晩秋、岩手山の雪も白く下に広がり始め、里にも雪が近い。
田んぼや畑に人影は見えない。あちこちから登る煙は屋敷林の杉の葉を焼いているのだろう。
家の周囲の庭木の手入れを済ませて、落ち葉を焼いて雪を待つ。
農村ののんびりした、いい風景ではある。
居久根と呼ばれる屋敷の杉林、かって財産として不時の出費に備えて活用されたが、今は逆にお金を払って伐採処理してもらう。
かって雪の前に稲を運び込み、脱穀した大きな作業小屋も平成初期まで利用されたが今は収穫されたお米はまっすぐライスセンター行。無用となった大きな作業小屋は物置になり、軒下には若い人たちのピカピカの乗用車が並ぶ。
自家用野菜を作る人もすくなくなった。畑に限らず、子孫のためにと競って広げた田んぼ、後継者は殆どがサラリーマン、農業のやり方は知らない。
年寄りが元気なうちはいいが、その後はどうなるんだろう。
刈り残した稲が残る。中山間地地帯を中心にポツポツ見受けられる。
今年の稲は倒伏が多かったから、年老いた農家は刈り取れなかったんだろう。
昔、長男は家を継げるからと二、三男に羨やましがられた時代があったなんて信じらられない。
近在の、資産家の当主が膨大な資産を残して亡くなった。
所有する一部土地が公共用地に買収されたがその代金を子供たち、誰も受け取らないという。
残された膨大な資産の相続税負担が問題らしい、資産家でさえ後を継いでくれる人がいない。
相続税の心配もないが、農家特有の大きな家、作業小屋、広い屋敷周りの居久根の大木、先祖が一生懸命働いて増やした広大な田んぼ、山林など若い人たちには魅力がない。
負の遺産になりつつある。