ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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回答編 4   (長いです)

2011年10月13日 | 資産運用 


前々回のブログ本文で、お薦めは依然として米国債です、と申し上げました。
今回は、米国債のおさらいと、コメントでkmnさんかずさんからいただいた質問へ回答をしていきます。

米国債の優位性を今一度おさらいしますと、
1. 世界で最も安全な金融資産
2. 世界で最も流動性の高い金融資産
3. 日本の財政・年金破綻という大災害に対する特約保険付き
4. 投信などに比べて、コストが安い


以上が、米国債の優位性のまとめです。

では、kmnさんとかずさんの問い合わせに回答していきます。

Kmnさんの質問は
① 現在の米国債の金利が、著書の時点より低いのでどうするか
② 豪ドル債券への投資がよいのか
③ その場合、○○公社とかの発行がよいのか

かずさんの質問は、

1.30年の米国債はここ数ヶ月で随分利回りが下がってしまったのですか?
2.米国債は半年複利と書かれていましたが、野村證券や大和証券のページを見ても
 1年複利の物ばかりです。ここ数ヶ月で変わってしまったのですか?
 それとも半年複利の物も待っていれば出回るようになるのでしょうか?
3.既発の米国債を多く扱っている所はどこでしょうか?
 上に書いた、野村證券、大和証券以外にもあれば
 教えていただけたらと思います。

ではお二人に質問に回答します。

まず、投資はタイミングを考える必要があります。

私の著書のあとがきの最後に、座右の銘として書いた言葉を繰り返します。
ウォーレン・バフェットの座右の銘は「すべてのボールに手を出すな!」です。
これは、例えば「証券会社が持ってくるものすべてに手を出してはいけない」ということを言っています。

私がみなさんにお薦めした座右の銘はより慎重で、「バッターボックスに立つな!」です。

これは、立てば打ちたくなるから、立つなということです。タイミングがよくなければ、よくなるまで「ウェィティング・サークルで待て」ばよいのです。

相場は常に動いている生き物です。それに対して本の記述は、ある一瞬のタイミングでフリーズさせなくてはいけません。私は1年がかりで本を書きましたが、その間の米国債イールド(利回り)を10年物と30年物で振り返ります。(かずさんの質問1への回答)

      10年10月1日  11年4月1日  最終原稿7月7日  10月11日
10年物     2.54    3.46       3.17       2.15
30年物    3.71     4.48       4.37          3.06
1年前のイールドは現在ほどではないにしろ、結構低いレベルでした。それが丁度半年前の4月1日であれば結構高めのイールドになっています。本の校了寸前の最終原稿時点の7月7日でも、さほど低くはないと思います。それが、校了して間もなく劇的に低下しました。たった1年でもこれほど上下するのが相場です。FRB(米国連銀)はツイストオペレーションという政策をとると宣言しているため、しばらくは長期債の金利は抑え気味にするようですが、景気が戻ってくれば変更もありうると思います。

本の中でサイバーサロン(本のきっかけになったネット上のサロン)のメンバーの方へのアドバイスではこう申し上げました。

「ご自分で今のイールドでかまわないと思ったら投資したらよい」

と言っても、外債への投資は、イールドとともに為替も考慮する必要があります。今のドル(76―7円台)は、とても安い水準だと私は思っています。最終原稿ではドルは81円でした。そこから5円ほど下がっています。率では6%ほどです。この6%を、年率1%の金利差でカバーするには単純計算で6年かかります。言うまでもなく、為替は大きく動くと影響大ですので、こう言い換えたほうがよいかもしれません。

「ご自分でこのイールドと為替レベルでよい、と判断されたら投資したらよい」
これではお二人には回答になっていないと思いますが、投資しようと思った時にお薦めを聞いて即投資することはないと私は思います。

ではお薦めは、

1. 何も投資せず、ウェイティング・サークルで米国債のイールドが上がるのを待つ
2. リスクを取る覚悟があるのなら、待っている間、豪ドルのMMFでしばらく運用する


kmnさんの質問2への回答として、米国債の代替としての豪ドル債ですが、長期に投資するなら安全性の高いAAAの格付けのついた○○公社とか、○○復興開発銀行の発行する債券が安全でお薦めです。回答の2でMMFと言っているのは、あくまで待機資金の運用です。
豪ドル債は米国債と違い流動性が低いので、売買コストが高い。そのため1年くらいではコスト倒れの恐れがあるからです。MMFはその点、コストは低いので、1年でもコスト倒れにはなりません。
しかし為替リスクがあるので、リスクフリーとはいきません。

かずさんの質問2への回答です。
米国債は発行年限により1-10年をT-NOTE、30年物をT-BONDと言います。いずれもクーポンの支払いは半年ごとです。

複利の運用は、クーポンのついている普通の国債ではできません。クーポンの再投資は自分でやるより方法がありませんし、再投資してものイールド(金利)は再投資のたびに変化してしまうからです。

複利運用は元本とクーポンを証券会社が勝手にはがしたストリップス債でなら可能です。かずさんが投資しようとしているゼロクーポン債がそれに該当し、それは元本部分のみです。クーポンがないので、半年複利も1年複利もありません。償還期限が来た時にもらえる100になるまで毎日少しずつ価格が上昇していきます。毎日複利といえなくもありません。

かずさんの質問3への回答。我々が購入できるのはすべて既発債ですので、1年物と言っても、実は30年物の最後の1年かもしれませんので、その点は注意してください。本当の1年物と30年物の残存1年とイールド的にはかわりません。
既発の米国債を多く抱えているのは日本の大手だけでなく、外国証券・銀行の証券子会社もかかえていますので、チェックしてみてください。

以上、本の内容のアップデートに合わせて、お二人の質問への回答をさせていただきました。

参考になりましたでしょうか。
コメント (3)
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