goo blog サービス終了のお知らせ 

生かされて

乳癌闘病記、エッセイ、詩、童話、小説を通して生かされている喜びを綴っていきます。 by土筆文香(つくしふみか)

「デイヴィッド・コパフィールド」を読んで

2013-05-31 16:19:58 | 読書
ネット読書会カラマの会の今年の課題本はチャールズ・ディケンズ「デイヴィッド・コパフィールド」(石塚裕子訳 岩波文庫)です。昨年はドストエフスキーの「白痴」と「悪霊」だったので、気が重かったのですが、今年の本は大いに楽しんで読めました。

先日SLの旅に同行させ、牛久駅あたりで読み終えたので、感動が冷めないうちに少しだけ感想を書かせていただきます。
「デイヴィッド・コパフィールド」はモームが世界の10大小説の1つに選び,ディケンズ自身も「自分の作品中最も好きなもの」と語っている作品です。チャールズ・ディケンズはクリスマスキャロルも書いています。

岩波文庫で5冊もあるので最初は読み切れるかしらと思いました。ところが、ストーリーがおもしろくてどんどん読み進めてしまいます。しかも、主人公は少年。だんだん成長していくのですが、成人しても子どもの心を持ち続けているようなデイヴィッドです。デイヴィッドと共に笑ったり、涙を流したり、はらはらしながら読みました。
読書会のお仲間で1か月弱で読了してしまった方もおられます。

わたしは、途中でほかの本を読んだり、読み返したりしてブレーキをかけながらゆっくり読みました。読み終えたら寂しくなると思ったからです。(実際、読み終えた今、寂しいです)

「デイヴィッド・コパフィールド」とはこの小説の主人公の名で、チャールズ・ディケンズ自身の自伝的小説と言われています。でも略歴を見るとかなり違っています。精神的自伝小説と言った方がいいでしょう。
「ぼくは」という一人称で書かれています。たくさんの登場人物が出てきて、複雑に絡み合ったストーリーなのにデイヴィッドの視点からだけで書けるのですから、すごい筆力だと思います。

一人称なのに内面を鬱々と書くのではなく、読者があきる前にはっとさせられるような出来事が起こり、この先どうなるのだろうという期待を持たせ、そして期待を裏切らない結末に向かってストーリーが展開されていくのです。エンターテイメント的な要素が強いですが、わたしはすっかりこの小説に魅せられてしまいました。

小説はデイヴィッドが生まれるときのことから始まっています。生まれてくる子が女の子だったら援助するつもりで叔母さんがやってきますが、男の子だったのでがっかりして帰ってしまいます。(冷たい叔母さんだと思いましたが、あとからデイヴィッドを助けてくれ、愛情深い婦人だということがわかります)

デイヴィッドが生まれたときはすでに父親は亡くなっており、若い母親と乳母ペゴティーに育てられます。やがて母親が再婚し、継父とその姉からひどい仕打ちを受けます。寄宿舎のある学校に入れられ、先生から虐待を受けます。
また、デイヴィッドの母親は赤ん坊を生んで間もなく死んでしまうという悲劇的なストーリーです。でも、ちっともじめじめしていなくて、乳母のペゴティーがデイヴィッドを抱きしめるたびに背中のボタンがはじけ飛ぶようすが描かれていたり、ペゴティーの兄一家のユーモラスな言動に思わず微笑んでしまう場面があります。

さまざまな人たちが登場してきて、その個性的な人たちが生き生きと描かれています。
人物の描写が細かく、挿絵がついた文庫ですが、挿絵を見なくてもその人の顔かたち、体形が想像できます。
小説の最後の方で、物語に出て来た主な登場人物のほとんどが再登場していることに感心しました。デイヴィッドをとりあげた医師まで登場させています。

その後、あの人はどうなったのかな? と思っていた人のことが最後まできっちり書かれています。
ユライア・ヒープは相変わらず悪いままでした。結婚が決まっていたのにほかの男と駆け落ちしてしまったエミリーの心情については書かれていませんが、ミスター・ペゴティーにハムのお墓から一束の草と土を持ってきてほしいと頼んだというところでエミリーの思いが伝わってきました。

人間に対する深い愛情をもって書かれた「デイヴィッド・コパフィールド」。デイヴィッドはいつまでもわたしの心の中に生き続けるでしょう。

みなさんにぜひ読んでいただきたい小説です。まだ読まれていない方はぜひお読みください。中学生から読めます。


わたしのHP「生かされて・・・土筆文香」久々に更新しました。


にほんブログ村 哲学・思想ブログ キリスト教へにほんブログ村
↑ここをクリックしてください。そうすると、より多くの方がこのブログを読んでくださるようになります。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。