ふるさと加東の歴史再発見

少し気をつけて周囲を見回してみると、身近なところにふるさとの歴史を伝えるものがある。

明治18年刊『小学讀本四』よりー第29課 飼い主の後を追って自死した猫の話

2024年03月05日 04時07分30秒 | Weblog

 明治18年刊の文部省編纂の『小学讀本四』の第二十九課の話を紹介します。

〇第二十九課
大阪葉山町鍛冶八兵衛が妻重病にて死なむとしたる時其家に久しく飼へる猫ありて暫しも床邊を離れずある日病人猫に向きて我は頓て死すべし我が無き跡にては我が如く汝を愛する人有らざるべければ今より何方へなりとも行きて愛せられよと云ひしが病人死して後彼猫葬を送りて行きたるを追ひ返しければ家にかへりて自舌を噛み切りて死したり畜類と雖も心有るはかくの如し人たる者主恩を顧みずしてして可ならむや

 猫のことが書いてありましたので、読んでみると、鍛冶屋八兵衛の妻が重い病の床にあるとき、飼っている猫が床を離れません。妻は猫に向かって、私が死んだら、お前を愛してくれる人はないだろうから、今のうちにどこへでも行き、誰かに飼ってもらって愛してもらえと言いました。妻が死に、その猫は、葬列を送ったあと、家に戻り、舌を噛み切って自ら命を絶ちました。動物でも心があればこのようなものだ。人たる者は、主の恩を忘れてはならない、といった話でした。

 恩返しだとか、最近は恩送り、といったことがよく言われます。人やる恩、社会から受ける恩、自然や環境から受ける恩、ペットから受ける恩、いろいろな恩を感じ、感謝の気持ちを持って、その恩に報いる気持ちや行動を表現していこうという。『讀本』の例は、今の時代、極端な話だとも思いますが、逆に子供やお年寄り、ペットの虐待といった事件があとをたちません。恩のみならず、愛することを人たる者忘れてはならない、と思いました。
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