カンカン(CAN-CAN、1960米、142分)(劇場公開時の映像がない前奏、間奏、後奏部分を除くと131分)
監督:ウォルター・ラング、原作:エイブ・バロウズ、脚本:ドロシー・キングズレー、チャールズ・レデラー、作詞・作曲:コール・ポーター、音楽(編曲・指揮):ネルソン・リドル
シャーリー・マクレーン(シモーヌ)、フランク・シナトラ(フランソワ)、モーリス・シュヴァリエ(ポール)、ルイ・ジュールダン(フィリップ)、ジュリエット・プラウズ(クロディーヌ)
1896年のパリ、カンカン踊りは猥褻だとして禁止されたころ、それでも目をかすめてやっているキャバレーでトップにいるシモーヌ、その対当局対策でサポートしている弁護士フランソワ、あげられた時の検事役フィリップ判事、裁判長はこの世界をよく理解している粋なポール判事、シモーヌはフランソワがなかなか結婚に踏み切ってくれないのにやきもきし、そこにつけ込んだフィリップに一時なびくが、、、という、ドラマとしてはどうということない恋のさやあてミュージカルである。
しかし、どうしても見ておきたいと思ったのは、音楽がすべてコール・ポーター作、シナトラ、シュバリエらが歌い、バックはネルソン・リドル、さてどう歌われるか、主にシナトラの録音で聴いている歌たちがどういうシチュエーションで歌われるのか、興味があったからである。
まずこの映画の第二のタイトルともいうべきI LOVE PARIS、この曲、シンプルなメロディーと少ないコードだが、そこはコール・ポーター、これをベースにピアノでいろいろやると面白いと思ったが、手元にあったのはシナトラがリドルとやったもの、とはいってもワンコーラスだけ、CD時代になってボーナス・トラックとして加えられたもので、おそらく何かの合間に録れてみたというものだろう。短いながらそれでも素晴らしいので、この映画でフルに歌ってくれるかな、と期待したけれど、それはなし。この曲、冒頭でコーラスで上品に歌われたのち、後半、シモーヌが何かの催しのプロディースを頼まれたという際の演目として、古代の「ダフニスとクロエ」風の無言劇とダンスの音楽として、かなり長い管弦楽が入る。これは素晴らしく、リズムセクションの工夫、しかけは参考になった。
その他で、シナトラ、マクレーンなどで何度か歌われるのが「セ・マニフィク(C'est magnifique)」、そして、あ、これもと驚いたのが「そんなことなの(Just one of those things)」で、モーリス・シュヴァリエが「恋とはこんなものさ、、、」と面白いたとえをひきながらフィリップをさとす場面でまあ見事な、これは歌唱というのか演技というのか、これぞミュージカルとしかいいようがない。シナトラのそれこそリドルのバックで歌った名唱があり、それを真似して(真似も難しかったが)歌ったことがあるけれど、こう歌われて初めてこの歌詞の価値が、といった感じであった。
シナトラは「上流社会」(1956年、音楽はこれもコール・ポーター)、「夜の豹」(1957年、これはリチャード・ロジャース)とこのところ楽しませてもらっているが、後者の3年あとの本作、さすがにちょっと老けた感じは否めない。歌はここでは柔らかいものが主だから、いいのだけれど。
シャーリー・マクレーン、こういう色気もある人なんだ、そしてダンスもうまい。
ルイ・ジュールダンは、いい配役を得た。
フランソワがへこんでいると、ときどきうまく慰めるクロディーヌのジュリエット・プラウズがなかなかいい。エルヴィス・プレスリーの共演者として記憶があるけれど。
ダンスでは、前半とフィナーレのカンカンも見事だが、興味を持ったのは前半で探りに来たフィリップをちょっと脅して探りを入れるかのような数人の踊り、この後1961年に出てくる「ウェストサイド物語」の群舞と共通するものがある。あっちはジェローム・ロビンスで、大物だから、時代はこういうダンスが出てくる時期だったのかもしれない。
さて、一つ挿入されたエピソード。シモーヌが店長とキャバレーで一日の売り上げを確認しているとき、払う金が足りなくて絵を描いておいていった客がいるという。その絵に描かれているのはシモーヌで、彼女は「それ位の払いもできないの?誰?」、というと店長が言ったのは「ロートレック」、でも彼女は絵を破いてしまう。映画を見ている人は「あれあれ、、、」
