平和ボケした日本国民に、危機の実態を知ってもらう必要がある。安倍政権は昨日、中共による東シナ海での油断開発のための建物が16基になったことを明らかにした。航空写真と地図で公表したもので、7年前に日本と中共が共同開発で合意したことへの背信行為であり、日本を甘く見ているからだろう。戦後の日本をリードしてきた思想的な流れは、進歩的文化人による日本の中立化構想であった。これに真っ向から反対したのが高坂正堯である。『宰相吉田茂』は名著の評判が高い。つい最近読み直して再確認したのは、吉田茂の功績を讃えてはいても、経済優先の限界もまた認識していたことだ。「政治家の任務が経済発展につきるものではなく、豊かな国家がよい国家であり、偉大な国であるとは限らないことは言うまでもない。なぜなら、国家は利益の体系であるだけでなく、力の体系であり、そして価値の体系である。豊かになること、強くなること、そして文化が栄え国内社会において正義がおこなわれること、これらはそれぞれ国家をよくするための目標であり、その一つが達成されたからと言って、その国家が立派になったとは言えない」(『宰相吉田茂』)からである。安倍首相の「戦後レジームからの脱却」というのは「力の体系」「価値の体系」の復活なのだろう。吉田茂は戦後という限られた空間のなかで、最善の選択をしただけなのである。高坂については、ともすれば観念論批判の部分が強調されるきらいがあるが、本来の目指すべき国家像を提示したのであり、安倍首相がそれを踏まえていることは明白である。
←応援のクリックをお願いいたします。