ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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その2 もし円高トラップにはまっていなかったら

2011年10月21日 | 資産運用 

2回目は、これまでの日本経済をちょっと振り返ります。

自国通貨が高くなる=すべての人が金持ちになる。

日本人は円高をきらいますが、これは本来あまり議論の余地のないことのハズです。
産業界は大変だとはいいながら、日本は依然経常黒字(貿易収支と所得収支の合計)を保つほど競争力を持っています。

ですので、ほんとなら

「働いて、円高にして大ハッピー」

のはずが、なんでアンハッピーになってしまったのか?

この単純な事象をそのまま実現できなかったところに、どうやら日本の間違いの始まりがあったように私は思っています。

一体何が原因だったのでしょうか。私の分析では、バブルを経験してあつものに懲りてなますを吹くのが、原因だったようなきがします。つまり

① 株式・不動産・ゴルフ会員権などの投資に失敗した個人が、委縮して投資をやめた
② ついでに消費も控えて、貯蓄に励み、預金を積み上げた
③ 「好景気」の定義をバブル時代に求めたため、いつまでも景気が悪いとしか思えず、政府もカンフル剤を打ち続けた
④ 外貨投資はいつも為替に負け続けると誤解して、超安全な米国債投資すらしなかった(これは手前みそです)。つまり、「金利差は為替に勝てない」という思い込みがあった。


もしみなさんが預金の一部で私の言う「米国債を買え!」を過去に実行していたら投資結果はどうなったでしょう。昨年のサイバーサロンや著書でもお示しした米国債の投資結果を思い出してください。

米国債へ複利で投資した結果を、元利合計で丸い数字で示しますと、

  ・30年間で23倍になった。為替は3分の1になったが8倍勝った(1980年に米国債30年物のゼロクーポン債を買い複利で運用し、2010まで保有したとすると23倍になる。為替は240円が80円に3分の1になったが、それにもめげずに8倍の投資収益になった。以下同様)
 ・20年で5倍、為替は半分になったが2.5倍勝った
 ・10年で2倍、為替で3割負けたが6割勝った

もちろん、米国債という投資対象は、私が外貨投資の象徴として使っているもので、投資対象はいくらでもありました。ただ、絶対的安全性と圧倒的流動性をもつ資産でさえこうした実績をもたらしたのです。

 そして、もし日本のマネーがある程度の規模で海外投資に向かっていたら、円高はかなり緩和されていたはずです。ということは、米国債というリスクフリーの、つまりは保証された最低限のリターンでさえ、円換算ではもっともっと大きなものになっていたにちがいありません。(例えば90年にドルが150円のときに米国債を買って、2010年までに5倍になった。為替がそのまま150円だったら、5倍の儲けがそのまま得られた。)

 また、日本にマネーが滞留しなかったら、政府は国債発行を思うにまかせず、財政をこれほどまで簡単に拡大することはできないので、破綻の淵へと追い込まれることもなかった。

 マイルドな円高であれば産業の競争力も追いつくはずで、非正規雇用もここまでひどく拡大はしなかったかもしれません。であれば若年層はもっとやる気を出し、生産性もあがり、所得の増加で内需も拡大させることができた。競争力がつけばもっと輸出をして外貨を稼ぎ、それが貯まればまた積極的に外貨資産へ投資も行う。もちろん企業業績の向上で、日本の株式もリターンをもたらすことになったでしょうし、日本国債・社債などへの債券投資もいまよりはるかに高い金利と言うリターンをもたらしたかもしれません。

こんなに都合よくいくかって?

うーん、そこんとこはちょっとねー

つづく
コメント (5)
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