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生かされて

乳癌闘病記、エッセイ、詩、童話、小説を通して生かされている喜びを綴っていきます。 by土筆文香(つくしふみか)

カリス(その2)

2006-01-05 17:00:03 | エッセイ

『カリス』(恵み)という言葉を聞いてから、わたしの中でずうっとこの言葉がこだましています。
当たり前のように呼吸をし、おいしく食事をいただき、おしゃべりをしていますが、病気で呼吸を確保することすら難しい人がおられることを思います。

わたしは長女(第2子)を出産後、産院を退院して10日後に、ひどい喘息の発作を起こしました。実家にいたので両親に心配かけたくないと思い、発作の起きていることを黙っていました。吸入薬で一時的に発作を抑えていたのです。

吸入薬は使いすぎると、だんだん効かなくなってきます。あとで聞くと、その吸入薬は、1日4回までが限度で、それ以上吸入すると死の危険があるという物でした。それをわたしは1日に数え切れないほどの回数使っていました。最後の方は、吸入しても一瞬苦しさから解放されるだけになってしまい、それでも耐えられなくて5分おきくらいに吸入していました。

食事に呼ばれてリビングに行くと、部屋からそこまで歩いただけで呼吸困難になってしまいました。おいしい食事が目の前に置いてあり「食べなさい」と言われているのに息が苦しくて食べることができません。真っ青な顔をして「どうやって食べたらいいんだろう……」と独り言のように言うわたしを見て、両親は大変な状態にあることに気づき、すぐに病院に連れていってくれました。(不思議なことに、ひどく苦しいのに自分では重篤な状態だとわからず、病院へ行こうとは思わなかったのです)

病院ではすぐ酸素吸入をしてくれましたが、いくら酸素があっても気管支がふさがりかけているので吸うことも吐くこともままならず、長い時間苦しみました。爪が紫色に変わっていたことを覚えています。

もしあのときすぐ病院へ連れていってもらわなければ、死んでいたでしょう。呼吸の苦しさは、経験した者でないとわからないと思いますが、乳癌の手術後の苦しさ、肺炎で高熱が出たときの苦しさとは比べものになりません。
「息ができる」ことは当たり前ではないんですね。守られて癒されていま、わたしはここにいます。

深呼吸しながら、呼吸ができることは、神さまのカリスなのだなあと感謝しました。

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