今年の全米オープンゴルフが現在シネコックヒルズで行われています。1988年、今からちょうど30年前、NYに住んでいた私はこのコースでプレーする幸運に恵まれました。そこでの経験が多分そののちリンクスランドというゴルフの聖地へのあこがれの原点となり、スコットランドのリンクスへ4回もの聖地巡礼を行うきっかけになりました。
シネコックヒルズがどのようなコースか、ウィキペディアをまず引用します。リンクスとは海岸に位置する砂地の平地で、昔から羊を飼う牧場くらいしかできないところだったといわれています。
引用
シネコックヒルズゴルフクラブは米国ニューヨーク州ロングアイランドのサウサンプトンにあるリンクススタイルのゴルフクラブ。過去に全米オープンゴルフが4度開催され、来る2018年にも開催される予定となっている。2000年に米国国家歴史登録財に登録された。正式に組織されたゴルフクラブとしては全米最古(1891年創立)、そのクラブハウスも全米最古(1892年建設)であると主張している。また、女性メンバーの加入も創立当初より認められており、これは全米初であるとも主張している。
引用終わり
全米屈指の歴史と伝統を持つ本当に素晴らしい、そしてとてつもなく難しいコースです。
ニューヨーク市の東につながるロングアイランドのサウスハンプトンという場所は、そもそもゴルフ場以前に極めつけの大金持ちの別荘地帯として有名な場所です。ニューヨーカーは隣のイーストハンプトンと一緒にして、ハンプトンズと呼びならわします。ちょうど1988年にアメリカで「マスカレード」というサスペンス映画がヒットしましたが、その舞台がサウスハンプトンでした。同名のサウンドトラックの曲はカーペンターズなどもカバーし、今でもよく演奏される曲です。
その映画よりはるか昔から、ハンプトンズはアメリカ人あこがれの地名でした。日本でいえば、と思ったのですが、日本には同じような海岸線にマンション(大邸宅)が立ち並ぶ別荘地帯がないので、例えようがありません。街の中心街はこぎれいな高級ブティックやおしゃれなカフェが並び、フランソワーズ・サガンの小説の舞台にぴったりかもしれません。
シネコックヒルズは私がプレーした当時、メンバー数わずか300人で、年会費はクラブ運営にかかった年間総費用を300人で割り算するのですが、一人当たり1万ドル(当時の円貨で150万円ほど)くらいとのことでした。毎年それくらい支払える人は相当なお金持ちです。アメリカの本当のメンバーコースではゲストフィーはなく、メンバーが招待するだけです。通常メンバー一人当たり年間30人から50人程度の年間招待枠を持っています。私が払ったのはキャディーフィーとチップのみ。ディナーも招待でした。しかし今回テレビ中継を見ていたら、ゲストフィーは400ドルだと言っていたので、ルールを変えたのかもしれません。5万円と高いですが、ペブルビーチはその倍くらいなので、まだましかという感じがします。
初めて見たゴルフ場の印象は強烈でした。フェアウェーはへたなゴルフ場のグリーンよりきれいです。私は飛ぶほうではありませんが、フェアウェーのキープ率が比較的高いので、フェアウェーに落ちたティーショットがどんどんころがり、距離を稼いでくれるのはとても助かりました。しかしあの長い草、フェスキューが生い茂るラフは芝刈り機で刈り取ることはいっさいしません。見た目の景色はきれいですが、いったんボールが入ると牙を剥いて襲いかかってきます。
スコットランドのリンクスは平坦な海岸にあるコースが多いのですが、ここは3分の1程度が緩やかな丘陵地帯で、アップダウンの難しさも加わります。グリーンはだいたいが難しい砲台グリーンで、はじのほうに乗ったと思っても、ほとんどが転がり落ち、20-30ヤードも離れて行ってしまいます。
そして閉口するのはバンカーの多さでしょう。最終18番ホールもグリーンの手前に数個のバンカーが口を開けて待っていますので、1回バンカーにつかまると脱出しても脱出しても次々にバンカーを渡り歩くことになります。それでもスコットランドのリンクスのバンカーと違い、小さなポットバンカーがないので、脱出は楽にできます。
USオープンは、いくつかの歴史あるコースを繰り返し使いますが、私のもっとも印象に残っているシネコックヒルズでのUSオープンは1995年の名勝負、コーリー・ペイビンとグレッグ・ノーマンの勝負です。この二人、ツアープロの中で屈指の飛ばし屋ノーマンと一番飛ばないペイビンの戦いだったので、とても印象に残っています。最終日の後半は2人のマッチプレー状態となりました。とにかくドライバーの飛距離ではノーマンがペイビンを50ヤードも置いていきます。最終18番ホールに来た時、たしか距離の出ないペイビンが1打差でリードしていましたが、ティーショット打ち終え2打目地点ではペイビンが4番ウッド、ノーマンが7番アイアンを選択、大きなハンディでした。しかしペイビンはウッドでピンそば4メートルほどにつけてそれをねじ込み優勝。ゴルフは飛距離だけでは勝てないということを印象付けてくれた勝負でした。
以上、私のシネコックヒルズの思い出でした。