向に動いてきました。しかし、ちょっと疑問を感じる部分があります。
理由1.貿易(実需)で得たドルを売る人は、インフレ較差がどうあろうが売らなくてはならなず、これに影響を受けているとは思えません。
インフレ格差がこうだから売ろう買おうという投資家も中にはいるでしょう。それによる売買のボリュームは不明だし、ほとんどのこうした投資家は買ったものは売り戻すし、売った物は買い戻す往復売買です。それに対して実需の売りはインフレ較差にはかまわず一方通行で、1銭1厘でもよいレートで売ろうとするだけです。
理由2.購買力平価と為替レートの因果関係が私にはよくわかりません。
簡単に解説しますと、インフレ格差が円高をもたらすのか、円高が逆にデフレ効果を持ってインフレ格差をもたらすのか、イマイチ私にはわかりません。どなたかおわかりの方がいらしたら、説明をお願いします。
理由3.これは横道ですが、日本は本当にデフレなのか不明だから
物価が下がるのがデフレなら、それは確かにデフレです。でも下がる原因が、もともと理不尽に高い日本の物価が、国際価格に収れんしていく過程だったら、デフレと言えるでしょうか。
過去を振り返ると、日本の物価は理不尽に高く、依然として国際価格への収れん過程にあるように私には見えます。デフレと言う言葉は「貨幣現象」のはずですが、衣料価格で言えばユニクロ価格への大変革は決して貨幣価値の上昇などではなく、イノベーションを通じて国際価格へ収れんしていく過程だと私は思います。同様に40インチのフラットテレビの価格は、1年前の今頃、エコポイントを得るために行列を作って20万円だったのが、地デジ導入後に7万円になりました。これは円の貨幣価値がこの間に3倍上昇したからでしょうか?ちなみに今、クリスマスセールのアメリカでは500ドル(4万円程度)です。そしてコメは関税が700%なので、まだ8分の1になる余地があります。資産価格も同様で、皇居一つでカリフォルニアが買えたなどというバカバカしい話は別としても、日本の不動産価格は収益還元法で計算していなかったため、理不尽に高かった。
これらを貨幣現象だとは決して言えないと思います。ということで購買力平価説は、
① 因果関係が理解できない私に対しては説得力を持っていません
② 日本の物価は理不尽に高く、依然として国際価格への収れん過程にあるいと思っている私には、説得力をもっていません。単に統計的には同じ方向の動きになっているだけと私には見えます。
☆横道ついで
87年初に私は東京からNYに転勤しました。1ドルは155円でしたが、その時に出会ったこと。
① ドイツ製ベンツのCクラスの新車が、アメリカで一番安いことを発見して買った。日本では650万円、アメリカでは387万円、ドイツでは426万円。ドイツとアメリカの差は、消費税の差10%だった
② フランス製ビックのボールペン、日本では100円、アメリカでは1.98ドルもする、高いと思ったら1ダースの値段だった(笑)
③ 缶ビールの値段、日本の1本とアメリカの6本が同じような値段だった
日本人はだまされていたんですよ!
ということも言えるし、
舶来品好きで「高くないと買わない」性癖を持っていた!
とも言えるかもしれません。
ちなみに、最近知り合った日本製ゴルフクラブを中国人に売っている人は、日本でも高い60万円のセットを金ピカにメッキして650万円で中国人に売っています。
それに較べりゃ、日本人はまだ可愛いもんか(笑)
つづく