森友学園騒動でお粗末であったのは、籠池理事長に保守派が翻弄されたということである。失われた日本を復活する教育の手本として応援したのに、最終的には裏切られたのである。「大げさな言葉を吐く者は信用がならない」という鉄則を忘れたからだろう。▼エリック・ホッファーは『魂の錬金術』(中本義彦訳)において「実りある成果をあげたければ、熱情を薬味として限定的に使うことだ」と書いている。国を愛することは大事だとしても、それは声高に語るべきではなく「せいぜい伴奏か、付属品にとどめるべきである」というのだ。「安倍名誉小学校」などと口走ることの異常さに、もっと早く気づくべきであった。追い詰められると態度を一変させ、安倍首相を恨むようになったのは、愛国心教育が方便でしかなかったからだろう。そうでなければ、国家を否定するような民進党や共産党に助けを求めたりはしないからである▼籠池理事長は熱情家であるのは確かだが、本当の保守ではない。ホッファーは「激しい情熱の持ち主は、たいてい思いやりに欠ける人である。他人を思いやる気持ちは、精神の均衡が生み出す静寂の中だけで聞こえる。『小さい低い声』である」(『同』)とも断言している。保守派はコモンセンスやバランス感覚が大事なのであり、耳を澄まさなければ聞こえてこない、日本人の地声に立脚するのである。大声で天下国家を論じるのとは無縁なのである。
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