監督:ウォルター・ラング、原作:エイブ・バロウズ、脚本:ドロシー・キングズレー、チャールズ・レデラー、作詞・作曲:コール・ポーター、音楽(編曲・指揮):ネルソン・リドル
シャーリー・マクレーン(シモーヌ)、フランク・シナトラ(フランソワ)、モーリス・シュヴァリエ(ポール)、ルイ・ジュールダン(フィリップ)、ジュリエット・プラウズ(クロディーヌ)
1896年のパリ、カンカン踊りは猥褻だとして禁止されたころ、それでも目をかすめてやっているキャバレーでトップにいるシモーヌ、その対当局対策でサポートしている弁護士フランソワ、あげられた時の検事役フィリップ判事、裁判長はこの世界をよく理解している粋なポール判事、シモーヌはフランソワがなかなか結婚に踏み切ってくれないのにやきもきし、そこにつけ込んだフィリップに一時なびくが、、、という、ドラマとしてはどうということない恋のさやあてミュージカルである。
しかし、どうしても見ておきたいと思ったのは、音楽がすべてコール・ポーター作、シナトラ、シュバリエらが歌い、バックはネルソン・リドル、さてどう歌われるか、主にシナトラの録音で聴いている歌たちがどういうシチュエーションで歌われるのか、興味があったからである。
まずこの映画の第二のタイトルともいうべきI LOVE PARIS、この曲、シンプルなメロディーと少ないコードだが、そこはコール・ポーター、これをベースにピアノでいろいろやると面白いと思ったが、手元にあったのはシナトラがリドルとやったもの、とはいってもワンコーラスだけ、CD時代になってボーナス・トラックとして加えられたもので、おそらく何かの合間に録れてみたというものだろう。短いながらそれでも素晴らしいので、この映画でフルに歌ってくれるかな、と期待したけれど、それはなし。この曲、冒頭でコーラスで上品に歌われたのち、後半、シモーヌが何かの催しのプロディースを頼まれたという際の演目として、古代の「ダフニスとクロエ」風の無言劇とダンスの音楽として、かなり長い管弦楽が入る。これは素晴らしく、リズムセクションの工夫、しかけは参考になった。
その他で、シナトラ、マクレーンなどで何度か歌われるのが「セ・マニフィク(C'est magnifique)」、そして、あ、これもと驚いたのが「そんなことなの(Just one of those things)」で、モーリス・シュヴァリエが「恋とはこんなものさ、、、」と面白いたとえをひきながらフィリップをさとす場面でまあ見事な、これは歌唱というのか演技というのか、これぞミュージカルとしかいいようがない。シナトラのそれこそリドルのバックで歌った名唱があり、それを真似して(真似も難しかったが)歌ったことがあるけれど、こう歌われて初めてこの歌詞の価値が、といった感じであった。
シナトラは「上流社会」(1956年、音楽はこれもコール・ポーター)、「夜の豹」(1957年、これはリチャード・ロジャース)とこのところ楽しませてもらっているが、後者の3年あとの本作、さすがにちょっと老けた感じは否めない。歌はここでは柔らかいものが主だから、いいのだけれど。
シャーリー・マクレーン、こういう色気もある人なんだ、そしてダンスもうまい。
ルイ・ジュールダンは、いい配役を得た。
フランソワがへこんでいると、ときどきうまく慰めるクロディーヌのジュリエット・プラウズがなかなかいい。エルヴィス・プレスリーの共演者として記憶があるけれど。
ダンスでは、前半とフィナーレのカンカンも見事だが、興味を持ったのは前半で探りに来たフィリップをちょっと脅して探りを入れるかのような数人の踊り、この後1961年に出てくる「ウェストサイド物語」の群舞と共通するものがある。あっちはジェローム・ロビンスで、大物だから、時代はこういうダンスが出てくる時期だったのかもしれない。
さて、一つ挿入されたエピソード。シモーヌが店長とキャバレーで一日の売り上げを確認しているとき、払う金が足りなくて絵を描いておいていった客がいるという。その絵に描かれているのはシモーヌで、彼女は「それ位の払いもできないの?誰?」、というと店長が言ったのは「ロートレック」、でも彼女は絵を破いてしまう。映画を見ている人は「あれあれ、、、」