メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

パイレーツ・ロック

2009-11-05 17:51:53 | 映画
「パイレーツ・ロック」 (The Boat That Rocked、2009英・独、135分)
監督・脚本:リチャード・カーチス
フィリップ・シーモア・ホフマン、トム・スターリッジ、ビル・ナイ、ニック・フロスト、ラルフ・ブラウン、ケネス・ブラナー、リス・エヴァンス、エマ・トンプソン、クリス・オタウド
 
Mr.ビーンシリーズ以外では久々のリチャード・カーチスの脚本、「ラブ・アクチュアリー」(2003)同様、監督もしている。
 
1966年、イギリスでラジオ局はBBCのみで、1日に流すポップ・ミュージックは45分だけだった。それでもっと聴きたい、みんなと聴きたいということから領海外停泊の船からこの種の音楽主体に放送する海賊ラジオ局が生まれた。これは本当にあったそうだ。
 
映画はこの船のオーナーが名付け親になっている青年が入ってきたところから、いろいろなDJ、ニュース担当、そのほか乗組員、時々訪れるガールフレンドなどの人間模様、この放送局をつぶそうという政府との闘いが、どんぴしゃりの選曲、画面移行のタイミング、身振りなどで延々と続いていく。
あの傑作「ラブ・アクチュアリー」のようなしっかりした複数の人間のドラマが最後に渦巻きのように集約していく、といった構成はないけれども、今回は細部まで選曲とその効果をとことん楽しむための脚本、といえるだろう。それでも2時間くらいにしないと、ちょっと長いといえば長い。
オーナー役のビル・ナイに脱帽、行儀の悪さが出るタイミングの微妙なところ、それでいて世界に冠たる大英帝国の紳士がこれをやっているというところは外さない。終盤の敬礼がいい。
 
フィリップ・シーモア・ホフマンは、DJのリーダー格つまり船長格で、この人がこういう役をやるとは思わなかったが、楽しんでやるカメオが最後までになった、というと失礼で、リス・エヴァンスとのチキン・レースが最後まで続くのも面白い。
 
青年の母親役エマ・トンプソンと船をつぶそうとしている政府側の大臣役ケネス・ブラナーは、元夫婦だったが、この映画では二人とも眼鏡で顔の特徴あまり出てないのは面白い。
 
終盤はまさに「タイタニック」であるけれども、そのまた最後、さすがは四方を海に囲まれた国の人たちだ。
 
クレジットにもあるように、1960年代ロック、ロックシーン、そしてそれを楽しんだ人たちへのオマージュ。
そう、そのころの若者たち、つまり私の同世代でもあるが、今のイギリスのシニアはみんな、ビル・ナイから、「ラブ・アクチュアリー」で首相(ブレアを想定)のヒュー・グラントまで、本当は、本音はポップなロックで体をこんな風に動かすのが好きなんだ、ということ。それはほんとに楽しい。

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